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61・魔導書を掘り起こせ
第179話 賢者の塔へ
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夜にコゲタをお風呂に入れたら、案の定「いやーんおふろいやーん」と言ってたのだが、きれいきれいしないとね。
すっかりきれいになって、水気も拭き取り、暖かくして乾かすのだ。
「おふろぬれるからきらーい」
「たまに入らないと臭くなっちゃうだろ」
「くさいのきらーい!」
「ではお風呂に入らないとだな」
「でもおふろきらーい!」
難しいお年頃だ。
今日は旅の汚れを落とした感じだったので、またしばらくお風呂はいらなかろう。
今度は戻った時に、宿のおかみさんに頼むとしよう。
「本当にお前、父親みたいだなあ」
「そうかなあ……」
ってことで、大部屋で三人で川の字になって寝るのだった。
いやあ、広い部屋の床で寝るのは素晴らしいね。
毛皮はふかふかでとても良かった。
朝。
上にコゲタが乗っかってぐうぐう寝ているので、ちょっと重くて目覚めた。
「うーむ」
起き上がったら、コゲタが僕のお腹の上からころころと転げ落ちた。
まだ寝ている。
そしてシズマは寝相が凄いことになっており、部屋の端で壁に逆立ちでのしかかるような体勢だった。
どうやればそうなるんだ?
ちなみにこの宿では食事が出ない。
素泊まりというやつだね。
宿の主人に行ってサウナに入った時のみ、サービスでちょっと出てくるくらいだ。
なので、朝は外で食べる。
魚を焼いて蕎麦のガレットに挟んだやつがあったので、三人でこれを食べた。
お茶も出てくるぞ。
「えー、では腹ごしらえもしたところで、賢者たちの書庫を掘りに行こうと思う」
「おおーっ、いいぞいいぞ」
「たのしみー!」
シズマがうなずき、コゲタが頭の上で拍手する。
ノリの良い彼らを連れて、僕は魔法使いたちの住処に向かうのだった。
噂によると、賢者の塔と呼ばれているとか……。
あっ、見えてきた見えてきた。
五階建てくらいの細長い建物が並んでいる。
なるほど、塔だ。
低い階層を研究室にし、高い階層を住居にしているんだそうだ。
で、それぞれの塔は通路でつながっており、幾つかの塔の中心には書庫がある。
ここは魔法使いたちが使わなくなった本をまとめて保存している場所で、みんなめいめい勝手に、読み終わった魔導書なんかを大量に投棄……いやいや、置いているんだそうだ。
昨日バーで知り合った魔法使いの家を訪ねる。
扉をノックするが出てこない。
「寝ているのかもしれない」
「こういう学者系は朝が遅いって聞くもんな」
「ここで一休みするか」
そういうことになった。
せっかく魚がたくさん穫れる場所に来ているんだから、暇を利用してなにかチャレンジしておいてもいいだろう。
「シズマ、コゲタ、僕はこれからフィッシュフライを作ろうと思う」
「おお!! いいんじゃないか? 是非やってくれ!」
「おいしいやつ? たのしみー!」
楽しみにしてもらっていいぞ!
まずは屋台で買ってきた、調理前の魚をだな……。
あっ、既にお店でお金を払って捌いてもらっている。
だから、切り身だけがここにあるのだ。
魚が身近な都市、本当に便利。
そして僕は、賢者の塔の空き地に焚き火の準備をした。
草木が全く生えておらず、なんならクレーターみたいなのがあちこちにある場所だ。
絶対何かの実験に使われたやつだぞ。
散歩をしていた、明らかに魔法使いっぽい老人が「コラー! 実験場で焚き火をしてはいかん!」とか言ってきた。
「あ、すみません。実はですね、魚を揚げようと思って」
「なにっ、焚き火だけでは飽き足らず、魚を揚げる!? 油はどこにも……」
僕が指先から油を生み出すと、老人は「あっ!」とか叫んだ。
「良かろう。その油でどんな揚げ物ができあがるのか楽しみだ。わしにも食べさせてくれ……」
許可が出たらしい。
僕らと老人とで焚き火をわいわいと作り、サービスで老人が火を付けてくれた。
ここに囲いを作って火力を高め……。
鍋を乗せて大量のサラダ油を注ぎ込む!
