255 / 337
84・カズテスの遺跡
第255話 遺跡到達
しおりを挟む
大洞穴の中をもりもりと突き進む。
かなりの奥深くまで通じており、まるで螺旋階段のようだ。
「いやあ、上に行くほど暖かくなるという不思議な現象が起きてるね」
「ほんとだ。普通は上に行くほど山ってのは寒くなるもんなあ」
「ふしぎー!」
僕とリップルとコゲタの三人。
他のコボルドたちは、どうも遺伝子に遺跡の奥へ進まないことをプログラムされているらしい。
一人もついてこれなかった。
いやはや、しかし、螺旋階段はどこまでも続く。
一段一段がとても低いので、さほどストレスにはならないが……。
「やっぱり暖かくなってる。なんだ? それに山の中をくり抜いた構造なのに、ずっと明るいぞ。天井が発光してるのか」
「とんでもない量の魔力が常に使われてるよ。私のセンスマジックで見ると、天井と壁はピカピカだ。天井には発光、壁は形状維持の魔法だね。えっ、暖房? そういう魔法は掛かってないな」
あまりに暑いので、ここで藁のコートを脱いでいくことにした。
おお、これでちょうどいいくらいじゃないか。
「いやはや、登るほど暑くなるねえこれは! ちょっと涼しくなる魔法を使っておくかな。二人とも私の近くに寄りたまえ」
「おうおう」
「はあい!」
ということで、団子になって登っていくのだ。
どれだけ歩いたか。
登山なら、相当な時間が掛かる高さまで達したと思う。
特に障害物のない螺旋階段をひたすら歩くのは、なかなか退屈ではあるが、身の安全に気を配らなくていいというのはとてもいい。
途中で一休みして、また登る。
「コゲタねむくなってきた!」
「コゲタが眠くなるほど変化のない景色が続いていたか」
これは果がないなあなんて思い始めた頃。
唐突に螺旋階段が終わった。
どこまでも続いていると思ったら、踏み出した瞬間に最後の段になった。
まるで大量の段を飛ばされたような……。
「条件があったようだねこれは」
「条件?」
「余計なことをしないでのぼり続けられるかどうか……みたいな。私は面倒で余計な魔法を使わなかったし、ナザル、君は素直だった」
「ははあ、なるほど……。そんなたちの悪い罠が!」
だが、到着できたならよし!
辺りを見回すと、そこはそれなりに広い空間だ。
きっと三角錐の形をした頂上の中に作られているんだろう。
ごうごうと音を立てる機械が空間の中心に鎮座していた。
長老は魔道タービンと呼んでいたが、これがそうなのだろうか?
「な、なんだいこりゃあ……! とんでもない大きさの金属の塊が動いて、魔力をどんどん生み出してる……」
「機械っていう概念ないもんなあ、この世界は。おお、近づくと涼しい魔法があっても暑い! これが発熱の元だったかあ」
「ナザル、君がかつていた世界にはこういうのがあったのかい?」
「あったね。機械っていうんだ。タービンという呼び名もそれだ。風を受けてタービンを回し、それで魔力を発生させてこの遺跡を機能させていたんだろうな」
……ひょっとすると、この島そのものを維持するのが魔道タービンなのかもしれない。
僕は遺跡の頂上を歩き回った。
幾つもの、機械としか思えないものが辺りに配置されている。
それぞれからコードが伸びて、機械へと繋がっていた。
どれもこれも動いていないようだが……。
「うーん……私はお手上げだな。ナザル、君に任せた」
「任された! ええと……油を収めればコボルドたちは食用の油を使えるようになると言ってたな。あらかじめ、コケはこの機械に登録されているということか」
見た目だけだと僕としてもちんぷんかんぷんだな……。
と思ったら、案外分かるぞ。
これはモニターだ。
そして本体に、サーバーがある。
モニターに映し出されているのは、島のあちこちの光景。
これが洞穴にある水晶板へと送り込まれていたんだろう。
そしてサーバーからもたくさんのコードが伸びている。
繋がっているのは……。
あった。
明らかに、何かを収めるためのカプセルがついた機械が存在している。
そして、機械の先は僕が生前見たことがある構造物になっていた。
3Dプリンターだ。
「ナザル、私の推理だが」
僕がサラダ油をカプセルに収めると、機械が動き出す。
サーバーが唸りを上げて光り輝き……。
3Dプリンターがサラダ油を作り出す。
それを収めるための器と一緒だ。
そして、そこにちょこちょことコードのついた小さなゴーレムがやってきた。
それはサラダ油を器ごと受け取ると、螺旋階段に向けて歩いていった。
螺旋階段が動き出す。
下に向かって、まるでエスカレーターのように。
「大魔道士カズテスは、君と同じ世界で生まれた人間だ。恐らく……生きていた時代もまた君と同じものだったのだろう」
「なんだって!?」
「君にだけ使い方が分かる機械が存在していたのがその証拠だよ。恐らく、この世界で魔法を修めたカズテスは元いた世界に存在していた食べ物を再現しようとしたに違いない。この世界には、ナザル。君が生きていた世界の食物に似たものが多かったんじゃないか?」
「確かに多かった……。あ、つまりそれは」
「カズテスが作ったんだろうね。そして、彼が最後に作り出したのが米だったと」
「ああ、なるほど……!」
僕は唸りを上げる魔道タービンを見上げた。
何百年も前に、ここにいた同じ世界の人物の事を思うのだ。
