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56・バース・オブ・醤油
第162話 醤油で食べたいもの探し
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醤油をあるだけもらい、僕はギルボウの店にやって来た。
いつもここに来てるな。
最近はギルドよりも来る頻度高いんじゃないか。
「いよー」
「こーんにーちわー!」
僕が適当に、コゲタがとても元気に礼儀正しく挨拶した。
僕を一瞥しておう、と口を開けたギルボウ、コゲタは邪険にできないので笑顔を作って手を振った。
強いな、元気で明るい挨拶。
「営業中だからな、ちょっと座ってろ」
ギルボウに店の奥にある席を使わせてもらい、コゲタと指立てゲームなどをして遊んだ。
立てた親指の数を「せーのっ」で言い、その瞬間に指を隠したり立てたままにして、口にした数がぴったりだと手を引っ込められる。
両手を引っ込められた方が勝ちだ。
僕とコゲタは互角で、なかなか白熱した。
コゲタはすっかり熱中して、鼻息も荒くタイミングを伺ったりしている。
「やるなコゲタ。なかなか強いぞ」
「コゲタもつよくなってるもん!」
ということで、ちょっとの間激闘を繰り広げてたら、飯を食い終わった客が帰ったようだ。
「本当にお前ら親子みたいだよなあ。おう、これで昼の部は店じまいだ。今日は何を持って来やがった?」
「ああ、本題に移ろう。これだ」
僕は醤油を取り出す。
半透明の瓶に入った褐色の液体。
香りを嗅いだ瞬間、ギルボウの目がカッと開いた。
「豆を発酵させた匂いじゃねえか! 魚醤のそれと同じ用途のソースだな!? ってことは……お前、大豆でソースを作ったのか! それがお前の言ってたショーユってやつだな!?」
「いかにも。いつもながらめちゃくちゃ察しがいいな……」
「こうも頻繁に顔を合わせてるとな。よしナザル、残り物の食材を使わせてやる。ショーユを使った料理を作ってみろ」
「任せとけ」
コゲタはトテトテーと走っていって、客席にぴょんと飛び上がって腰掛けた。
その隣にギルボウが座る。
「ねえねえ! せーのしってる?」
「なんだそりゃ?」
「ご主人がおしえてくれたあそびでねーこうやってねー」
おっ、せーのの輪を広げるつもりだな。
その間に、僕は食材を見繕った。
豆腐があるじゃないか。一つはこれをそのまま使えばいい。
後は……パスタがある!
醤油と僕が作り出したマーガリンを合わせて、炒めて和風パスタにしよう。
焼いてある魚の切り身もあるなあ……。
温め直して醤油を掛けるか。
ごそごそと準備をしていると、閉ざしたはずの店の扉がノックされた。
せーのでコゲタと激戦を繰り広げていたギルボウ、立ち上がって「今日は終わりだぜ」と声を掛けた。
そうしたら、扉の隙間からドロテアさんの顔が覗くではないか。
「あっ、あんたかあ」
ギルボウの態度が露骨に軟化した。
下町一の美女だからな……。
気持ちはすごくよく分かる。
ギルドマスター夫人の彼女は、成人した子供も三人いて良いお年なのだが……。
人間ではないので年を取らないのだ。
なので、ずっと妙齢の美女のままの姿をしている。
「ナザルさんとコゲタちゃんがお店に入っていったって聞いたから……覗きにきちゃったわ。いい? ギルボウさん」
「ドロテアさんなら仕方ねえなあ。あっ、ナザルが新しいソースを作ったらしくてよ。一緒に食っていってくれよ」
「本当!? じゃあご相伴にあずかっちゃおうかな」
ニコニコしながら入ってきたドロテアさんが、コゲタの隣に腰掛けた。
「こんにちは!」
「はい、こんにちは。コゲタちゃん、少し見ない間に大きくなったわね」
「コゲタせ、のびた! ねえねえ! しってる? せーのしってる?」
「あら、何かしら……」
「こいつがさ、なかなか奥深い遊びなんだよ。年齢関係なく、相手の癖やタイミングを読んでやらないと勝てねえっていう……」
ついにドロテアさんを巻き込んで、せーのを始めてしまった。
思わぬ広がりを見せてしまうのではないか?
だが、僕は料理に没頭だ。
醤油マーガリンで炒めたパスタは実にいい匂いがし始めている。
せーのに興じていた三人が、チラチラこっちを見ている。
醤油もマーガリンも大豆由来……!!
具材として、燻製肉をスライスしたやつを細かく切ったり、茹で野菜を載せたりした。
味見をしてみる。
醤油すげえ。
味に統一感が出ている。
豆腐に醤油を掛けたものは……。
うんうん。
完全に想定通りの味。これで冷やす技術があれば最高の冷奴になるのだが。
焼き魚は赤身魚で、ちょっと臭みがあるがこれを醤油がガツンと打ち消している気がする……。
僕が知っている醤油とは違うパワーを持っているんじゃないか、これ?
