313 / 337
102・婿修行だ!
第313話 第四層畑めぐり
しおりを挟む
田んぼを巡る。
草むしりなどは、合鴨農法のようなことをやっているので最小限で済むのだ。
さらに合鴨も育てば食べてよし!
「たんぼでいのちがめぐっている~」
「お分かりいただけたようだ」
アゲパンの理解の早さに、僕はニヤッとした。
さすが、知識神が目を付けるだけのことはある。
彼はコボルドとしてはかなり賢い。
小型種なので口調がちょっと子供っぽいのだが、ここは種族的特徴なので仕方ない。
コゲタは基本、天真爛漫だからな。
サポートしてもらうならこれくらいしっかりしている方が……。
いやいやいや。
僕は!
こんなことでアゲパンを認めるわけにはいかん!
認めるわけには!!
「なるほどー! みずのりょうをこんとろーるすることで、ねもとにつくむしをはいじょできる……」
「よく分かっているな……。そういうことだ! 実際の米の育て方は違うんだが、遺跡は遺跡のやり方があってな。外で育てるよりは虫害が少ないんだが、どうしても外からくる業者が持ち込んでくる。それらをこうやって育てないようにしてだな」
「ご主人とアゲパンなかよしねー」
「仲良しではない」
「なかよしだよー」
仲良しかも知れない……。
恐ろしく話が通じるからな、このコボルド。
「だが、田んぼだけで話は終わらんぞ! 次の畑の視察に向かう!」
「りょうかいです!」
「そこでおべんとしよ!」
「いいねー」
コゲタの手作り弁当だ。
これは楽しみだぞ。
向かった先はトマド畑。
真っ赤な実が成っているではないか。
色づいた時点で収穫し、さらに市場に並べる段階で自動的に追熟される。
こうしてトマドはベストな状態で食卓に届けられるのだ。
素でドライトマトみたいな姿の不思議な果実なんだよな。
味は完全にドライトマト。
水で戻すと、みずみずしいトマトになる。
謎の生態だ……。
「収穫の具合はどう?」
「あっ、美食伯!! 順調です! 気候が安定していますから、ある程度は必ず収穫できるようになってきましたね。ただ、やはり季節によって供給される魔力に揺らぎがあるみたいです」
職人の報告を受ける。
なるほどなるほど。
アーランに暮らす人々から、少しずつ魔力を吸って運営されているのがこの遺跡だ。
天候や気候、そして流入、流出する人々によって魔力の量や質は頻繁に変化する。
職人たちはこれを見極め、肥料の量をコントロールしながら作物を育てているのだ。
「なるほどなるほど。こまやかなきづかいがひつようなんですね。べんきょうになるなあ」
あっ、このコボルド、メモを取っている!!
職人たちから、魔力量の見極め方を聞いてふんふん頷いているぞ。
なんて賢く、やる気に満ちているんだ……。
ぐわああ、認めてしまう!
このままでは完全に認めてしまうー!
「おべんとうにしよ!」
そうだね!
コゲタの一声でお弁当タイムになった。
三人で並んでサンドイッチを食べる。
な、なんと、僕のサンドイッチには胡椒っぽいものとマヨネーズが!?
コボルドたちには塩くらいしか味付けはいらない。
つまりこれは……。
「ご主人はあじこいの、すきでしょ! おてつだいさんにおしえてもらって、あじつけたの!」
「凄い!! 天才!! 嬉しい!」
泣けてくる~!
なんて優しくていい子や~!
親バカと言われてもいい。
コゲタの優しさは天元突破しているぞ!!
「うまい! うまい! ひたすらうまい!」
「コゲタさん、これはおいしい! りょうりのてんさいだ!」
「ありがとー! おいしくできたなあ!」
コゲタもにこにこしながら、サンドイッチを食べているのだ。
うーむ!
なんと言うのだろうか。
手塩にかけて育てた娘と、そんな娘を見初めた、仕事のできる誠実な男……。
彼らとともに飯を食う僕。
これはこれで……いいものじゃないだろうか?
今まで僕は、何を肩ひじを張って頑固親父を演じていたのだろうか……!
いいじゃあないか、いいじゃないか。
子どもはいつか、手元から巣立っていくものなのだ。
コゲタはそれが今というだけなのだ。
「コゲタさん! あいとかこいとか、わかってきました?」
「わかんないー」
あっ、巣立ちはまだだこれは。
僕とアゲパンで、その辺りをゆっくり教えていかねばならぬ。
これまで純真無垢に育てすぎたな……。
というか、冒険者としてのスキルの方に偏重した育成をしすぎた!
「よしアゲパン、コゲタ、ついてくるんだ。にんにくとカレーコ、マサラガラムにオブリーを見たら帰るぞ」
「まだまだもりだくさんですねこれは!! たのしみです!!」
「コゲタもねー、いせきのなか、いっぱいみるのはじめて! たのしーね!」
キャッキャッとついてくるコボルド二人。
僕はさながら、引率の先生である!
だが、アゲパンはこの感じだと、僕の補佐官みたいな役割ができるようになってくるな……。
なるほど、身内に入れてしまえばいいのか。
そうすればコゲタもずっと近くにいるぞ。
それだ。
それで行こう。
視察をしながら、今後のことについて考える僕。
とりあえずはアゲパンを下宿させながら、コゲタに恋とは、愛とは、結婚とはとかを教え込んでだな。
いや、僕もリップルも流れで突き進んだからさっぱり分からんのだが、外部講師を招いて教えていかねばなるまい。
そしてアゲパンには仕事を仕込んでだな……。
やることはいっぱいなのだ。
とりあえず、馬小屋の横にアゲパン用のハウスを作っておかねば。
草むしりなどは、合鴨農法のようなことをやっているので最小限で済むのだ。
さらに合鴨も育てば食べてよし!
