俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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47・おお、大きな豆よ

第136話 大豆ではない?

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 大きな豆であった。
 仕事の後眠り、目覚めてから再度、もらった豆を眺めてみるのだ。

「……大豆じゃないよな、これ。いや……でかい大豆にも見える……。枝豆? 超デカい枝豆……?」

 枝豆は確か大豆だったはず。
 違ったっけ?
 豆の収まっている殻が白くなって、カラカラになっている。
 熟しきっているのだろう。

「料理に使ってみねばわからないな。だが問題は……。僕が大豆の調理の仕方を知らないことだ」

 本日一日はこのヒュージビーンズの調理方法を教わる日とし、帰還は明日だ。
 すまないな、コゲタ……!
 ちょっとだけ待っててくれ!

「ということで、このビーンズの食べ方を聞きたいんですが」

「へえ、外国の人でこの豆に興味を持つなんて珍しいねえ。そう言えば、豆を輸出できることになったとか国の偉い人が言ってたけど、それってつまり……」

 僕が原因ですな!
 そろそろ第二王子も新しいメニューをご所望なのだ。
 ここで一つ、ヒュージビーンズを使ったお料理を学んでおきたい。

 今回の先生となるのはおばさんだ。
 横にまん丸い人で、この世界でぽちゃっとできる人は才能がある。
 あとは美味しいものに恵まれている場合が多い。
 期待できる人材だ。

「基本的な料理は煮豆なんだけどね。若い豆をそのまま茹でて塩を振って食べるのも美味しいよ」

「なるほど……。この熟した状態だと?」

「それは、煮豆以外だと水をたっぷり吸わせてから念入りにすり潰してだね、お湯で煮込んだら濾して、それを温めながら塩を使うと固まるんだけど……」

「豆腐じゃないか!!」

「トウフ……? あたしらはビーンズケーキって呼んでるけど、あと、塩はファイブショーナンから仕入れたやつじゃないといけないよ」

「にがりじゃん!」

 僕は感動していた。
 この世界にも豆腐がある!
 そして何より、この大きい豆は大きい大豆だということが明らかになったからだ。
 これから何でもできるぞ!

 その後、今日の分の豆腐を作るというので、昨晩から水に浸されていた大豆を料理させてもらうことにした。
 ほうほうほう。
 ふんふんふん。
 これはこれは……。

「ナザル、仕事よりもよっぽどやる気に満ち満ちているねえ……」

「こちらが僕のやりたいことだからね……」

 リップルが昼頃に起きてきて、村の名物である野菜サンドを食べている。
 燻製肉を挟んで食べるもので、大変美味しい。
 調味料が少ないこの世界で、燻製の独特の味と香りは貴重だよね。

「そうそう。あんたなかなか手つきがいいよ。うちの宿六に見習わせたいもんだね」

「ははは、料理はこの一年みっちりやってるんですよ。任せてください」

 おばさんに褒められつつ、僕は大豆をすり潰し、ぐつぐつに煮込み、これを濾してから温めつつにがりを足したりなどする。
 生前はネットで豆腐の料理方法を見ていたけれど、自分でやるのは初めてだ。

 この工程が豆腐に続くのだと考えると、実に希望に満ちているではないか。

「このまま食べても、豆の美味しさが詰まってていいんだけど……。ちょっと置いておいて水分を抜いていくとビーンズケーキになるのさ」

「なるほどー」

 なんと豊かな時間であろうか。
 素晴らしい豆の香りが周囲を包んでいる。

 食後のお茶をお代わりしながら飲んでいたリップルが、鼻をくんくんさせた。

「独特のにおいがするね。なんだいこれは?」

「豆腐というものだよリップル……。いや、この国風に言うならビーンズケーキだ」

「豆のケーキ!? 甘くして食べるのかい!? 豆を!?」

 そうそう、この世界は豆を甘くして食べない。
 豆は塩辛くして食べるものなのだ。
 だから、豆なのにケーキという言葉が出てくると、リップルみたいに仰天することになるのだ。

「いや、しょっぱいソースなんかを掛けて食べるんだ。淡白だけど味わい深いぞ」

「ふうん、興味が湧くねえ……」

 おばさんが目を丸くする。

「あんた、食べたことがないんじゃなかったのかい!? どうしてビーンズケーキの味が分かるんだい」

「あ、いや、似たものを故郷で食べたことだけがありまして」

「なーるほど、食べる専門だったんだねえ。うちの宿六と一緒だ」

 水分が抜けるまでの間、お茶をすることにする。
 なお、豆腐のもとである豆乳を絞ったあとのかすは、家畜のエサにするから無駄がないらしい。
 かすをそのまま使って、本当にケーキみたいな焼き菓子にもするんだとか。

 あとでレシピを教えて下さい!!

「フォーゼフ、本当に和解できて良かった。こんな素晴らしい国だったとは……。いや、どの国にも可能性が眠っているんだよな。ただ、それぞれ独立したもの同士が出会うことでシナジーが起きる。僕はそれを求めて生きているんだなあ」

「何か言ってる。あ、このクッキー美味しいね」

「それだよ。それはね、ヒュージビーンズの絞りかすと粉を混ぜて作ったクッキーでね」

「あんまり甘くないからおかずクッキーだね」

「甘味は高いからねえ」

 リップルとおばさんがガールズトークをしているじゃないか……。

「砂糖はアーランで山程とれるから、フォーゼフはそれを輸入したらいいんじゃないかな」

「本当かい!? 甘いものは本当に貴重でねえ……。でも、いつでも食べられるようになるなら、戦争をやめて大正解だったねえ……!」

 おばさんはにっこにこになるのだった。
 僕ももうすぐ完成する豆腐を前に、にっこにこだよ。

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