俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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38・王家のプチ騒乱?

第113話 殿下を救え!ドリームチーム出撃

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「大変だ! 殿下が疑われている!」

 使者の人が駆け込んできた。
 いつもはコゲタを見るとハイタッチしてくれるくらいフレンドリーなのだが、今はそんな余裕など無いらしい。
 最近親しくなったので、彼の名前を聞くことができた。

 シャザクという名らしい。
 こう見えて、次期男爵らしく、なるほど僕とは地位が違うからみだりに名乗ったりしなかったのだなとか思う。

「そりゃあ大変だ。どういうことなんですシャザクさん。まあ落ち着いてお茶をどうぞ」

「ありがたい、いただこう」

 ゴクゴクとお茶を一息で飲み干すシャザクなのだった。
 コゲタが心配そうに彼を見ている。

 落ち着いたシャザクは、コゲタに手を振ってみせた。

「げんきになった!」

「ああそうだな。シャザクさん元気になったな。コゲタはアララちゃんと遊んで来ていいよ」

「はーい!」

 コゲタがピューッと部屋を飛び出していった。
 最近は、この宿に泊まるもう一人の客が連れたコボルド、アララちゃんと仲良しなのだ。
 元気に遊んでくるんだぞ。何かあったら宿のおかみさんが世話をしてくれるし。

「さて、殿下の身に起こったことなんだが……」

「うんうん」

「二日に一度カルボナーラを食べている」

「元気だなあ……。太ってない? 大丈夫?」

「運動をされるようになり、しばらくサボっていた武技にも精を出し、大変健康になられたのだ。背筋も伸びてハキハキ話されるようになった。おかげで殿下の人望が日に日に増していてな」

「ほうほう」

「今まで希望を持たずに日々をダラダラとやり過ごしておられた殿下に覇気が宿ったということで、これはどうやら……王位を狙っているのではないかと……」

「な、なんだってー!! いやだがしかし、殿下が覇気に満ち溢れるようになったのは、美食を健康なまま食べ続けるためだろ」

「そうだ。だが、まさかそんな理由で人間が変わるとは王宮の者達は思っていないのだ! これはまずい、まずいぞ……。殿下を担ぎ上げて第一王子のソロス殿下と争わせようという動きも出ている……! 殿下は王位に別に興味がないのに」

 そうだよなあ。
 あの殿下、無欲だもんな。

「今は王城から避難しておられる。我らで殿下を救いたい。手を貸してくれナザル殿!!」

「分かった! 僕の金づる……オホン! ゴホンゴホン!! 尊敬する殿下を助けるぞ! おー!」

「……何も聞かなかったことにしておく……」

「ありがとう。それで、ドリームチームで行くためにはあと一人忘れているだろう?」

「ああ、彼か! 絶対に必要だな!」

「それと、ちょうど遊びに来てるんだ、彼女が」

「彼女……?」

 向かったのは例の食堂。
 極彩色の女王陛下がいた。

「わらわじゃな!」

「バ、バルバラ陛下!!」

 あと恐縮してる店主。
 僕とシャザクが二人で訪れたので、色々察したらしい。

「や、やめろ……! 俺をまた大舞台に連れて行くんじゃない……!!」

「そんなこと言うなよ店主~」

「店主って呼ぶな! 俺にはギルボウって名前があるんだ」

「行きましょうぜギルボウ氏」

「あっあっ、肩を組んでくるな! うわあああ」

「なんじゃ、この男はナザルが認める料理の腕を持っているのかや? 楽しみじゃのう! まずはサクッとデュオス王子を救って、話題の傾国の料理とやらを食べるとしようぞー!」

 女王陛下も大変盛り上がっておられます。
 ということで、抵抗する店主ことギルボウを説き伏せ、僕らは殿下が避難している貴族街へと移動したのだった。

 途中で、武装した連中が徘徊してたのでサクッと油で転ばせて無力化した。

「あれは第一王子を支援する、王統派が抱える武装集団、タカ派の団だ! アーラン最強の武装勢力……なんだけど、何もできないまま全員戦闘不能になったな……」

 シャザクが唖然としている。
 ギルボウ氏は「こんな危険なところに俺を連れて来るんじゃねえ! か、帰らせてくれー!」とか叫んでるし。
 まあまあ。今回の件はギルボウがいなければ解決できない。つまり彼はキーパーソンなのだ。

 「はっはっは、ナザルの戦闘力はその気になったら単騎で一国を滅ぼせるのじゃ。単純にこの男、旨いものにしか興味がないから世界は安全でいられる……」

「凄まじい力を持っていることをおくびにも出さないと言うか、本人がそこまで重要視してないから、全然気付かなかった」

 ということで、何事もなくデュオス殿下の隠れ家に到着したのだった。
 ここは、貴族たちの派閥、革新派の首魁であるフォーエイブル男爵の家……。

 あれっ!?

 何もかも、僕の知っている人物に繋がっていくんだが。
 フォーエイブル男爵、あの後、都市国家群との小競り合いで目覚ましい成果を挙げ、領地なしで良ければ子爵にしようか? みたいな誘いを受けているそうだ。

「おお、タカ派の団どもの中をよくぞ抜けてきたな、油使いよ。さらに腕を上げたと見える。どうだ。私と一手交えてみないか?」

「訪ねてきて早々、試合を申し込まないでくださいよ男爵」

 フォーエイブル男爵は今日も好戦的だ!!
 ちなみに革新派の表向きのトップは、ブロンディ伯爵。
 この人はいい感じのおじいちゃんで、わしはどうせ老い先短いし、王宮の官僚みたいなことやってる土地なし貴族だから名前を使っていいよ、と言ってくれた人なのだそうだ。

 人間関係が深く絡まり合っている!

 そして僕は、屋敷の訓練場で騎士ボータブルに稽古をつけてもらっている殿下を発見した。

 誰だあれ。
 シャキッと背筋が伸び、筋肉がついて体が一回り大きくなっている。

「もう一本頼む!」

「はっ! 行きますぞ殿下!!」

「うおおおーっ!!」

 凄いことになってるじゃん。
 これにはバルバラ女王も驚嘆したらしい。

「見違えたのう!! まるで別人じゃ!!」

 彼女の声は特徴的だから、これで殿下も気づいたらしい。
 安堵の笑顔を浮かべ、同時にギルボウを発見したら満面の笑みになり近づいてきた。

「来てくれたのか! 皆、ありがとう!! そしてギルボウ……!! 本当にありがとう!」

「い、いやあ、どうもどうも、へへへ」

 おお、バツが悪そうなギルボウ。

「このメンバーが揃えば、私が得てしまった汚名を晴らすこともできよう! 聞いて欲しい。王族皆カルボナーラ計画を……!!」

 詳しい話を聞く前に、何をするんだか分かっちゃったんだが!?
 
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