「たんぼでいのちがめぐっている~」
「お分かりいただけたようだ」
アゲパンの理解の早さに、僕はニヤッとした。
さすが、知識神が目を付けるだけのことはある。
彼はコボルドとしてはかなり賢い。
小型種なので口調がちょっと子供っぽいのだが、ここは種族的特徴なので仕方ない。
コゲタは基本、天真爛漫だからな。
サポートしてもらうならこれくらいしっかりしている方が……。
いやいやいや。
僕は!
こんなことでアゲパンを認めるわけにはいかん!
認めるわけには!!
「なるほどー! みずのりょうをこんとろーるすることで、ねもとにつくむしをはいじょできる……」
「よく分かっているな……。そういうことだ! 実際の米の育て方は違うんだが、遺跡は遺跡のやり方があってな。外で育てるよりは虫害が少ないんだが、どうしても外からくる業者が持ち込んでくる。それらをこうやって育てないようにしてだな」
「ご主人とアゲパンなかよしねー」
「仲良しではない」
「なかよしだよー」
仲良しかも知れない……。
恐ろしく話が通じるからな、このコボルド。
「だが、田んぼだけで話は終わらんぞ! 次の畑の視察に向かう!」
「りょうかいです!」
「そこでおべんとしよ!」
「いいねー」
コゲタの手作り弁当だ。
これは楽しみだぞ。
向かった先はトマド畑。
真っ赤な実が成っているではないか。
色づいた時点で収穫し、さらに市場に並べる段階で自動的に追熟される。
こうしてトマドはベストな状態で食卓に届けられるのだ。
素でドライトマトみたいな姿の不思議な果実なんだよな。
味は完全にドライトマト。
水で戻すと、みずみずしいトマトになる。
謎の生態だ……。
「収穫の具合はどう?」
「あっ、美食伯!! 順調です! 気候が安定していますから、ある程度は必ず収穫できるようになってきましたね。ただ、やはり季節によって供給される魔力に揺らぎがあるみたいです」
職人の報告を受ける。
なるほどなるほど。
アーランに暮らす人々から、少しずつ魔力を吸って運営されているのがこの遺跡だ。
天候や気候、そして流入、流出する人々によって魔力の量や質は頻繁に変化する。
職人たちはこれを見極め、肥料の量をコントロールしながら作物を育てているのだ。
「なるほどなるほど。こまやかなきづかいがひつようなんですね。べんきょうになるなあ」
あっ、このコボルド、メモを取っている!!
職人たちから、魔力量の見極め方を聞いてふんふん頷いているぞ。
なんて賢く、やる気に満ちているんだ……。
ぐわああ、認めてしまう!
このままでは完全に認めてしまうー!
「おべんとうにしよ!」
そうだね!
コゲタの一声でお弁当タイムになった。
三人で並んでサンドイッチを食べる。
な、なんと、僕のサンドイッチには胡椒っぽいものとマヨネーズが!?
コボルドたちには塩くらいしか味付けはいらない。
つまりこれは……。
「ご主人はあじこいの、すきでしょ! おてつだいさんにおしえてもらって、あじつけたの!」
「凄い!! 天才!! 嬉しい!」
泣けてくる~!
なんて優しくていい子や~!
親バカと言われてもいい。
コゲタの優しさは天元突破しているぞ!!
「うまい! うまい! ひたすらうまい!」
「コゲタさん、これはおいしい! りょうりのてんさいだ!」
「ありがとー! おいしくできたなあ!」
コゲタもにこにこしながら、サンドイッチを食べているのだ。
うーむ!
なんと言うのだろうか。
手塩にかけて育てた娘と、そんな娘を見初めた、仕事のできる誠実な男……。
彼らとともに飯を食う僕。
これはこれで……いいものじゃないだろうか?
今まで僕は、何を肩ひじを張って頑固親父を演じていたのだろうか……!
いいじゃあないか、いいじゃないか。
子どもはいつか、手元から巣立っていくものなのだ。
コゲタはそれが今というだけなのだ。
「コゲタさん! あいとかこいとか、わかってきました?」
「わかんないー」
あっ、巣立ちはまだだこれは。
僕とアゲパンで、その辺りをゆっくり教えていかねばならぬ。
これまで純真無垢に育てすぎたな……。
というか、冒険者としてのスキルの方に偏重した育成をしすぎた!
「よしアゲパン、コゲタ、ついてくるんだ。にんにくとカレーコ、マサラガラムにオブリーを見たら帰るぞ」
「まだまだもりだくさんですねこれは!! たのしみです!!」
「コゲタもねー、いせきのなか、いっぱいみるのはじめて! たのしーね!」
キャッキャッとついてくるコボルド二人。
僕はさながら、引率の先生である!
だが、アゲパンはこの感じだと、僕の補佐官みたいな役割ができるようになってくるな……。
なるほど、身内に入れてしまえばいいのか。
そうすればコゲタもずっと近くにいるぞ。
それだ。
それで行こう。
視察をしながら、今後のことについて考える僕。
とりあえずはアゲパンを下宿させながら、コゲタに恋とは、愛とは、結婚とはとかを教え込んでだな。
いや、僕もリップルも流れで突き進んだからさっぱり分からんのだが、外部講師を招いて教えていかねばなるまい。
そしてアゲパンには仕事を仕込んでだな……。
やることはいっぱいなのだ。
とりあえず、馬小屋の横にアゲパン用のハウスを作っておかねば。
22
あなたにおすすめの小説
ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。
あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。
彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。
初配信の同接はわずか3人。
しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。
はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。
ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。
だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。
増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。
ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。
トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。
そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。
これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる