俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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41・息抜き依頼

第124話 磯汁? ブイヤベース?でパワー充填

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 よく煮込まれた海産物は、ガンガンに出汁を発揮して美味しくなる。
 コゲタも食べるから、塩は控えめに。
 自分たちが食べる時にちょうどいいだけ振ろう。

「いただきまーす」

「おや、ナザルの国の神の教えですかな? ではワタクシめも。おお太陽神よ、大いなる輝きの元、今日の糧に感謝します。美味そう! 美味そう! 美味そう!」

「思ったよりも野性的な聖句だった」

「うまそう! うまそう! うまそう!」

「あっ、コゲタがマネをしてしまった」

「ふしゅしゅしゅしゅ、バルガイヤーの教えを理解するとは、感心な子ですな。その気があれば神殿にいらっしゃい。ワタクシめが導きましょう……。コボルドの信徒は初めてですがな」

「わん?」

 コゲタはもう、磯汁というかブイヤベースというか、このスープを夢中で食べているところだ。
 声を掛けられたら、お顔をびしょびしょにしながら振り返った。

「おいしい?」

「おいしー!」

 コゲタニッコニコ。
 なんでも美味しく食べるコゲタ。
 いいことだ。
 僕も塩を振ってから磯汁を食べた。

 うん、いい味だ。
 野趣あふれる感じである。
 雑多な海産物から出た出汁がいい感じで効いているなあ。

 あまりに美味そうな匂いを漂わせていたので、近くにいた船乗りとかが集まってきた。

「ちょっともらっていい?」

「どうぞどうぞ」

「うめえー」

「あー、美味いわ。染み渡る」「魚は航海中に飽きるほど食ってくるのにな」「こうやって煮込むと全然風合いが変わって感じるな」「酒が欲しい……」

 彼らも夜の見張りらしく、酒は禁止されているようだ。
 今夜だけの我慢だからな。
 お互いこの夜をやり過ごそうな。

 こうして集まってわいわいとブイヤベース的なものを啜っていたら、バンキンとキャロティが戻ってきた。

「うわーっ、美味そうなもの作ってやがる! ぐるっと港を回って腹ペコだったんだ……!」

「今日ばかりはあたしも肉食うさぎよ! そのスープちょうだい!!」

 賑やかになった賑やかになった!
 では、鍋の采配権をバンキンに譲り渡し、僕らは仕事に出るとしよう。

「腹ごなしの運動だ。さあぶらつくぞ」

「ええ、参りましょうぞ。ワタクシめは夜目が効きましてね。まあ夜は寝てることが多いんですが、種族としては夜が有利で、しかし冷えると動きづらくなるので主に昼間に活動を」

「御託が長い人だな……!?」

「つまりですな。温度を見分けることができますぞ。ワタクシめの目には、ナザルよりもコゲタのほうがちょっと体温が高いのが見て取れる」

「サーモグラフィ!」

 リザードマンってそういう能力があったんだなあ。

「コゲタはね! はな!」

「うんうん、コゲタは鼻がいいなあ」

「嗅覚ではワタクシめもコゲタには勝てませんな!」

「やったー!」

 コゲタ、褒められたと思ったようでぴょんぴょん飛び跳ねている。
 はしゃいで海に落ちないようにね。

 こうして、停泊している船と船の間を歩き回る。
 警備である僕らは船に乗り込むことも許される。

「どうもどうも」

「ああ、こりゃどうもどうも」

 船員たちと挨拶しながら、船の中を練り歩かせてもらう。
 僕が知る、こちらの大陸……文明圏の船とはちょっと違う。
 意外とこちらの船は東洋風の帆船なんだよね。
 で、南方大陸のそれは西洋風というか。

「じゃ、頑張ってください」

「ほい、お疲れ!」

 船の一隻からちょうど降りるタイミングだ。

「ご主人、におい!」

 コゲタが顔を上げてキョロキョロした。
 そして鼻先が向くのは対面の船。

「どーれ? ふしゅしゅっ! 船をよじ登る体温! 水の温度に近くて見分けづらいですが、これは人間ですなあ。三つ!」

「いたかー。海から上がってきたんだろうな」

「あの距離ですと、ワタクシめはちょっと追いつき難いですな。泳ぎはいいのですが、壁を登るのがこの図体ですと」

「大きすぎるのね」

「我らの種族の中にはそういった曲芸が特異な小型種もおりますな! ちなみにワタクシめ、最大の種であるデミドラゴン種でございましてな! ふしゅしゅしゅしゅ」

「あー、でかいもんね……!! じゃあ僕が行くよ」

 海に飛び込む僕。
 だが、既に海面には油が広がっていく。

「がんばれ、ご主人~!」

「ああ、がんばるぞ!」

 コゲタの声援を受けて、海の上を滑る僕。
 油あるところ、僕は自在に移動できるのだ。

「異常なアクションをしてますなあ……」

 サルシュのしみじみとした呟きが聞こえた。
 そんなおかしなことをしているだろうか……? だって油は水に浮くではないか。

 僕は足元からさらに油を広げていく。
 あまりやり過ぎると、船が浮かび上がって横転してしまう。
 量はほどよいくらいで……。

 油が船の横を這い上がっていく。
 海側から侵入しようとしていた連中は、どうやら僕に気付いたようで素早く動き始めた。
 少し遅い。

 オブリーオイルとゴマ油を混ぜ合わせた、滑らかな油が加速する。
 油は侵入者が手にしていた鉤爪に絡みつき……。

「あっ!」「うおっ!!」「うぐわーっ!!」

 つるんと滑って、海に落ちた。
 だが潜ることは許さない。
 たっぷりの油で彼らの周囲を取り巻き、浮いたままにするのだ。

「な、なんだこれは!?」「油……!」「畜生、油使いが来てやがった!!」「あの野郎冒険者を引退したんじゃないのか!?」

「ところがどっこい、冒険者に復帰したんだ。よろしくな」

「くっそー! 水に潜れねえ!」「水に浮いたまま手で掻くこともできねえー!」

 これで船に侵入しようとした連中を確保だ。

「お仕事終了だー!」

 僕が声を掛けたら、サルシュが背後の船を見ながら、尻尾を振った。

「いやあ、残念ながら」

「なんだと!? まだいるの!?」
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