「うおおおお油がどんどん生まれてくる!! これがあんたの魔法か! ……はて、こんな魔法使いいたかのう……」
「実は外から、今日は書庫を漁らせてもらう約束で来てまして」
「なんじゃ、そうだったのか。賢者の塔の住人は昼にならんと起きてこないぞ。わしは年寄りだから早起きなのだ」
そういうことでしたか。
だが、お年を召しても揚げ物がお好きとは。
油に指を突っ込むと、温度がわかる。
僕は油からダメージを受けないので、便利なのだ。
「よし、いい温度。行くぞー」
この場でサッとつくった衣に切り身をくぐらせ、じゅわっと揚げる。
素晴らしき、フィッシュフライの揚がる音よ。
「ぐおおお腹が減ってくる音じゃああ」
「だよなだよな。俺は酒が欲しいよ」
「たのしみねー」
そしてすぐにフィッシュフライは完成した。
揚げたて、サクサクのホクホクだ。
これを四人でむしゃむしゃと食べた。
「あーっ、揚げたての魚は美味いのう!! 今まで食べた揚げ物で一番美味いかも知れん。食堂の揚げ物は揚げ置きじゃからのう……」
「揚げたては早々食えないよなあ。こいつと一緒に旅をしてると、油ものの料理が全部できたてで食えるんだ……。最高だぜ……」
「いいのう……。じゃが毎日だとわしのお腹が限界を迎えるであろう」
「流石に年齢がね」
その後、コゲタが冷ましながらハフハフ食べるのを眺めて、時間を潰すのだった。
二度目を揚げるか、となった頃合い。
「あー、いい匂いで目覚めた……。なにか揚げてるの?」
バーで出会った魔法使いが上の階から顔を出す。
どうやら腹の虫に負けて、いつもより早く起きたようなのだった。
すっかりきれいになって、水気も拭き取り、暖かくして乾かすのだ。
「おふろぬれるからきらーい」
「たまに入らないと臭くなっちゃうだろ」
「くさいのきらーい!」
「ではお風呂に入らないとだな」
「でもおふろきらーい!」
難しいお年頃だ。
今日は旅の汚れを落とした感じだったので、またしばらくお風呂はいらなかろう。
今度は戻った時に、宿のおかみさんに頼むとしよう。
「本当にお前、父親みたいだなあ」
「そうかなあ……」
ってことで、大部屋で三人で川の字になって寝るのだった。
いやあ、広い部屋の床で寝るのは素晴らしいね。
毛皮はふかふかでとても良かった。
朝。
上にコゲタが乗っかってぐうぐう寝ているので、ちょっと重くて目覚めた。
「うーむ」
起き上がったら、コゲタが僕のお腹の上からころころと転げ落ちた。
まだ寝ている。
そしてシズマは寝相が凄いことになっており、部屋の端で壁に逆立ちでのしかかるような体勢だった。
どうやればそうなるんだ?
