190 / 337
64・南の島に行きたい
第190話 下準備をせねば
しおりを挟む
帰ってきてからこっち、大変忙しかった。
冒険者ギルドでやらなきゃいけない義務仕事があったし、受付嬢のエリィが激怒していたのでよくわからんがペコペコし。
リップルにお土産の干物をあげたり、あとはずっと放置してた第二王子のところに出向いて、これからツーテイカーから流れてくる美味しいものの話などを教えた。
デュオス殿下は大いに興奮されて、ツーテイカーの輸出品を積極的に受け入れる事を宣言したのだった。
いやあ、食べ物がないのに説得されてくれて本当にありがたい。
一応それだけではアレということで、キノコの缶詰を使ってかき揚げを作り、献上しておいた。
喜んでもらえた。
いやあ、首の皮が繋がりましたわ!
「二ヶ月もの間何をしていたんだ……!?」
第二王子邸から出たあと、シャザクに聞かれた。
「その話をすると、大変難しい立場になる。殿下にはそれとなく伝えたが、あの方は腹芸ができるからね」
「俺だってできる」
「じゃあ僕がツーテイカーに招聘(しょうへい)されて、彼の国の名産品を作っていたと言えばどうかな」
「ぬぐぐぐ!! び、微妙な立場だ……! 場合によってはお前をスパイとして拘束せねばならぬことになる! 殿下の後ろ盾が無ければそうなっていただろう」
国交が回復したとは言え、ツーテイカーはアーランの仮想敵国である。
なので、僕のこの二ヶ月の行脚を大々的に語ることは出来ない……!!
まあ、それはそれで別にいいんだ。
美味いものたくさん食えたし、キンキンに冷えたビールが近い内にアーランにやって来るのが分かっているしな。
早く国民感情的にもツーテイカーに対してフラットになるといいなあ。
そんな事を考えながら、宿でコゲタを迎えて、一緒に港へ行く僕なのだ。
「ご主人、おふねみにいくの?」
「うん、そんな感じ。まだ出発してないらしいからね」
南方大陸からの船は、秋になった今なお、港に停泊しているらしい。
いつ出ていくのか。
だがちょうどいい。
僕は南方に向かう用事ができたところなのだ。
「ダイフク氏~」
「はいはい」
アビサルワンズのダイフク氏が海にプカプカ浮かんでいたのだが、僕が呼ぶとザバーンと上がってきた。
体を拭いて、腰回りだけ服を身に着けている。
彼はカエルに似た不思議な種族なのだが、カエルと違って塩水の中を泳ぎ回るのも平気らしい。
「おや、お久しぶりですなナザルさん」
「うん、ちょっと名指しでの依頼をもらって出かけていたんだ。まだいたんだなあダイフク氏」
「船主が一年たっぷりいるつもりらしいので、来年の春までは寄港していますよ。おや、それを聞かれるということはもしや……」
「そう。船に乗せてもらおうと思ってね」
「ほほー!」
ダイフク氏が目を見開き、ギョロギョロさせた。
カエルムーブ!
コゲタが真似をして、目を開けてキョロキョロする。
「お上手ですな!」
「おじょうずー!」
しゃがんで、コゲタとハイタッチするダイフク氏。
「それでナザルさん、どういう風の吹き回しですかな? あなたはこの大陸でまったりと過ごす事で満足している方だと思っていたのですが」
「知識神が夢枕に立った……」
「ななななな、なんとー!!」
目を見開いてギョロギョロさせ、口をパカッと開けて舌をびょーんと伸ばすダイフク氏。
カエルやカエル。
コゲタは大喜びでキャッキャしていた。
「知識神と言いますと、我らが神と並び立つ偉大なお方。物静かで影は薄いのですが、何気にこちらの大陸では活躍なさっておられるのですね」
「美食を口にするとみんな饒舌になり、知能指数が上がって素晴らしいボキャブラリを発揮するだろ。あれは間違いなく知識神が介入している」
「なんとーっ!! ナザルさんは知識神様に愛されているお方だったのですね。なるほど、では今回もお告げを受け、新たな知識の探求に……」
「ああ。垂れ耳コボルド族と、芋で作ったパン、そして米がある島を目指したい」
「食い気でしたか」
「僕は常に食い気だ」
「一貫してらっしゃる……。いいでしょう。わしからも船主に伝えて、ナザルさんとコゲタさんの同乗を認めてもらいましょう」
「おお、ありがとうダイフク氏!!」
「いやいやどういたしまして」
「ありがとうおさかな!」
「いやいや」
お魚呼ばわりされて、ダイフク氏が否定のポーズをした。
いちいち動きが面白いので、コゲタがキャッキャッと喜ぶ。
「よし、じゃあお礼がてら、豆腐でも食いに行こう」
「いいですな。わし、あの喉越しはなかなか好みなのです。実は先日、パスタのように細長い豆腐を開発した猛者がおりまして、少々高いのですがアーランの美食家たちの間で評判に」
「なにっ、そうめん風の豆腐とな!?」
そんなとんでもないものを編み出すほど、アーランのシェフたちは実力を上げてきていたのか!!
恐ろしいことだ……。
そんな恐ろしいものはたらふく食べてやらねばなるまいよ。
「よし、それを食べに行こう」
「行きましょう行きましょう」
「なになに? なにたべるのー?」
僕らは商業地区へと繰り出すのだった。
えっ、そうめん風豆腐、柑橘類の汁に漬けて食べるの?
