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58・ツーテイカーからの誘い
第170話 このキノコを全部自由にしていいんですか!?
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ベンクマンに許可をもらったので、大手を振ってキノコ農場へ向かう。
また目隠しと耳栓をされて運ばれていくのだ。
用心深いな……。
まあ、ツーテイカーの支配者だし、あちらこちらから恨みも買っているのだろう。
身を守るためには仕方あるまい。
ああやってずっと穴蔵みたいなところで暮らしているというのも、権力者は大変なものだ。
「それはそうだぞナザル」
外に出て耳栓を外したら、いきなりシズマが会話を始めてきた。
どうやら僕の思考が口に出ていたらしい。
「うちのリーダーの親父を見ろ」
「デュオス殿下か」
「ああ。我らグローリーホビーズのクセ強三人をまとめ上げる苦労人、神の戦士ツインだ。時代が時代なら王子だったというのにああやって自力で冒険者として大成せねばならなかったし、デュオス殿下はもう色々縛られて大変だったじゃないか」
「確かに……! 権力者は権力者で大変だよな。その点、根無し草である僕らは大変自由だ」
「然り然り」
「二人とも本当に仲がいいなあ。さすが同郷」
飼い主氏が感心しているのだった。
さて、コゲタとアララちゃんを連れて、僕らはキノコ畑にやって来た。
ここはツーテイカーの裏にある怪しい林の中にあった。
たくさんの木々が立ち枯れたり、倒木になっていたり。
空はまだ元気な木の茂らせた葉で覆われ、光があまり差し込まない。
「この昼なお暗い場所で、しかもじめじめしている環境……キノコ栽培にぴったりじゃないか」
「我がツーテイカーはこんな気候だからね。キノコや苔の栽培に関しては他国の追随を許さないよ」
ちょっと誇らしげな飼い主氏なのだった。
アララちゃんもトテトテと彼の横に並んで、真似して胸を張った。
「おー!」
コゲタがポフポフと拍手する。
僕らも倣って拍手した。
そしてここで、栽培の職人さん登場。
「私が職人です」
「どうもどうも。よろしくお願いします。キノコで美味しい料理を作りに来ました」
「やや、ありがたい! うちのキノコは凄いスペックを持っているんですよ。焼くだけでも美味しいですし、スープに入れてもいい。肉と一緒に炒めてもいい。ですが、やはり付け合せの扱いで、みんなキノコの本当の良さを分かっていない……」
キノコ職人はぬぎぎぎぎ、ととても悔しそうな顔をした。
キノコ愛が深い。
「では、キノコを主役にできる料理を作りましょう。それで、ここのキノコというのは……」
「はい、こちらです」
彼が案内してくれたのは、林の奥。
あちこちにキノコがあるのだが、指し示した場所には、立派な傘を広げた茶色のキノコが!!
「しいたけのようにも見えるが、柄の部分はエリンギのようにも見える……」
「食べる場所で味も食感も全く違うんです。キングキノコと名付けました」
「キングキノコ!! それは凄い……」
一本あれば、様々な食べ方が出来てしまうのではないだろうか?
「コゲタ、匂いはどう?」
「んー」
くんくんするコゲタ。
「ふしぎなによい!」
「そっかー」
松茸のような強烈な香りは無いようだ。
まあ、僕の鼻はともかく、コゲタがくんくんしても臭くもなんともないなら、香りそのものの個性は薄いんだろう。
「ではすぐさま料理をしてみます」
「おお、ドキドキ!」
キノコ職人が目をキラキラさせて見守る。
僕は彼の前で、キノコを分解した。
まず傘、つば、そして柄。
傘は手で容易に裂ける柔らかさ。
つばは薄くてふわふわしていると思ったら、なんと網目状ではないか。
「これは面白い食感になりそうだな……。素揚げにしよう」
柄はコシがある感じ。
これは繊維に沿って切って、シャキシャキした歯ごたえを楽しめるようにしたい。
まずはキノコの性質を知るために、それぞれの部位を素揚げにしてみた。
「召し上がれ!」
「ほう、キノコの素揚げですか。確かに揚げるという発想はあまりなかったですね」
「私も、キノコと言えば焼くか煮るか炒めるかだった」
「美味そうだなあー」
三者三様の反応である。
早速僕も一緒に食べてみた。
「おっ、傘は肉厚でほくほくしてるな! 柔らかくてすぐに噛み切れる。これは食べやすいなあ」
「ほう! 長年育てていたのに、つばの部分がパリパリサクサクになるとは知りませんでしたよ!」
「ああ、これは美味いな。だが、柄のシャキシャキ感も凄いぞ」
「美味い美味い美味い」
全ての部位が美味い。
つばだけは、別にして揚げたほうがいい気がする。
薄く、それだけに揚げるとサクサク食感になる。
揚げすぎると黒焦げになってしまいそうで、他の部位とは調理の所要時間が明らかに違うだろう。
だが、傘と柄は一緒にしたままざく切りにし、衣につけてかき揚げにするのがいいのではないかな……。
コボルドの二人が、素揚げをおいしいおいしい言いながらむしゃむしゃしているのを横目に、僕はかき揚げづくりに邁進するのだ!
2つの食感をいかにマッチさせるか。
そして揚げる温度は? 時間はどうするか……!
ここから、何度かのテストを行って最良のキノコかき揚げを作らねばな。
「ナザル、お前、油を使えるなら中に入り込んだ油でキノコの揚がり具合が分かるのでは?」
シズマのアドバイス!
