俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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102・婿修行だ!

第313話 第四層畑めぐり

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 田んぼを巡る。
 草むしりなどは、合鴨農法のようなことをやっているので最小限で済むのだ。
 さらに合鴨も育てば食べてよし!

「たんぼでいのちがめぐっている~」

「お分かりいただけたようだ」

 アゲパンの理解の早さに、僕はニヤッとした。
 さすが、知識神が目を付けるだけのことはある。
 彼はコボルドとしてはかなり賢い。

 小型種なので口調がちょっと子供っぽいのだが、ここは種族的特徴なので仕方ない。
 コゲタは基本、天真爛漫だからな。
 サポートしてもらうならこれくらいしっかりしている方が……。

 いやいやいや。
 僕は!
 こんなことでアゲパンを認めるわけにはいかん!
 認めるわけには!!

「なるほどー! みずのりょうをこんとろーるすることで、ねもとにつくむしをはいじょできる……」

「よく分かっているな……。そういうことだ! 実際の米の育て方は違うんだが、遺跡は遺跡のやり方があってな。外で育てるよりは虫害が少ないんだが、どうしても外からくる業者が持ち込んでくる。それらをこうやって育てないようにしてだな」

「ご主人とアゲパンなかよしねー」

「仲良しではない」

「なかよしだよー」

 仲良しかも知れない……。
 恐ろしく話が通じるからな、このコボルド。

「だが、田んぼだけで話は終わらんぞ! 次の畑の視察に向かう!」

「りょうかいです!」

「そこでおべんとしよ!」

「いいねー」

 コゲタの手作り弁当だ。
 これは楽しみだぞ。

 向かった先はトマド畑。
 真っ赤な実が成っているではないか。
 色づいた時点で収穫し、さらに市場に並べる段階で自動的に追熟される。
 こうしてトマドはベストな状態で食卓に届けられるのだ。

 素でドライトマトみたいな姿の不思議な果実なんだよな。
 味は完全にドライトマト。
 水で戻すと、みずみずしいトマトになる。

 謎の生態だ……。

「収穫の具合はどう?」

「あっ、美食伯!! 順調です! 気候が安定していますから、ある程度は必ず収穫できるようになってきましたね。ただ、やはり季節によって供給される魔力に揺らぎがあるみたいです」

 職人の報告を受ける。
 なるほどなるほど。
 アーランに暮らす人々から、少しずつ魔力を吸って運営されているのがこの遺跡だ。

 天候や気候、そして流入、流出する人々によって魔力の量や質は頻繁に変化する。
 職人たちはこれを見極め、肥料の量をコントロールしながら作物を育てているのだ。

「なるほどなるほど。こまやかなきづかいがひつようなんですね。べんきょうになるなあ」

 あっ、このコボルド、メモを取っている!!
 職人たちから、魔力量の見極め方を聞いてふんふん頷いているぞ。
 なんて賢く、やる気に満ちているんだ……。

 ぐわああ、認めてしまう!
 このままでは完全に認めてしまうー!

「おべんとうにしよ!」

 そうだね!
 コゲタの一声でお弁当タイムになった。

 三人で並んでサンドイッチを食べる。
 な、なんと、僕のサンドイッチには胡椒っぽいものとマヨネーズが!?
 コボルドたちには塩くらいしか味付けはいらない。

 つまりこれは……。

「ご主人はあじこいの、すきでしょ! おてつだいさんにおしえてもらって、あじつけたの!」

「凄い!! 天才!! 嬉しい!」

 泣けてくる~!
 なんて優しくていい子や~!
 親バカと言われてもいい。

 コゲタの優しさは天元突破しているぞ!!

「うまい! うまい! ひたすらうまい!」

「コゲタさん、これはおいしい! りょうりのてんさいだ!」

「ありがとー! おいしくできたなあ!」

 コゲタもにこにこしながら、サンドイッチを食べているのだ。
 うーむ!

 なんと言うのだろうか。
 手塩にかけて育てた娘と、そんな娘を見初めた、仕事のできる誠実な男……。

 彼らとともに飯を食う僕。
 これはこれで……いいものじゃないだろうか?

 今まで僕は、何を肩ひじを張って頑固親父を演じていたのだろうか……!
 いいじゃあないか、いいじゃないか。
 子どもはいつか、手元から巣立っていくものなのだ。

 コゲタはそれが今というだけなのだ。

「コゲタさん! あいとかこいとか、わかってきました?」

「わかんないー」

 あっ、巣立ちはまだだこれは。
 僕とアゲパンで、その辺りをゆっくり教えていかねばならぬ。

 これまで純真無垢に育てすぎたな……。
 というか、冒険者としてのスキルの方に偏重した育成をしすぎた!

「よしアゲパン、コゲタ、ついてくるんだ。にんにくとカレーコ、マサラガラムにオブリーを見たら帰るぞ」

「まだまだもりだくさんですねこれは!! たのしみです!!」

「コゲタもねー、いせきのなか、いっぱいみるのはじめて! たのしーね!」

 キャッキャッとついてくるコボルド二人。
 僕はさながら、引率の先生である!
 だが、アゲパンはこの感じだと、僕の補佐官みたいな役割ができるようになってくるな……。

 なるほど、身内に入れてしまえばいいのか。
 そうすればコゲタもずっと近くにいるぞ。

 それだ。
 それで行こう。

 視察をしながら、今後のことについて考える僕。

 とりあえずはアゲパンを下宿させながら、コゲタに恋とは、愛とは、結婚とはとかを教え込んでだな。
 いや、僕もリップルも流れで突き進んだからさっぱり分からんのだが、外部講師を招いて教えていかねばなるまい。

 そしてアゲパンには仕事を仕込んでだな……。

 やることはいっぱいなのだ。
 とりあえず、馬小屋の横にアゲパン用のハウスを作っておかねば。

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