俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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77・旅立ちの時

第233話 海釣りしながら雑談を

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「今日は風がありませんね。釣りをしましょう」

 垂れ耳コボルドのマキシフがやってきて、そんな提案をしてきた。
 いいね!

 僕とコゲタとダイフク氏で、釣り竿を持ってくる。

 他の船員たちも、風が吹くまではのんびりと釣りをするようだ。
 これは食料調達でもある。
 趣味であり、仕事でもあるのだ!

「よろしくねー!」

「はい、よろしく」

 大柄でもふもふしたマキシフの隣に、コゲタがちょこんと座る。
 同じコボルドでも全然サイズが違う!

「それに、マキシフは喋り方が賢いよな。こう……子供っぽい口調ではなく、ちゃんと理解して人間の言葉を口にしてる感じがする」

「そうですね。僕ら南の島のコボルド族には、ごく一部知能に優れた種族がいるんですよ」

「な、なんとー!! そんなにいろいろいるの?」

「いるんです。南の島は僕らコボルドが半分、残り半分は島人が暮らしていて、温暖な場所と高山地帯の寒い場所があるんです。僕は寒い場所の生まれです」

「ほうほう。寒いところのコボルドは賢い?」

「小さいコボルドはコゲタと同じ感じかな。もう少し大きなコボルドから、賢いのが混じってきます。でも、個人差ですかねえ」

「本当に賢いなあ……」

 マキシフは海釣りの仕方を、コゲタに優しく教えながら二人で並んでいる。
 後ろから見ると、兄弟のようだ。
 和む~。

「彼は大変有能なクルーなんですぞ。さてナザル殿」

「うむ。僕らも釣りと洒落込もう」

 ダイフク氏と並んで釣り糸を垂らすのである。
 おお、いい陽気の下、ささやかな潮風に吹かれながらの釣り。
 これはいいものだ。

 眼の前にはどこまでも広がる大海原。
 背後にも広大な大海原。

「なんと心地良い環境であろうか。これならば何も釣れなくても全く気にならない……」

 糸に反応あり!

「うおおおお! きたきたきたぁーっ!! いけいけいけいけいけ! フィーッシュ!!」

「急に賑やかになりましたな!」

 僕は大騒ぎしながら、それなりに大きな青魚を釣り上げた。
 これはなんだ?

「スープフィッシュですな。茹でると恐ろしくいい出汁が出ますぞ」

「茹でられるために生まれてきたような魚!! そんなのがいるのか」

「足が早いので獲れたらすぐに食べてしまいますからな。陸の上では口にできぬ珍味です。今日中に食べてしまいましょう。恐らく、スープフィッシュの群れに当たりましたな。わしも……むおおっ! きたきた!」

 向こうではマキシフとコゲタも、わあわあ言っている。
 スープフィッシュの大きさなら、コゲタでも釣り上げられるだろう。

 こんな釣り日和なのに、リップルは一体何をやっているのだ。
 あっ!
 マストの間にハンモックを吊るし、そこで寝ているではないか。

 そして見張り役の船員が、それをじーっと見ている。
 リップル、モテモテだな……。

 だが、あまりにゴロゴロしていると太るぞ。
 積み上がるスープフィッシュ。

 料理役の船員が上がってきて、

「ナザルさん、腕を見せてくださいよ」

 とせがんでくる。
 いいだろう。

 僕は腕まくりして厨房へ向かう。
 そこは船内では唯一、防炎処理がされている場所なのだ。

 換気できるよう窓が空いていて、鍋から立ち上る煙が出ていっている。

「スープフィッシュはどうやって下処理するの?」

「こいつはですね、ぶつ切りです。皮も剥きません。茹でてると皮がトゥルットゥルになるんで」

「ほほー!!」

 まずは基本的な調理方法をやってみようということになった。
 ぶつ切りにしていく!

 ズドンズドンと出刃包丁で叩き切る。
 骨の節がわかりやすいようで、いい感じでぶつ切りにできるな。

 で、これを水に入れて茹でる。

「ここに蒸留水が用意してありますぜ」

「ありがとう! これで茹でていくと……」

 しばらくグツグツやっている間に、スープフィッシュの異なる可能性を模索することにする。
 鍋に油を生み出して敷き詰め、そこでソテーする。

「オブリーオイル、そしてバター……」

「複数の油を生み出している!?」

「僕は油使いだからね……。おお、皮を炒めているだけでもいい香りがしてくる……。こいつ、全身に出汁が存在している魚だな!」

 皮から肉に熱が伝わると、汁が染み出してくる。
 油になんとも言えぬ小麦色の汁が満ち……。
 暴力的な香味が厨房を支配した。

「ウワーッ! たっぷりの油で炒めるとこんなことになるのか!!」

 船員氏驚愕。
 大人数向けの料理を作るから、今まではひたすら茹でるだけだったらしい。

 とても腐りやすい魚だろうし、陸に持ち帰ってプロの手に委ねることもできなかったわけだから、この魚の調理方法は確立されていないのだ。
 開拓し放題だぞ。

 こうしている間にも、茹でたやつはいい感じのスープになってきております。
 皮がゼラチン質になってスープにとろみを与え、肉からは出汁が染み出し、骨からは滋味のあるお出汁が出て、内蔵はスープに溶けて味に深みを出す……。
 なんだこの魚!?

 スープの味も美味い!
 そしてソテーはと言うと。

「あっあっ、美味いですよこれ! ナザルさんヤバい、美味いです!!」

 大好評のようだった。
 では船上の豪華なご飯と行こうではないか。


 
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