136 / 337
47・おお、大きな豆よ
第136話 大豆ではない?
しおりを挟む
大きな豆であった。
仕事の後眠り、目覚めてから再度、もらった豆を眺めてみるのだ。
「……大豆じゃないよな、これ。いや……でかい大豆にも見える……。枝豆? 超デカい枝豆……?」
枝豆は確か大豆だったはず。
違ったっけ?
豆の収まっている殻が白くなって、カラカラになっている。
熟しきっているのだろう。
「料理に使ってみねばわからないな。だが問題は……。僕が大豆の調理の仕方を知らないことだ」
本日一日はこのヒュージビーンズの調理方法を教わる日とし、帰還は明日だ。
すまないな、コゲタ……!
ちょっとだけ待っててくれ!
「ということで、このビーンズの食べ方を聞きたいんですが」
「へえ、外国の人でこの豆に興味を持つなんて珍しいねえ。そう言えば、豆を輸出できることになったとか国の偉い人が言ってたけど、それってつまり……」
僕が原因ですな!
そろそろ第二王子も新しいメニューをご所望なのだ。
ここで一つ、ヒュージビーンズを使ったお料理を学んでおきたい。
今回の先生となるのはおばさんだ。
横にまん丸い人で、この世界でぽちゃっとできる人は才能がある。
あとは美味しいものに恵まれている場合が多い。
期待できる人材だ。
「基本的な料理は煮豆なんだけどね。若い豆をそのまま茹でて塩を振って食べるのも美味しいよ」
「なるほど……。この熟した状態だと?」
「それは、煮豆以外だと水をたっぷり吸わせてから念入りにすり潰してだね、お湯で煮込んだら濾して、それを温めながら塩を使うと固まるんだけど……」
「豆腐じゃないか!!」
「トウフ……? あたしらはビーンズケーキって呼んでるけど、あと、塩はファイブショーナンから仕入れたやつじゃないといけないよ」
「にがりじゃん!」
僕は感動していた。
この世界にも豆腐がある!
そして何より、この大きい豆は大きい大豆だということが明らかになったからだ。
これから何でもできるぞ!
その後、今日の分の豆腐を作るというので、昨晩から水に浸されていた大豆を料理させてもらうことにした。
ほうほうほう。
ふんふんふん。
これはこれは……。
「ナザル、仕事よりもよっぽどやる気に満ち満ちているねえ……」
「こちらが僕のやりたいことだからね……」
リップルが昼頃に起きてきて、村の名物である野菜サンドを食べている。
燻製肉を挟んで食べるもので、大変美味しい。
調味料が少ないこの世界で、燻製の独特の味と香りは貴重だよね。
「そうそう。あんたなかなか手つきがいいよ。うちの宿六に見習わせたいもんだね」
「ははは、料理はこの一年みっちりやってるんですよ。任せてください」
おばさんに褒められつつ、僕は大豆をすり潰し、ぐつぐつに煮込み、これを濾してから温めつつにがりを足したりなどする。
生前はネットで豆腐の料理方法を見ていたけれど、自分でやるのは初めてだ。
この工程が豆腐に続くのだと考えると、実に希望に満ちているではないか。
「このまま食べても、豆の美味しさが詰まってていいんだけど……。ちょっと置いておいて水分を抜いていくとビーンズケーキになるのさ」
「なるほどー」
なんと豊かな時間であろうか。
素晴らしい豆の香りが周囲を包んでいる。
食後のお茶をお代わりしながら飲んでいたリップルが、鼻をくんくんさせた。
「独特のにおいがするね。なんだいこれは?」
「豆腐というものだよリップル……。いや、この国風に言うならビーンズケーキだ」
「豆のケーキ!? 甘くして食べるのかい!? 豆を!?」
そうそう、この世界は豆を甘くして食べない。
豆は塩辛くして食べるものなのだ。
だから、豆なのにケーキという言葉が出てくると、リップルみたいに仰天することになるのだ。
「いや、しょっぱいソースなんかを掛けて食べるんだ。淡白だけど味わい深いぞ」
「ふうん、興味が湧くねえ……」
おばさんが目を丸くする。
「あんた、食べたことがないんじゃなかったのかい!? どうしてビーンズケーキの味が分かるんだい」
「あ、いや、似たものを故郷で食べたことだけがありまして」
「なーるほど、食べる専門だったんだねえ。うちの宿六と一緒だ」
水分が抜けるまでの間、お茶をすることにする。
なお、豆腐のもとである豆乳を絞ったあとのかすは、家畜のエサにするから無駄がないらしい。
かすをそのまま使って、本当にケーキみたいな焼き菓子にもするんだとか。
あとでレシピを教えて下さい!!
「フォーゼフ、本当に和解できて良かった。こんな素晴らしい国だったとは……。いや、どの国にも可能性が眠っているんだよな。ただ、それぞれ独立したもの同士が出会うことでシナジーが起きる。僕はそれを求めて生きているんだなあ」
「何か言ってる。あ、このクッキー美味しいね」
「それだよ。それはね、ヒュージビーンズの絞りかすと粉を混ぜて作ったクッキーでね」
「あんまり甘くないからおかずクッキーだね」
「甘味は高いからねえ」
リップルとおばさんがガールズトークをしているじゃないか……。
「砂糖はアーランで山程とれるから、フォーゼフはそれを輸入したらいいんじゃないかな」
「本当かい!? 甘いものは本当に貴重でねえ……。でも、いつでも食べられるようになるなら、戦争をやめて大正解だったねえ……!」
おばさんはにっこにこになるのだった。
僕ももうすぐ完成する豆腐を前に、にっこにこだよ。
仕事の後眠り、目覚めてから再度、もらった豆を眺めてみるのだ。
「……大豆じゃないよな、これ。いや……でかい大豆にも見える……。枝豆? 超デカい枝豆……?」
枝豆は確か大豆だったはず。
違ったっけ?