ちなみにこの宿では食事が出ない。
素泊まりというやつだね。
宿の主人に行ってサウナに入った時のみ、サービスでちょっと出てくるくらいだ。
なので、朝は外で食べる。
魚を焼いて蕎麦のガレットに挟んだやつがあったので、三人でこれを食べた。
お茶も出てくるぞ。
「えー、では腹ごしらえもしたところで、賢者たちの書庫を掘りに行こうと思う」
「おおーっ、いいぞいいぞ」
「たのしみー!」
シズマがうなずき、コゲタが頭の上で拍手する。
ノリの良い彼らを連れて、僕は魔法使いたちの住処に向かうのだった。
噂によると、賢者の塔と呼ばれているとか……。
あっ、見えてきた見えてきた。
五階建てくらいの細長い建物が並んでいる。
なるほど、塔だ。
低い階層を研究室にし、高い階層を住居にしているんだそうだ。
で、それぞれの塔は通路でつながっており、幾つかの塔の中心には書庫がある。
ここは魔法使いたちが使わなくなった本をまとめて保存している場所で、みんなめいめい勝手に、読み終わった魔導書なんかを大量に投棄……いやいや、置いているんだそうだ。
昨日バーで知り合った魔法使いの家を訪ねる。
扉をノックするが出てこない。
「寝ているのかもしれない」
「こういう学者系は朝が遅いって聞くもんな」
「ここで一休みするか」
そういうことになった。
せっかく魚がたくさん穫れる場所に来ているんだから、暇を利用してなにかチャレンジしておいてもいいだろう。
「シズマ、コゲタ、僕はこれからフィッシュフライを作ろうと思う」
「おお!! いいんじゃないか? 是非やってくれ!」
「おいしいやつ? たのしみー!」
楽しみにしてもらっていいぞ!
まずは屋台で買ってきた、調理前の魚をだな……。
あっ、既にお店でお金を払って捌いてもらっている。
だから、切り身だけがここにあるのだ。
魚が身近な都市、本当に便利。
そして僕は、賢者の塔の空き地に焚き火の準備をした。
草木が全く生えておらず、なんならクレーターみたいなのがあちこちにある場所だ。
絶対何かの実験に使われたやつだぞ。
散歩をしていた、明らかに魔法使いっぽい老人が「コラー! 実験場で焚き火をしてはいかん!」とか言ってきた。
「あ、すみません。実はですね、魚を揚げようと思って」
「なにっ、焚き火だけでは飽き足らず、魚を揚げる!? 油はどこにも……」
僕が指先から油を生み出すと、老人は「あっ!」とか叫んだ。
「良かろう。その油でどんな揚げ物ができあがるのか楽しみだ。わしにも食べさせてくれ……」
許可が出たらしい。
僕らと老人とで焚き火をわいわいと作り、サービスで老人が火を付けてくれた。
ここに囲いを作って火力を高め……。
鍋を乗せて大量のサラダ油を注ぎ込む!
「うおおおお油がどんどん生まれてくる!! これがあんたの魔法か! ……はて、こんな魔法使いいたかのう……」
「実は外から、今日は書庫を漁らせてもらう約束で来てまして」
「なんじゃ、そうだったのか。賢者の塔の住人は昼にならんと起きてこないぞ。わしは年寄りだから早起きなのだ」
そういうことでしたか。
だが、お年を召しても揚げ物がお好きとは。
油に指を突っ込むと、温度がわかる。
僕は油からダメージを受けないので、便利なのだ。
「よし、いい温度。行くぞー」
この場でサッとつくった衣に切り身をくぐらせ、じゅわっと揚げる。
素晴らしき、フィッシュフライの揚がる音よ。
「ぐおおお腹が減ってくる音じゃああ」
「だよなだよな。俺は酒が欲しいよ」
「たのしみねー」
そしてすぐにフィッシュフライは完成した。
揚げたて、サクサクのホクホクだ。
これを四人でむしゃむしゃと食べた。
「あーっ、揚げたての魚は美味いのう!! 今まで食べた揚げ物で一番美味いかも知れん。食堂の揚げ物は揚げ置きじゃからのう……」
「揚げたては早々食えないよなあ。こいつと一緒に旅をしてると、油ものの料理が全部できたてで食えるんだ……。最高だぜ……」
「いいのう……。じゃが毎日だとわしのお腹が限界を迎えるであろう」
「流石に年齢がね」
その後、コゲタが冷ましながらハフハフ食べるのを眺めて、時間を潰すのだった。
二度目を揚げるか、となった頃合い。
「あー、いい匂いで目覚めた……。なにか揚げてるの?」
バーで出会った魔法使いが上の階から顔を出す。
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