「出来ましたぞー」
「おおーっ」
「わーい!」
「楽しみだわ」
三人のテーブルに、和風パスタと豆腐と焼き魚を並べる。
それぞれに醤油を必要な分だけかけて、と。
「コゲタはあまりしょっぱいのはダメだから、他にもうちょっと塩味が欲しい人は追加で醤油を掛けてくれ」
そう言って、実食してもらうことにしたのだった。
「全体的に茶色くなるな」
「醤油だからな」
「いいによいー」
「醤油だからねえ」
「美味しそうだわ。どうしようかしら。ちょっと太っちゃうかも……」
「ドロテアさんは少しお肉をつけても魅力的だと思うよ」
「あら、またナザルさんに口説かれちゃったって主人に自慢しちゃおうかしら」
それはやめてくれえ。
いつもここに来てるな。
最近はギルドよりも来る頻度高いんじゃないか。
「いよー」
「こーんにーちわー!」
僕が適当に、コゲタがとても元気に礼儀正しく挨拶した。
僕を一瞥しておう、と口を開けたギルボウ、コゲタは邪険にできないので笑顔を作って手を振った。
強いな、元気で明るい挨拶。
「営業中だからな、ちょっと座ってろ」
ギルボウに店の奥にある席を使わせてもらい、コゲタと指立てゲームなどをして遊んだ。
立てた親指の数を「せーのっ」で言い、その瞬間に指を隠したり立てたままにして、口にした数がぴったりだと手を引っ込められる。
両手を引っ込められた方が勝ちだ。
僕とコゲタは互角で、なかなか白熱した。
コゲタはすっかり熱中して、鼻息も荒くタイミングを伺ったりしている。
「やるなコゲタ。なかなか強いぞ」
「コゲタもつよくなってるもん!」
ということで、ちょっとの間激闘を繰り広げてたら、飯を食い終わった客が帰ったようだ。
「本当にお前ら親子みたいだよなあ。おう、これで昼の部は店じまいだ。今日は何を持って来やがった?」
「ああ、本題に移ろう。これだ」
僕は醤油を取り出す。
半透明の瓶に入った褐色の液体。
香りを嗅いだ瞬間、ギルボウの目がカッと開いた。
「豆を発酵させた匂いじゃねえか! 魚醤のそれと同じ用途のソースだな!? ってことは……お前、大豆でソースを作ったのか! それがお前の言ってたショーユってやつだな!?」
「いかにも。いつもながらめちゃくちゃ察しがいいな……」
「こうも頻繁に顔を合わせてるとな。よしナザル、残り物の食材を使わせてやる。ショーユを使った料理を作ってみろ」
「任せとけ」
コゲタはトテトテーと走っていって、客席にぴょんと飛び上がって腰掛けた。
その隣にギルボウが座る。
「ねえねえ! せーのしってる?」
「なんだそりゃ?」
「ご主人がおしえてくれたあそびでねーこうやってねー」
おっ、せーのの輪を広げるつもりだな。
その間に、僕は食材を見繕った。
豆腐があるじゃないか。一つはこれをそのまま使えばいい。
後は……パスタがある!
醤油と僕が作り出したマーガリンを合わせて、炒めて和風パスタにしよう。
焼いてある魚の切り身もあるなあ……。
温め直して醤油を掛けるか。
ごそごそと準備をしていると、閉ざしたはずの店の扉がノックされた。
せーのでコゲタと激戦を繰り広げていたギルボウ、立ち上がって「今日は終わりだぜ」と声を掛けた。
そうしたら、扉の隙間からドロテアさんの顔が覗くではないか。
「あっ、あんたかあ」
ギルボウの態度が露骨に軟化した。
下町一の美女だからな……。
気持ちはすごくよく分かる。
ギルドマスター夫人の彼女は、成人した子供も三人いて良いお年なのだが……。
人間ではないので年を取らないのだ。
なので、ずっと妙齢の美女のままの姿をしている。
「ナザルさんとコゲタちゃんがお店に入っていったって聞いたから……覗きにきちゃったわ。いい? ギルボウさん」
「ドロテアさんなら仕方ねえなあ。あっ、ナザルが新しいソースを作ったらしくてよ。一緒に食っていってくれよ」
「本当!? じゃあご相伴にあずかっちゃおうかな」
ニコニコしながら入ってきたドロテアさんが、コゲタの隣に腰掛けた。
「こんにちは!」
「はい、こんにちは。コゲタちゃん、少し見ない間に大きくなったわね」
「コゲタせ、のびた! ねえねえ! しってる? せーのしってる?」
「あら、何かしら……」
「こいつがさ、なかなか奥深い遊びなんだよ。年齢関係なく、相手の癖やタイミングを読んでやらないと勝てねえっていう……」
ついにドロテアさんを巻き込んで、せーのを始めてしまった。
思わぬ広がりを見せてしまうのではないか?
だが、僕は料理に没頭だ。
醤油マーガリンで炒めたパスタは実にいい匂いがし始めている。
せーのに興じていた三人が、チラチラこっちを見ている。
醤油もマーガリンも大豆由来……!!
具材として、燻製肉をスライスしたやつを細かく切ったり、茹で野菜を載せたりした。
味見をしてみる。
醤油すげえ。
味に統一感が出ている。
豆腐に醤油を掛けたものは……。
うんうん。
完全に想定通りの味。これで冷やす技術があれば最高の冷奴になるのだが。
焼き魚は赤身魚で、ちょっと臭みがあるがこれを醤油がガツンと打ち消している気がする……。
僕が知っている醤油とは違うパワーを持っているんじゃないか、これ?
「出来ましたぞー」
「おおーっ」
「わーい!」
「楽しみだわ」
三人のテーブルに、和風パスタと豆腐と焼き魚を並べる。
それぞれに醤油を必要な分だけかけて、と。
「コゲタはあまりしょっぱいのはダメだから、他にもうちょっと塩味が欲しい人は追加で醤油を掛けてくれ」
そう言って、実食してもらうことにしたのだった。
「全体的に茶色くなるな」
「醤油だからな」
「いいによいー」
「醤油だからねえ」
「美味しそうだわ。どうしようかしら。ちょっと太っちゃうかも……」
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