豆の収まっている殻が白くなって、カラカラになっている。
熟しきっているのだろう。
「料理に使ってみねばわからないな。だが問題は……。僕が大豆の調理の仕方を知らないことだ」
本日一日はこのヒュージビーンズの調理方法を教わる日とし、帰還は明日だ。
すまないな、コゲタ……!
ちょっとだけ待っててくれ!
「ということで、このビーンズの食べ方を聞きたいんですが」
「へえ、外国の人でこの豆に興味を持つなんて珍しいねえ。そう言えば、豆を輸出できることになったとか国の偉い人が言ってたけど、それってつまり……」
僕が原因ですな!
そろそろ第二王子も新しいメニューをご所望なのだ。
ここで一つ、ヒュージビーンズを使ったお料理を学んでおきたい。
今回の先生となるのはおばさんだ。
横にまん丸い人で、この世界でぽちゃっとできる人は才能がある。
あとは美味しいものに恵まれている場合が多い。
期待できる人材だ。
「基本的な料理は煮豆なんだけどね。若い豆をそのまま茹でて塩を振って食べるのも美味しいよ」
「なるほど……。この熟した状態だと?」
「それは、煮豆以外だと水をたっぷり吸わせてから念入りにすり潰してだね、お湯で煮込んだら濾して、それを温めながら塩を使うと固まるんだけど……」
「豆腐じゃないか!!」
「トウフ……? あたしらはビーンズケーキって呼んでるけど、あと、塩はファイブショーナンから仕入れたやつじゃないといけないよ」
「にがりじゃん!」
僕は感動していた。
この世界にも豆腐がある!
そして何より、この大きい豆は大きい大豆だということが明らかになったからだ。
これから何でもできるぞ!
その後、今日の分の豆腐を作るというので、昨晩から水に浸されていた大豆を料理させてもらうことにした。
ほうほうほう。
ふんふんふん。
これはこれは……。
「ナザル、仕事よりもよっぽどやる気に満ち満ちているねえ……」
「こちらが僕のやりたいことだからね……」
リップルが昼頃に起きてきて、村の名物である野菜サンドを食べている。
燻製肉を挟んで食べるもので、大変美味しい。
調味料が少ないこの世界で、燻製の独特の味と香りは貴重だよね。
「そうそう。あんたなかなか手つきがいいよ。うちの宿六に見習わせたいもんだね」
「ははは、料理はこの一年みっちりやってるんですよ。任せてください」
おばさんに褒められつつ、僕は大豆をすり潰し、ぐつぐつに煮込み、これを濾してから温めつつにがりを足したりなどする。
生前はネットで豆腐の料理方法を見ていたけれど、自分でやるのは初めてだ。
この工程が豆腐に続くのだと考えると、実に希望に満ちているではないか。
「このまま食べても、豆の美味しさが詰まってていいんだけど……。ちょっと置いておいて水分を抜いていくとビーンズケーキになるのさ」
「なるほどー」
なんと豊かな時間であろうか。
素晴らしい豆の香りが周囲を包んでいる。
食後のお茶をお代わりしながら飲んでいたリップルが、鼻をくんくんさせた。
「独特のにおいがするね。なんだいこれは?」
「豆腐というものだよリップル……。いや、この国風に言うならビーンズケーキだ」
「豆のケーキ!? 甘くして食べるのかい!? 豆を!?」
そうそう、この世界は豆を甘くして食べない。
豆は塩辛くして食べるものなのだ。
だから、豆なのにケーキという言葉が出てくると、リップルみたいに仰天することになるのだ。
「いや、しょっぱいソースなんかを掛けて食べるんだ。淡白だけど味わい深いぞ」
「ふうん、興味が湧くねえ……」
おばさんが目を丸くする。
「あんた、食べたことがないんじゃなかったのかい!? どうしてビーンズケーキの味が分かるんだい」
「あ、いや、似たものを故郷で食べたことだけがありまして」
「なーるほど、食べる専門だったんだねえ。うちの宿六と一緒だ」
水分が抜けるまでの間、お茶をすることにする。
なお、豆腐のもとである豆乳を絞ったあとのかすは、家畜のエサにするから無駄がないらしい。
かすをそのまま使って、本当にケーキみたいな焼き菓子にもするんだとか。
あとでレシピを教えて下さい!!
「フォーゼフ、本当に和解できて良かった。こんな素晴らしい国だったとは……。いや、どの国にも可能性が眠っているんだよな。ただ、それぞれ独立したもの同士が出会うことでシナジーが起きる。僕はそれを求めて生きているんだなあ」
「何か言ってる。あ、このクッキー美味しいね」
「それだよ。それはね、ヒュージビーンズの絞りかすと粉を混ぜて作ったクッキーでね」
「あんまり甘くないからおかずクッキーだね」
「甘味は高いからねえ」
リップルとおばさんがガールズトークをしているじゃないか……。
「砂糖はアーランで山程とれるから、フォーゼフはそれを輸入したらいいんじゃないかな」
「本当かい!? 甘いものは本当に貴重でねえ……。でも、いつでも食べられるようになるなら、戦争をやめて大正解だったねえ……!」
おばさんはにっこにこになるのだった。
僕ももうすぐ完成する豆腐を前に、にっこにこだよ。
32
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる