俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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80・それは白米と言う名の信仰

第242話 夢枕に来たぞ知識神

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「頼むぞ、来てくれ知識神!!」

 そう願いながら、ごろりと横になる僕なのだった。
 昼間はよく働いたお陰で、ほどよく疲れている。
 昨今は油だよりで肉体を行使していなかったからなあ。

 お陰であっという間に、僕は眠りの世界へと落ちていくのだった。
 ハッと気づく。

 そこは背後にまばゆい銀河が流れる世界。
 巨大な光り輝く樹木があって、その枝の先っぽにやっぱり光り輝くマッチョがいた。
 知識神だ。

『困っているようだなナザル……! 呼ばれて飛び出て知識神!! 私が来た!』

「前よりも怪しいノリになってる……」

『聞け、ナザルよ。信者が二十人になったのだ』

「それは凄い!! テンション上がるのも分かる」

『ここからはねずみ算式に増えていくからな。私は詳しいんだ』

「知識神がその道うろ覚えみたいな物言いするのやめてくれませんかね」

『ついつい調子に乗ってしまった。ノーザンス大陸はとにかく知識に無関心な土地でな。私への信仰が薄かった。皆、至高神と慈愛神を信じてまあまあ清く正しく仲良くやっていた。たまに技工神とかの信者はいた。あと稀に自由神』

「はあはあ」

 神が枕元に立ったはいいが、ぶつぶつどうでもいい話をしだしたようだ。
 だが、僕もお告げをもらう側。
 立場が弱い。

 しばらく知識神の雑談に付き合うことにした。

「ワンダバーの魔法使いたちは知識神の信者ですよね」

『その通り。だが篤い信仰心と知性は反比例する傾向にある。まあ分かる』

「分かっちゃうんだ」

『信仰が無くても己の実存を証明できる程度の知性がある者は、ほどほどに他者からの承認を得られると全然平気だったりするのだ。あと、頭がおかしいと必要ない』

「はあはあ。じゃああの魔法使いたちは」

『おかしい方である』

「やっぱり」

 変人ばっかだったもんな。

「で、ですね知識神様。そろそろ本題に入っていただきたいんですが」

『おお、そうだった! 神官は私を信仰してよく働いてくれるのはいいが、私が自我を上書きしたので話してても面白くないのだ。やはり自意識があり、知的な者であり、私を軽んじていない者と喋りたくなる。思わず長話をしてしまったな』

 ハハハ、と笑う知識神なのだった。
 彼の笑いに応じて、その肉体が立つ巨大な輝く枝葉が揺れる。

 ……もしかしてあれはユグドラシルというやつではないだろうか。
 
『日時計にしてこれくらいの時間だ。火加減は、はじめチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いてもふた取るなだ。参考になったか?』

「日本の慣用句にも詳しいなあ」

『知識神だからな。それと、米を炊くならば現地のコボルドを尋ねるがいい。これ以上教えるとワンダーが無くなってしまう。私はこの辺りでお口をチャックするとしよう』

「チャックなんかこの世界にないのに!」

『転生者が現れた時点で、彼らの知る単語は全て私の知るところとなるのだよ』

「そういうシステムだったんですか!!」

 はあーと感心していたら目が覚めてしまった。
 なんという夢枕だ。
 ほぼ九割雑談だったぞ。

『そうなっている。ではな』

「目が覚めたのに声が聞こえる!! なんて神だ。自由過ぎる」

「ナザル、その顔は自由神に振り回されてたな?」

「リップル! 先に起きていたとは……」

「なに、私だってたまには早起きする。さあ、どうだい? 知識神からお告げを授かったのかい?」

「もちろん!」

 ということで!
 まずはきちんとした手順で米を炊くことにした。
 時間が掛かるので、乾パンなどで軽く腹を満たしておく。

 船員たちはまた、僕らを物好きな奴らだなあという目で見ていた。

 なお、今日は昨日よりも二人多い。
 ダイフク氏とマキシフがいるのだ。

「わしは割と好きなんですよね、米。喉越しが素晴らしい」

「硬めのおかゆみたいな感じね。今回はもっともちもちした感じにするよ」

「もちもちですか」

「米の味は大変素晴らしいです。肉体に力が満ちる味です」

「マキシフはよく分かってるね! 丸ごと炭水化物だから、まさにエネルギーなんだよな」

 人数が増えると雑談にも花が咲く。
 そうなると、長い炊飯時間もあっという間なわけで。

 こげたが鼻をくんくんさせた。

「ふしぎなによい!」

「ああ。これは米の匂いだよ。だけど、不思議だ。何度も嗅いだはずなのに、こんなに濃い米の匂いは初めてだ」

 マキシフも鼻をくんくんさせる。
 ということは……。
 どうやら、炊きあがったようだな。

 僕は立ち上がり、火を消した。
 鍋の蓋に手をかけ……ゆっくりと取る。

 そこには……。
 真っ白に光り輝く米の姿があった!

 うおおおおお!
 白米!
 これこそが白米!!

 踊り出したい心地である。
 コゲタが目を丸くし、鼻をふんふんさせる。

 米に詳しいマキシフですら、驚きに大きく口を開けている。

「米が……このような形になるのですか……!? 水は、水はどこに行ったんですか? 全て米が吸ってしまった!? なのに、柔らかくふやけているわけではなく、形をしっかりと保っている……!!」

「食べれば分かる」

 僕はにやりと笑った。

「喉越しはよく無くなってそうですな」

「ダイフク氏には後で喉越しがいいおにぎりを作ってあげるから」

「本当ですかな!?」

 味わってほしいんだけどなあ!

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