俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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41・息抜き依頼

第125話 盗賊ギルドに引き渡せ

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 その後、バンキンやキャロティも渋々駆けつけてきた。
 そして、ガンドで弱らせてバンキンの投網で捕まえるというコンビネーションで、次々侵入者を捕縛していった。
 ……投網?

「魚を捕まえるつもりだったのになあ……」

 悲しげなバンキンなのだった。
 ぐるぐる巻きになって転がされている侵入者は合計七人。
 こいつらを前に、重戦士は「魚を釣ってさ、網で捕まえて、やこうと思ってたんだよな……。港のここなら漁業権ないからさ」

「そうだったのか。色々考えてるんだな……。というかこの世界にあったんだ、漁業権」

「漁師ギルドがあるんだからあるに決まってるだろう」

「思った以上にシステマチックだったなあ」

 森の職人たち、海の漁師たち、商人たち、みんなそれぞれの集まりがあるのだ。
 お約束というものがあるからな。
 それは盗賊ギルド関連も同様。

「この連中……盗賊ギルドに所属してるのかな?」

「してるんじゃない? 外国の船は治外法権だから、ギルドの庇護下にないもの。やれるもんなら奪い放題ってのが建前だわよ」

 キャロティが鼻を鳴らした。

「ま、それを真に受けて襲いに行くのはおバカだと思うけどさ。だってあたしたちみたいな冒険者が護衛に雇われてるじゃん。シルバー級複数人相手ってかなり割に合わないと思うわよ」

「まあなあ。国からちょくせつ任務を受けるレベルの冒険者だもんな」

 その結果が、全員捕縛された侵入者だ。
 幸い、船員の犠牲は一人も出ていない。
 侵入者たちは五体満足なまま、盗賊ギルドに引き渡されることになるだろう。

 ギルドは引き取った彼らをどうするか?
 いやあ、どうだろうなあ。
 とりあえず、今は生きてるということだけは確か。
 僕らは手を下さない。

「盗賊ギルドも、王国に対する仁義ってもんがあるからなあ。まあ、外国の船を襲って国の顔を潰そうとしたバカはそのままじゃ置かねえだろ」

 成功すればよし、失敗すれば……死して屍拾う者なし。
 なむなむ。
 僕は心のなかで念仏を唱えた。

 さあ、一通りの仕事が終わり、朝になるまで釣りでもして過ごすとしよう。
 わいわいとみんなで釣りをしていた場所に戻ってくる。

「さあ、面倒事は終わった! 釣るぞー!」

「負けないわよ!」

「コゲタも!」

 バンキンの横に、小さいのが二人並んで釣りをすることになった。
 僕はコゲタのサポート。
 サルシュは空っぽになった鍋を掃除している。

「汁物は作りましたからな。次は焼き物をやりたいところです。鍋ならば焼き物もいけますからな」

「この寸胴鍋でどうやって焼くんだ……!?」

「いい質問ですなナザル。炎を鍋を包むように起こし、魚はこう、鍋に貼り付けるように……」

「そこまでしなくてよくない……!? 串で刺して普通に焼けばいいじゃない」

「せっかく借りた道具を活用したいのですぞ」

「無理やり活用しなくても」

「うーん」

 サルシュが唸って舌を出し入れした。
 舌の色が青いんだなあ。
 これは無表情に見えるリザードマンが、困った顔をしているのだろう。

「なんとかなりませんかなナザル」

「なんともならないよ。寸胴は返してこよう」

「あぁ~」

 なんという残念そうな声を出すんだ。

 僕が寸胴を返して戻ってきたら、今まさにコゲタが魚を釣り上げているところだった。
 サルシュとキャロティが後ろからコゲタを引っ張り、援護している。

「つりざお、おれちゃう~」

 コゲタの悲鳴が!
 今行くぞ!

 僕は油を使ってつるりと滑り、即座に海面に着水した。
 そしてバシャバシャ言ってるところに油を投擲して……。
 暴れていた魚が、スポーンと海上に飛び出してきた。

 ハハハ、潜れずにピチピチしている。
 これをコゲタが引き寄せて……バンキンが網で捕まえた。

 その後、バンキンが僕を指差す。

「お前は! 釣りを! 分かってなあい!!」

「うおーっ、なぜ説教されるんだ!」

「そりゃねえ。仕方ないんじゃない?」

 キャロティがケラケラ笑うのだった。
 
「ご主人~! コゲタ、ご主人たすけてくれたのうれしい~」

「おおー、コゲタ~!」

 僕はサッと桟橋に上がりコゲタとひしっと抱き合った。
 持つべきものは犬である。
 僕の最大の理解者だろう。
 全肯定してくれるし。

「ほうほう、コゲタさんが吊り上げたのはまあまあの大物ですな。ツルシトゲウオです。トゲに毒がありますが、まあワタクシめにとっては大したことはなく」

 鱗のついた手で、ポキンポキンとトゲを折っていくサルシュ。
 妙なところで頼れるな……。
 
「俺が思うに、コゲタには釣りの才能があるな……。どうだコゲタ、俺の弟子にならないか?」

 本日一匹も釣り上げていないバンキンが妙なことを言い、コゲタが「いやー」とお断りするのだった。

「あんたね、一匹でも釣ってから勧誘しなさいよ。あ、コゲタはあれね! 体幹が弱いから鍛えなきゃ! ご主人に甘やかされまくってるんじゃないの?」

「どきっ」

 コゲタ、心当たりがあるのか!?
 僕は犬を扱うように大切に大切にしていただけなのだが……!!

「こ、コゲタ、きたえる!」

「おお、コゲタのパワーアップ宣言が……。コゲタはそのままでいいんだぞ」

「ナザルは甘やかしすぎー!!」

 キャロティが僕の肩をペチッと叩くのだった。
 そんなこんなで騒いでいたら、日が昇ってくるではないか。

「ああ、仕事の時間が終わりだ……。大半釣りだったな」

 バンキンがしみじみと呟き、キャロティは大きな欠伸をした。

「楽な仕事だったけど、問題は昼夜逆転してしまったことだよなあ。さて、どうやって生活ペースをまた戻すか……」

「しばらく日向ぼっこして行っていいですか?」

「ご主人~、コゲタ眠い~」

 とにかく統一感のない僕らなのだった。
 このまま港で一眠りしてから帰ってもいいなあ……。
 いや、朝から酒を飲むという手も……。

 そんな事を考えつつ、今回の仕事は終わるのだった。

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