「あ、言われてみればそうか!」
多分二回くらいでベストな揚がり具合が分かりそうである。
また目隠しと耳栓をされて運ばれていくのだ。
用心深いな……。
まあ、ツーテイカーの支配者だし、あちらこちらから恨みも買っているのだろう。
身を守るためには仕方あるまい。
ああやってずっと穴蔵みたいなところで暮らしているというのも、権力者は大変なものだ。
「それはそうだぞナザル」
外に出て耳栓を外したら、いきなりシズマが会話を始めてきた。
どうやら僕の思考が口に出ていたらしい。
「うちのリーダーの親父を見ろ」
「デュオス殿下か」
「ああ。我らグローリーホビーズのクセ強三人をまとめ上げる苦労人、神の戦士ツインだ。時代が時代なら王子だったというのにああやって自力で冒険者として大成せねばならなかったし、デュオス殿下はもう色々縛られて大変だったじゃないか」
「確かに……! 権力者は権力者で大変だよな。その点、根無し草である僕らは大変自由だ」
「然り然り」
「二人とも本当に仲がいいなあ。さすが同郷」
飼い主氏が感心しているのだった。
さて、コゲタとアララちゃんを連れて、僕らはキノコ畑にやって来た。
ここはツーテイカーの裏にある怪しい林の中にあった。
たくさんの木々が立ち枯れたり、倒木になっていたり。
空はまだ元気な木の茂らせた葉で覆われ、光があまり差し込まない。
「この昼なお暗い場所で、しかもじめじめしている環境……キノコ栽培にぴったりじゃないか」
「我がツーテイカーはこんな気候だからね。キノコや苔の栽培に関しては他国の追随を許さないよ」
ちょっと誇らしげな飼い主氏なのだった。
アララちゃんもトテトテと彼の横に並んで、真似して胸を張った。
「おー!」
コゲタがポフポフと拍手する。
僕らも倣って拍手した。
そしてここで、栽培の職人さん登場。
「私が職人です」
「どうもどうも。よろしくお願いします。キノコで美味しい料理を作りに来ました」
「やや、ありがたい! うちのキノコは凄いスペックを持っているんですよ。焼くだけでも美味しいですし、スープに入れてもいい。肉と一緒に炒めてもいい。ですが、やはり付け合せの扱いで、みんなキノコの本当の良さを分かっていない……」
キノコ職人はぬぎぎぎぎ、ととても悔しそうな顔をした。
キノコ愛が深い。
「では、キノコを主役にできる料理を作りましょう。それで、ここのキノコというのは……」
「はい、こちらです」
彼が案内してくれたのは、林の奥。
あちこちにキノコがあるのだが、指し示した場所には、立派な傘を広げた茶色のキノコが!!
「しいたけのようにも見えるが、柄の部分はエリンギのようにも見える……」
「食べる場所で味も食感も全く違うんです。キングキノコと名付けました」
「キングキノコ!! それは凄い……」
一本あれば、様々な食べ方が出来てしまうのではないだろうか?
「コゲタ、匂いはどう?」
「んー」
くんくんするコゲタ。
「ふしぎなによい!」
「そっかー」
松茸のような強烈な香りは無いようだ。
まあ、僕の鼻はともかく、コゲタがくんくんしても臭くもなんともないなら、香りそのものの個性は薄いんだろう。
「ではすぐさま料理をしてみます」
「おお、ドキドキ!」
キノコ職人が目をキラキラさせて見守る。
僕は彼の前で、キノコを分解した。
まず傘、つば、そして柄。
傘は手で容易に裂ける柔らかさ。
つばは薄くてふわふわしていると思ったら、なんと網目状ではないか。
「これは面白い食感になりそうだな……。素揚げにしよう」
柄はコシがある感じ。
これは繊維に沿って切って、シャキシャキした歯ごたえを楽しめるようにしたい。
まずはキノコの性質を知るために、それぞれの部位を素揚げにしてみた。
「召し上がれ!」
「ほう、キノコの素揚げですか。確かに揚げるという発想はあまりなかったですね」
「私も、キノコと言えば焼くか煮るか炒めるかだった」
「美味そうだなあー」
三者三様の反応である。
早速僕も一緒に食べてみた。
「おっ、傘は肉厚でほくほくしてるな! 柔らかくてすぐに噛み切れる。これは食べやすいなあ」
「ほう! 長年育てていたのに、つばの部分がパリパリサクサクになるとは知りませんでしたよ!」
「ああ、これは美味いな。だが、柄のシャキシャキ感も凄いぞ」
「美味い美味い美味い」
全ての部位が美味い。
つばだけは、別にして揚げたほうがいい気がする。
薄く、それだけに揚げるとサクサク食感になる。
揚げすぎると黒焦げになってしまいそうで、他の部位とは調理の所要時間が明らかに違うだろう。
だが、傘と柄は一緒にしたままざく切りにし、衣につけてかき揚げにするのがいいのではないかな……。
コボルドの二人が、素揚げをおいしいおいしい言いながらむしゃむしゃしているのを横目に、僕はかき揚げづくりに邁進するのだ!
2つの食感をいかにマッチさせるか。
そして揚げる温度は? 時間はどうするか……!
ここから、何度かのテストを行って最良のキノコかき揚げを作らねばな。
「ナザル、お前、油を使えるなら中に入り込んだ油でキノコの揚がり具合が分かるのでは?」
シズマのアドバイス!
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