俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
283 / 337
93・なにっ、式場建設!?

第283話 なにっ、ドレス完成!?

しおりを挟む
「ははは、そんなドレスだなんて気取ったものは私は身につけないぞ」

「そうはいきませんリップル様。ささこちらへ」

「あーれー」

 両腕をガッチリと王宮の屈強な侍女にホールドされて、リップルが連れて行かれてしまった。
 強固な馬車が彼らを飲み込んで走り出す。
 なんたることであろうか。

「リップルいっちゃった!」

「ぶるるるー」

 厩からフリーダムに出てくるポーターも一緒で、走り去っていく馬車を見送るのだった。

「どうしたの?」

「俺とリップルが結婚式をするだろ? そのドレスを仕立てるんだ。もう最高の生地は用意してあるから、それを使ってドレスとして縫製する段階なんだろう。今まで逃げ回っていたリップルがここで捕まった」

「ほえー」

「ぶるー」

「二人とも興味あるかい?」

「あるー!」

「ひひん!」

「よし、じゃあ見に行ってみよう!」

 そういうことにした。

 ポーターは馬なので、トコトコ歩きながらプリッと馬糞を出したりする。
 アーランは馬が足になっている文化圏なので、馬糞には大変寛容だ。

 それに、アイアン級冒険者たちが馬糞を回収する仕事に従事している。
 この馬糞が明日の作物を育てるための肥料となるのだ。
 アーラン国民たちはこれをよく知っている。

 貴族なればこそ、自宅で馬を育てているのでこの辺りには大変詳しくなる。
 貴族の子女はみんな、幼い頃に馬糞回収をやり、遺跡まで行ってこれが肥料になる肥溜めなどを見学するのだという。
 英才教育~!

 お陰でこの国には、馬糞に文句を言うアホはいないわけですね。
 ポーターを安心して連れ回せる。

 三人で王宮までトコトコ歩いていく。
 ゆっくり歩いて一時間ほどだろうか。

 見慣れた王宮の門が見えた。

「入れてくれー」

「あっ、ナザル殿じゃないですか! 奥方のドレス姿見るんですか? 式までの楽しみにしておけばいいのに」

「僕は好物は先に食べる主義なんだよ。さあ通してくれ通してくれ」

「コボルドと馬も連れてきたぞ。大所帯になってきましたねえ」

「毎日が賑やかになってきたぞ。一人の頃も静かで良かったが、今はその時には想像もできない充実度を感じる……」

「いいですねえ……。俺も嫁さん来ないかなあ」

「犬を飼うか、コボルドの身請けをするといいぞ! 生活のクオリティが上がる!!」

「ほんとですか!? それならいけるなあ! やってみますよ!」

 門番が目を輝かせた。
 犬はいいぞ!!

 コゲタは通過する時、門番に「こんにちはー!!」と元気に挨拶をしていった。
 なるほどなあと頷く門番なのだ。
 そうそう、こうやって元気がもらえるんだよね。

 さて、リップルが連れて行かれたのはどっちだ。

「リップル来ませんでした?」

「あっ、ナザル様!! リップル様はですね、あちらです」

「第一王子の邸宅か! あそこの奥方がドレスのデザインが趣味だったんだっけ」

 なんと、第一王子の夫人はデザイナーだったのだ。
 もともとやんごとなき地位のご令嬢なのだが、「女も技術を持っていて然るべきです。なぜならその方が暇つぶしもできますし、研鑽は一生続けられるからです」とか仰って、デザイナーとしての腕を磨き続けているんだそうで。

 異世界にウーマンリブの風を吹かせるか!?
 まあ、大多数の奥様方はのんびり暮らしてたい人たちだから、そういう飛び抜けて優秀な女性は自己研鑽を楽しんでいただくのが一番平和的であろう。

 僕が尋ねていくと、いきなりソロス第一王子のところに通されたのだった。
 前にお会いしたときよりも、腹が引っ込んでシュッとしてるなあ!

「どうだ? 俺もデュオスに負けてはおれんからな。常識的な範囲で鍛え直したぞ。ナザルよ、貴様が王家に献上した料理の数々、俺も堪能しておる。感謝するぞ。今回のドレスは、俺と妻からのほんの礼だ。デュオスばかりにいい顔をさせてはおけんからな」

「ははあ、それでリップルに豪華なドレスを……」

「あれが張り切っていてな。最高傑作をデザインしたと言っている。見ていくか?」

「見に来ましたからね」

「いいだろう。おい、ナザルを案内してやれ」

「はっ」

 第一王子の家令みたいな人が僕を案内してくれる。

「あのー、コゲタとポーターも連れていきたいんですが」

 そう言ったら、家令氏が困った顔をした。

「家の中はコボルドと馬は入れないんですよ」

「じゃあ外側を回りながら窓から中を伺うのは」

「あっ、それはいけます。そちらでよろしければ案内しますよ」

 話が早い。
 僕だけが見ても意味がないのだ。
 みんなで見よう、着飾ったリップル。

 家令氏を先頭に、わいわいと屋敷の回りを歩く僕らなのだ。
 そして該当の窓!

 カーテンを開けて、侍女らしき人が「どうぞ御覧ください」と指し示してくれる。
 どれどれ?

 小柄で大人しそうな女性は、第一王子の奥方である。
 あんな大人しそうなのに内に秘める情熱は熱い!

 で、彼女の横でなんか動きづらそうにしてる、真っ赤なドレスの人が……。

「あっ、ナザルとコゲタとポーターじゃないか! 何を見に来てるんだ! 恥ずかしいなあ!」

「リップルじゃん! この世界のウェディングドレスって赤いのか!! そうか、至高神は太陽神だもんなあ! 太陽の赤がドレスの色になるわけか! ……ってことは新郎は……」

「大地母神にして月の女神の象徴する金色ですね」

「派手な礼服!!」

 これを聞いて、リップルがニヤッと笑った。

「金ピカのナザルは見てみたいなあ!!」

「くそー、僕も恥ずかしいのを見せることになりそうだぜ……」

 ということで、式は近いのだった。



しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...