俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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65・勝手に遺跡の第四層へ

第192話 正面から堂々と行くぞ

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「やあやあ、通りますよ」

「ああ、こいつはナザルさん、どうもどうも」

「君はこんなところにも顔が利くのか! あっという間に顔が広くなったなあ……」

「美食は世界を狭くするからね……」

 遺跡入口の門番たちに挨拶をしたらすぐに通してくれた。
 これは、僕が第二王子をバックに持っているということが、兵士たちに知れ渡っているためだ。
 お偉い人お抱えの冒険者、一兵士が足止めなんかして、それを偉い人に報告なんかされたら大変だもんな。

 今回、僕とリップルの二人でダンジョンアタックする理由だが……。
 ぶっちゃけ、他のメンバーだとゴールド級冒険者でもない限り、足手まといになるからだ。

「まさか私たちが、現在攻略中の第四層を勝手に先に先に進んでいこうとしているとは思うまい」

「なんでリップルはやる気になっているんだ……?」

「ちょっと私も船に乗ってみたくなったんだ……」

「一緒に来る気か! プラチナ級が勝手に動いて、国が黙ってないんじゃないか?」

「私には何十年もの間、全く動いていなかった実績がある。まさか今になって、私がいきなり船で国外に出るなんて誰一人想像もできないさ」

「な、なるほど……!!」

 めちゃくちゃに時間を掛けた計略だったか……。
 いや、今のこれは思いつきだろう。
 リップル、去年辺りからちょっとだけ活発化してるからな。

 顔見知りの農夫たちに挨拶しながら第一層を抜ける。
 第二層は酪農だから、牛や豚にまぎれて移動できる。

 そして第三層は開発途中。
 実質的に僕の持ち物である、特殊な農園みたいなのがあちこちに広がっている。
 大豆とか、オブリーとか、にんにくとか……。

 この国の調味料は僕が一手に担っている気がしないでもない。

 当然ながら、この階層に僕がいることを疑問に思うものはいないのだ。

「あれっ? ナザルじゃん。リップルさんもいる」

「あ、バンキン。何してるんだお前。……って、護衛か」

「そうそう。二週間ここで護衛仕事だよ。実入りがいいし、何より飯がうめえんだ」

 第三層の農園は、基本的に護衛を雇っている。
 第四層から上がってくるモンスターと戦ってもらうためだ。

 黙っていても拘束料はそれなりだし、戦いがあれば危険手当が出る。
 これは国から金が出ているから、僕の懐は傷まないぞ。

「僕はな、ちょっと第四層を覗きに行く……」

「ほおー。正式な仕事なのか?」

「まあ広義ではそんなもんだ」

 バンキンは「なるほどなー」とすぐに納得した。
 僕とデュオス殿下のつながりを知っていると、変なツッコミをしなくなるな。
 便利過ぎる。

「いや、本当に便利だね。全く詮索されないぞ」

 バンキンと別れてから、リップルがしみじみ呟いた。
 ほんとにね。
 
 そして僕らは、第四層に続くエレベーターに乗り込む。
 魔導エレベーター。
 おそらくは、この遺跡の最下層まで繋がっている移動装置だ。

 だが、その機能の多くはロックされており、それぞれの階層のガーディアンを退治しないとアンロックされないらしい。
 まあ僕には全く興味がない話だ!

 第四層にある可能性がある、はるか南にある島の情報が書き込まれた本を探すのが目的なのだ。

「おっと、到着した。どれどれ? どんな感じになっているかな……」

 リップルはかつて、遺跡の第二層攻略に参加してたことがあるという。
 とにかく、呆れるほど広い遺跡。
 隅から隅まで、罠やモンスターを退治するのがとにかく大変だったそうだ。

「ガーディアン? メテオストライクが使えないだろ? もう面倒で面倒で。ライトニングブラストをぶつけ続けて無理やり倒したよ」

「それも屋内で使用可能な最上位の電撃魔法じゃないか」

 身も蓋もない。
 それがリップルの戦い方だ。
 本人、戦うのはあまり楽しくないらしい。

 気持ちは分かる。
 君のやり方は作業そのものだもんなあ。

「あっ、扉が開いた」

 第四層に降り立つ僕らなのだ。
 ほうほう、攻略終了したエリアにはフラッグが立ててある。
 そこは安全エリアというわけだ。

 モンスターたちは、攻略されたエリアには基本的に立ち入らない。
 極稀に、暴走したモンスターが踏み入ってくる程度だ。

「これまで攻略されたエリアで、書物などが見つかったという話は聞いているよ。それらは特に、この第四層で発見されている。書物や記録が多く残された階層であることは確かだ。私が思うに、第四層を攻略することでアーランはさらに発展することだろうね」

 かなり凄い事を言っているのだが、当のリップルは全く興味がなさそうだ。

「だって、国がどれだけ強くなっても、私には特に意味がないじゃないか。それよりは、今ナザルがやっているような、生活の質を向上させる活動のほうが大事なんだ。私がやる気になったのは、君のせいなんだぞ。私が見たこともない美味しいものがまだまだあるかも知れないと思うと、やる気が湧いてくるじゃないか」

「語るなあ……! だけど、リップルの生活に張りを与えられてこっちも嬉しいよ」

「頼むぞ……! お腹に優しい美味しいものを開発してくれよ……!」

「あっ、寄る年波……いてっ!」

 リップルに小突かれてしまったのだった。


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