俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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57・我、コロッケを欲す

第164話 材料揃ってるじゃないか

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 先日、バンキンの店で醤油を振る舞った際に思ったことだ。
 コロッケの材料、揃ってるじゃん。
 作るか、コロッケ。

 芋はすぐに市場で手に入るが……。
 せっかくならば採れたてで行きたい。

 行こう、芋畑。
 コゲタを連れて散歩がてら行こうと思っていたら、アーランの門で意外な人物が待っているではないか。

「なにいっ、リップル!」

「ふふふ……君が芋を採りに行くだろうと推理していたんだ」

「予言レベルじゃないか。どういう手がかりでそんな結論に達したんだ……」

「君がドロテアと食事をした話は聞いている。そこで君はぶつぶつと、様々な揚げ物の話をしたようだが、以前の芋畑がその内容にあったそうじゃないか。これは、芋を使って新しい揚げ物を作ろうとしていると私は踏んだ。間違いないだろう?」

「うーん、間違いない」

「おいも!」

 コゲタは基本的にいつも上機嫌なので、ズボンの穴から出た尻尾をふりふりした。

「そうだなあーコゲタ。ご主人と一緒にお芋掘りに行こうね」

「やったー! コゲタおいもほりしたい!」

 ね、とこっちを見るリップル。
 うーん、コゲタが行きたいなら僕は弱い。
 では行くかということになったのだった。

「そういえば去年、リップルと二人で行ったんだっけ」

「そうそう。あの時のナザルはまだまだ料理にそこまで興味がなくて、若々しかったなあ」

「おい、今の僕がまるで年を取ったみたいな物言いじゃないか」

「濃厚な一年を過ごしてちょっと老成しただろ」

「それは確かに……」

 リップルとやり取りをしながら、芋畑への街道を行く。
 アーランは遺跡内で色々なものを栽培できるだろうに、その農場主はわざわざ郊外に畑を作っているのだ。

 日々、獣やモンスターと戦いながら芋を育てている。
 連作障害を避けるため、芋畑は翌年には別の野菜になっているようだ。

「見えてきたぞ。数時間で到着するところだが……よくぞこんな広い畑があの冷戦中も無事でいたもんだ……」

「そりゃあそうさ。ファイブスターズ側も、あわよくばこの素晴らしい畑が欲しかったんだろう。だが戦争は終わり、この畑の産物は正当な代価によって手に入るようになった。なんだかんだ、入手が容易になれば物騒な興味は薄れるものさ」

「そんなもんなんだなあ」

 芋畑は広大だが、広い柵によって囲まれている。
 おっと、去年芋が生えてたところに蔓草が茂ってるな。
 これは豆か!

 大豆とはまた違う、えんどう豆みたいなやつだぞ。
 かつて味気ない野菜スープの中に入ってた豆はこれかも知れない。

 今ならば、もっと美味しくできそうな気がするなあ。

「こんちはー」

 僕が声を掛けると、作業をしていた農夫がこちらに気付いた。

「なんだなんだ。芋はもう少ししたらアーランに運ばれるから……。……あっ! あんた、油使いじゃないか!!」

「覚えててくれたか」

「そりゃあ当然だろ! あれ以来、揚げ芋はうちの畑の一番人気のおやつなんだ」

「そうなのか! そりゃあいいなあ……。でも冬はどうするんだ?」

「冬は別の野菜を作ってるからな。カブを揚げたら油がハネてとんでもないことになった」

 水気が多いからな……。

「今日は採れたての芋で新しい揚げ物を作りに来たんだけど」

「なにっ! ほんとか!? ちょっと待て、オーナー呼んでくる」

 僕とコゲタとリップルが適当な石の上に腰掛けて待つと、しばらくして農夫数名と太ったおじさんが走ってきた。

「おお、油使い!!」

「一年ぶりですオーナー」

 畑の農場主だ。
 今はオーナーって呼ばれてるらしいな。

「新しい芋料理を考えついたそうじゃないか。実はな、うちでは金を取って芋掘りをさせようと考えてるんだ。で、その場で芋を料理して食えると売りになるだろ?」

「おお、商売人根性!!」

「ところでオーナー、その後はフリーダスの信者の被害は無いのかい?」

「ああ、おかげさまでな。揚げ芋はせっせと俺等で消費してるが、あれを食うとパワーが湧いてくるな。モンスターどもにもあれ以来侵入を許してねえよ」

 やるなあ。
 
 「おいもー!」

 いつまでも僕がお喋りしているので、飽きたコゲタがバタバタした。
 そうだったそうだった。

「じゃあ早速芋掘りからの料理をさせてもらっていいですかね?」

「ああ、もちろんだ! 芋掘りのテストケースだ。存分にやってくれ。それでこっちで、芋掘りの値段を決める参考にさせてもらうからよ」

 ガッチリしている。
 僕ら三人で、掘ってもいい畑まで案内された。
 ほうほう、青々と茂る芋よ!

 小さなスコップを手渡され、これを使って芋を掘る……。

「よーしコゲタ、芋掘りするぞー!」

「おいもほり、するぞー!」

「芋掘りで体を動かして、お腹を減らしてナザルの揚げ物を食べるとするかあ!」

 リップルもやる気だ。
 ということで、僕らは芋畑に挑むことにするのだった。

「それでナザル、今日のメニューは揚げ芋……いや、新作の芋の揚げ物だけなのかい?」

「いやいや、実はさっき見かけた豆で新しいアイデアが湧いてきてね。さらなる新作にご期待下さい」

「楽しみだなあ! ……一応、油は少なめでね?」

 任せとけ。

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