美味そう!
冒険者ギルドでやらなきゃいけない義務仕事があったし、受付嬢のエリィが激怒していたのでよくわからんがペコペコし。
リップルにお土産の干物をあげたり、あとはずっと放置してた第二王子のところに出向いて、これからツーテイカーから流れてくる美味しいものの話などを教えた。
デュオス殿下は大いに興奮されて、ツーテイカーの輸出品を積極的に受け入れる事を宣言したのだった。
いやあ、食べ物がないのに説得されてくれて本当にありがたい。
一応それだけではアレということで、キノコの缶詰を使ってかき揚げを作り、献上しておいた。
喜んでもらえた。
いやあ、首の皮が繋がりましたわ!
「二ヶ月もの間何をしていたんだ……!?」
第二王子邸から出たあと、シャザクに聞かれた。
「その話をすると、大変難しい立場になる。殿下にはそれとなく伝えたが、あの方は腹芸ができるからね」
「俺だってできる」
「じゃあ僕がツーテイカーに招聘(しょうへい)されて、彼の国の名産品を作っていたと言えばどうかな」
「ぬぐぐぐ!! び、微妙な立場だ……! 場合によってはお前をスパイとして拘束せねばならぬことになる! 殿下の後ろ盾が無ければそうなっていただろう」
国交が回復したとは言え、ツーテイカーはアーランの仮想敵国である。
なので、僕のこの二ヶ月の行脚を大々的に語ることは出来ない……!!
まあ、それはそれで別にいいんだ。
美味いものたくさん食えたし、キンキンに冷えたビールが近い内にアーランにやって来るのが分かっているしな。
早く国民感情的にもツーテイカーに対してフラットになるといいなあ。
そんな事を考えながら、宿でコゲタを迎えて、一緒に港へ行く僕なのだ。
「ご主人、おふねみにいくの?」
「うん、そんな感じ。まだ出発してないらしいからね」
南方大陸からの船は、秋になった今なお、港に停泊しているらしい。
いつ出ていくのか。
だがちょうどいい。
僕は南方に向かう用事ができたところなのだ。
「ダイフク氏~」
「はいはい」
アビサルワンズのダイフク氏が海にプカプカ浮かんでいたのだが、僕が呼ぶとザバーンと上がってきた。
体を拭いて、腰回りだけ服を身に着けている。
彼はカエルに似た不思議な種族なのだが、カエルと違って塩水の中を泳ぎ回るのも平気らしい。
「おや、お久しぶりですなナザルさん」
「うん、ちょっと名指しでの依頼をもらって出かけていたんだ。まだいたんだなあダイフク氏」
「船主が一年たっぷりいるつもりらしいので、来年の春までは寄港していますよ。おや、それを聞かれるということはもしや……」
「そう。船に乗せてもらおうと思ってね」
「ほほー!」
ダイフク氏が目を見開き、ギョロギョロさせた。
カエルムーブ!
コゲタが真似をして、目を開けてキョロキョロする。
「お上手ですな!」
「おじょうずー!」
しゃがんで、コゲタとハイタッチするダイフク氏。
「それでナザルさん、どういう風の吹き回しですかな? あなたはこの大陸でまったりと過ごす事で満足している方だと思っていたのですが」
「知識神が夢枕に立った……」
「ななななな、なんとー!!」
目を見開いてギョロギョロさせ、口をパカッと開けて舌をびょーんと伸ばすダイフク氏。
カエルやカエル。
コゲタは大喜びでキャッキャしていた。
「知識神と言いますと、我らが神と並び立つ偉大なお方。物静かで影は薄いのですが、何気にこちらの大陸では活躍なさっておられるのですね」
「美食を口にするとみんな饒舌になり、知能指数が上がって素晴らしいボキャブラリを発揮するだろ。あれは間違いなく知識神が介入している」
「なんとーっ!! ナザルさんは知識神様に愛されているお方だったのですね。なるほど、では今回もお告げを受け、新たな知識の探求に……」
「ああ。垂れ耳コボルド族と、芋で作ったパン、そして米がある島を目指したい」
「食い気でしたか」
「僕は常に食い気だ」
「一貫してらっしゃる……。いいでしょう。わしからも船主に伝えて、ナザルさんとコゲタさんの同乗を認めてもらいましょう」
「おお、ありがとうダイフク氏!!」
「いやいやどういたしまして」
「ありがとうおさかな!」
「いやいや」
お魚呼ばわりされて、ダイフク氏が否定のポーズをした。
いちいち動きが面白いので、コゲタがキャッキャッと喜ぶ。
「よし、じゃあお礼がてら、豆腐でも食いに行こう」
「いいですな。わし、あの喉越しはなかなか好みなのです。実は先日、パスタのように細長い豆腐を開発した猛者がおりまして、少々高いのですがアーランの美食家たちの間で評判に」
「なにっ、そうめん風の豆腐とな!?」
そんなとんでもないものを編み出すほど、アーランのシェフたちは実力を上げてきていたのか!!
恐ろしいことだ……。
そんな恐ろしいものはたらふく食べてやらねばなるまいよ。
「よし、それを食べに行こう」
「行きましょう行きましょう」
「なになに? なにたべるのー?」
僕らは商業地区へと繰り出すのだった。
えっ、そうめん風豆腐、柑橘類の汁に漬けて食べるの?
美味そう!
32
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる