俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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94・なにっ、結婚式が始まる!?

第286話 カレーとハンバーグとビール

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 式が終わり、待ち構えていたのかアーランからたくさんの商人たちが飛び出してきた。
 入口付近に積み上がっていた屋台の素があっという間に組み立てられ、それぞれの持場に移動していく。
 ここからが稼ぎ時なのだ。

 海外からやって来た観光客や、式を見に来た野次馬相手に大いに稼ぐ!
 屋台ではアーランに存在する無数の美食が提供される。
 これは海外の人々では耐えられまい。

 おお、人々が群がっている!!
 そしてもりもりと食べ始めるではないか。

 あちこちで、人々の語彙が一時的にガーッと上昇し、細やかな食レポを始めた。
 湧き上がる食レポが重なり、共鳴し、これは食レポのオーケストラや!

 僕がこの光景を満足しながら眺めていたら、会場の方では各国の偉い人だけを集めて披露宴がスタートした。
 これでも、百人を超える人数がいるのだ。

 披露宴では僕らがお誕生日席みたいなところからスタートし、各テーブルを回りながら来賓に挨拶をしていく……ものだったが、それは断った!!
 何が悲しくて自分たちの披露宴で、飯も食えずに勝手にやって来た来賓に挨拶回りせねばならんのだ!

「そうだそうだ! 私も食べたいぞ!」

 リップルもそう言っております。
 それに……。

「な、なんだこの香りは!!」「あの巨大な鍋から漂ってくるぞ!」「黄金のスープ? いや、ドロリとしている……」「うわーっ、堪らん!!」

 ライスが盛られ、そこにドロリとしたカレースープがたっぷり。
 カレーは多いほうが嬉しいもんな!
 めちゃくちゃたくさん作ったぞ。

 そしてカレーはたくさん作れば作るほど美味い。

 まずはカレーとビールが各テーブルに行き渡った。
 来賓たちはこの素晴らしい香りの食べ物と、黄金に輝き真っ白でクリーミーな泡の立っているビール。

 冷めない内に、泡があって冷たい内に!
 迅速なオペレーションで来賓に料理が供された時点で、僕は立ち上がった。

「皆さん!! 私達の結婚式へのお越し、誠にありがとうございます! 皆様へのお礼として美食を用意しました。言っておきますが……これは私がこれまでやって来た美食の集大成!! 全てはここにたどり着くためにあった!!」

 どよめく人々。
 僕と料理を交互に見ている。
 我慢の限界であろう!!

「では乾杯!!」

 僕がビールの入ったジョッキを高らかに掲げると、「かんぱーい!!」と返答があった。
 これが食事開始の合図である!
 誰もがスプーンを握り、猛烈な勢いでカレーに向き合い始めた。

 喉が乾いていた者は、ビールをぐびっと飲む。

「ビールは味わわず、一気に飲んでいってください! この酒の真価は喉越しです!! 冷たいビールを喉越しで味わう。これが最高! カレーはどう食べてもいいです。どう食べても美味い!!」

 僕の説明を聞きながら、皆が必死に飲み、食べる。

「うおおおっ、止まらん! 止まらん!」「口の中が香りで一杯だ!」「濃厚で辛味のあるソースがこの白い穀物と合わせることでちょうどいい塩梅に……」「うまい! 美味い! 旨い!!」「くうーっ、ビール最高! もう一杯!!」「喉越しが堪らん! 幾らでも入る!!」

 披露宴とは思えないほどの盛り上がりである!!
 みんな飯の話しかしていない。
 ガンガンにカレーは減っていき、半分のテーブルでお代わりがされた。

 さらにそこで、シェフたちが焼いていたハンバーグが供される。
 カレーに乗せてもよし!
 テーブルの上にある各種ソースで味付けしてもよし!

 焼き立てハンバーグをガツガツ食べた後、ビールで流し込んでもいい!

 なお、隣でリップルがハンバーグカレーを楽しんでいる。

「こりゃあ美味しいねえ。でもこれを食べたら私、夕食はいらないや」

「カロリー凄そうだもんな」

 コボルドたちも、ニコニコしながらハンバーグを食べているではないか。
 このハンバーグ、あらゆる種族が食べられるようにデザインしたからね。
 実は僕の美食の到達点の一つでもあるのだ。

 誰もが全く会話もせず、ひたすら飯を食い続ける光景。
 僕はこれを微笑みながら眺めた。
 そしてハンバーグカレーを食べた。

 うむ、相変わらず美味い。
 美味い組み合わせなのだからどうやっても美味くなる。

 ギルボウのチャツネも量産され、カレーは万人が味わえる味となった。

 事前にアンケートを取り、辛味への好みを把握した上でカレーはサーブされている。
 鳥型の異種族だったりすると辛さが平気なので激辛。
 例えばバルバラ女王陛下とかね。

「美味いのじゃー! 本当に美味いのじゃ! のうナザル! ファイブショーナンにもこの食材の輸出を頼むぞよ!!」

「もちろんですよ陛下! 暑いところでこそ熱い料理を食べるべきです!」

 コボルドたちには、甘口で油控えめのカレー。
 量は少なめね。
 どっちかというとハンバーグのソースみたいな扱いになる。

「おいしーねー!」

「おいしー!」

「うまままままま!」

 ハムソンはもっと落ち着いて食べなさい!
 ええい、お前のような落ち着きのない子どもにうちの娘はやらんぞ!!

 いやいやいや、父親気分になるのは披露宴が終わった後でいいだろう。
 僕は花婿の仮面を被ってアルカイックスマイルになった。

 そんな僕の所に、カレーを食べ終えた来賓が次々と訪れるのだった。

「どうか、我が国にも輸入を……」

 みんな自国で美味しいもの食べたいもんなあ……!

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