かなりの奥深くまで通じており、まるで螺旋階段のようだ。
「いやあ、上に行くほど暖かくなるという不思議な現象が起きてるね」
「ほんとだ。普通は上に行くほど山ってのは寒くなるもんなあ」
「ふしぎー!」
僕とリップルとコゲタの三人。
他のコボルドたちは、どうも遺伝子に遺跡の奥へ進まないことをプログラムされているらしい。
一人もついてこれなかった。
いやはや、しかし、螺旋階段はどこまでも続く。
一段一段がとても低いので、さほどストレスにはならないが……。
「やっぱり暖かくなってる。なんだ? それに山の中をくり抜いた構造なのに、ずっと明るいぞ。天井が発光してるのか」
「とんでもない量の魔力が常に使われてるよ。私のセンスマジックで見ると、天井と壁はピカピカだ。天井には発光、壁は形状維持の魔法だね。えっ、暖房? そういう魔法は掛かってないな」
あまりに暑いので、ここで藁のコートを脱いでいくことにした。
おお、これでちょうどいいくらいじゃないか。
「いやはや、登るほど暑くなるねえこれは! ちょっと涼しくなる魔法を使っておくかな。二人とも私の近くに寄りたまえ」
「おうおう」
「はあい!」
ということで、団子になって登っていくのだ。
どれだけ歩いたか。
登山なら、相当な時間が掛かる高さまで達したと思う。
特に障害物のない螺旋階段をひたすら歩くのは、なかなか退屈ではあるが、身の安全に気を配らなくていいというのはとてもいい。
途中で一休みして、また登る。
「コゲタねむくなってきた!」
「コゲタが眠くなるほど変化のない景色が続いていたか」
これは果がないなあなんて思い始めた頃。
唐突に螺旋階段が終わった。
どこまでも続いていると思ったら、踏み出した瞬間に最後の段になった。
まるで大量の段を飛ばされたような……。
「条件があったようだねこれは」
「条件?」
「余計なことをしないでのぼり続けられるかどうか……みたいな。私は面倒で余計な魔法を使わなかったし、ナザル、君は素直だった」
「ははあ、なるほど……。そんなたちの悪い罠が!」
だが、到着できたならよし!
辺りを見回すと、そこはそれなりに広い空間だ。
きっと三角錐の形をした頂上の中に作られているんだろう。
ごうごうと音を立てる機械が空間の中心に鎮座していた。
長老は魔道タービンと呼んでいたが、これがそうなのだろうか?
「な、なんだいこりゃあ……! とんでもない大きさの金属の塊が動いて、魔力をどんどん生み出してる……」
「機械っていう概念ないもんなあ、この世界は。おお、近づくと涼しい魔法があっても暑い! これが発熱の元だったかあ」
「ナザル、君がかつていた世界にはこういうのがあったのかい?」
「あったね。機械っていうんだ。タービンという呼び名もそれだ。風を受けてタービンを回し、それで魔力を発生させてこの遺跡を機能させていたんだろうな」
……ひょっとすると、この島そのものを維持するのが魔道タービンなのかもしれない。
僕は遺跡の頂上を歩き回った。
幾つもの、機械としか思えないものが辺りに配置されている。
それぞれからコードが伸びて、機械へと繋がっていた。
どれもこれも動いていないようだが……。
「うーん……私はお手上げだな。ナザル、君に任せた」
「任された! ええと……油を収めればコボルドたちは食用の油を使えるようになると言ってたな。あらかじめ、コケはこの機械に登録されているということか」
見た目だけだと僕としてもちんぷんかんぷんだな……。
と思ったら、案外分かるぞ。
これはモニターだ。
そして本体に、サーバーがある。
モニターに映し出されているのは、島のあちこちの光景。
これが洞穴にある水晶板へと送り込まれていたんだろう。
そしてサーバーからもたくさんのコードが伸びている。
繋がっているのは……。
あった。
明らかに、何かを収めるためのカプセルがついた機械が存在している。
そして、機械の先は僕が生前見たことがある構造物になっていた。
3Dプリンターだ。
「ナザル、私の推理だが」
僕がサラダ油をカプセルに収めると、機械が動き出す。
サーバーが唸りを上げて光り輝き……。
3Dプリンターがサラダ油を作り出す。
それを収めるための器と一緒だ。
そして、そこにちょこちょことコードのついた小さなゴーレムがやってきた。
それはサラダ油を器ごと受け取ると、螺旋階段に向けて歩いていった。
螺旋階段が動き出す。
下に向かって、まるでエスカレーターのように。
「大魔道士カズテスは、君と同じ世界で生まれた人間だ。恐らく……生きていた時代もまた君と同じものだったのだろう」
「なんだって!?」
「君にだけ使い方が分かる機械が存在していたのがその証拠だよ。恐らく、この世界で魔法を修めたカズテスは元いた世界に存在していた食べ物を再現しようとしたに違いない。この世界には、ナザル。君が生きていた世界の食物に似たものが多かったんじゃないか?」
「確かに多かった……。あ、つまりそれは」
「カズテスが作ったんだろうね。そして、彼が最後に作り出したのが米だったと」
「ああ、なるほど……!」
僕は唸りを上げる魔道タービンを見上げた。
何百年も前に、ここにいた同じ世界の人物の事を思うのだ。
32
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる