331 / 337
108・王宮にうなぎを収める
第331話 美食伯、お褒めに与る
しおりを挟む
「とってもおいしかったです!」「素晴らしいお食事でした!」「暖かいお食事は本当に美味しいです」「美食伯が結婚してなかったらお婿さんにするのに」
四人の王女様が口々にそんなことを仰っている。
いやはや、お喜びいただけて何よりですよ。
でも結婚とかそういうのはね、美味い飯を作るくらいで相手を決めたらいけないからね。
「ふむ」
先王陛下が唸った。
ちょっと場が静かになる。
主に大人たちが、黙って先王の口が開くのを待つ。
「まあ……いつも通り、美味であった。ご苦労、美食伯」
「はっ、ありがたき幸せ」
リップルを取られて複雑な気持ちだろうが、美味しいものには正直なんだよなこの人。
「それでだ、ナザルよ。お前、その、あのな」
「はっ」
ここで察する僕である。
もしかしてこの人……。
あらゆる事に対して異常に素直じゃないから。
「そうだ。カルがそろそろはいはいしそうなのですが、リップルによく似て利発な子で」
「ほう」
食いついた!
「陛下、抱っこしてみますか」
「おお、おうおう! 仕方がないやつだ。先王とは言え、忙しいのだが……仕方ないなあ。連れて来るが良い。余がそなたの息子を抱っこしてやろう……」
ちょっとウキウキし始めたぞ。
ソロス陛下は、仕方ないなあという顔で苦笑している。
先王陛下も、こいういうので生きる張り合いが出てくるなら悪くないんじゃないか。
なお、デュオス公爵と奥方、そしてお嬢さんは大満足の表情だった。
「これはまた明らかに栄養価の高いものが出てきてしまったな」
「体をしっかり動かしていかないと。でも、うなぎを食べたら幾らでもダンスの練習ができそうだわ!」
「私は今すぐ乗馬で早駆けしたい気分かも!」
大いに元気になっている。
公爵と公爵夫人はまあ良いお年なので、さすがにカッとなることはない……と思う。
ひょっとすると年の離れた弟か妹か、ツインとお嬢さんの下に出来てしまうかもしれないが……!
「ナザル、実にご苦労であった。素晴らしい食事をありがとう。そなた以外に、これほどの食を我らの元に届けてくれる者はいない。これからも……期待しているぞ」
「はっ!」
ということで、美食伯はこれからも、様々な美食を届ける事を期待されているのだった。
お任せ願いたい。
まだまだ再現できる食事はたくさんあるのだ。
ちょっと懸念しているのは……。
種類ばかり増やしすぎると、アーランでは広まらずに消えていってしまうのではないかということなのだが。
その後、ギルボウも陛下直々のお褒めの言葉を賜った。
もう金は幾らでもある男なので、名誉を与えられるのが一番ということで、陛下の王笏についていた飾りの一つをバッジとして打ち直し、ギルボウに届けるということになったのだった。
良かったなあ。
完全に箔が付いたぞ。
シャザクもまた、陛下と公爵からねぎらいの言葉があった。
子爵としては、破格のポジションにいる男だ。
貴族の爵位が上に詰まっている以上、現状は子爵より上には行けまい。
だが、公爵家の覚えめでたき執事みたいなポジションにいるので唯一無二だ。
シャザクとエリィの栄達はまだまだ続くな。
次の子が男子なら、家と家のつながりを継ぐことになるだろう。
ということで。
「「「乾杯!!」」」
三人で祝杯を挙げることにした。
エリィのところには、後日王家から美味しいものが届くことだろう。
一足早く、僕ら三人で今回の会食の成功を祝うのだ。
よく冷えたビールをごくごく飲む。
美味い!!
疲れた体に染み込んでいく!
「この店はな、料理はまあまあいけるんだ。俺が作ったほうが美味いが、祝いの時までてめえで作りたくはねえからな」
「いやあギルボウさん勘弁してくださいよ」
店の主人が笑いながら料理を運んできてくれる。
ギルボウがまあまあいけるということは、相当美味いという意味である。
一見すると普通のスペアリブだが……。
「あっ、うめえ!! 下味がすごい」
「あー、これは美味しい。酒が進む」
カパカパビールを飲む、僕とシャザクである。
「しかし、無事に終わって良かったな。王族が全員集まって食事をするなんて初めてだろう?」
「そうだなあ。以前集まったときは第二王妃はいなかったし、王女四人もいなかった。ぶっちゃけ今日が初対面だ。しかもその以前というのはな、第二王子が謀反を疑われて国内で動乱が発生した時で」
「ああ、油革命!」
「えっ、そんな風に呼ばれてるの!?」
シャザクの言葉に目を剥く僕である。
なんだよ、油革命って!!
「油使いが国内の動乱を収めた事件だから、巷では油革命と呼ばれてるんだ。美食伯の伝説みたいな戯曲にも歌われているぞ」
「知らなかった」
「ナザルは世の中のことにあまりにも興味なさすぎだなあ」
「ま、だからこそこいつは空気を読まず、世の中をガンガン動かしていくわけだ。俺やあんたにはとても無理なことだろう?」
「全くだ」
笑いながら、ギルボウとシャザクが乾杯した。
僕が世の中の流れに疎いのを肴に盛り上がるとは何事だ。
ぷりぷりと怒る僕だったが、運ばれてきた次の料理であるポテトグラタンがべらぼうに美味かったので、不機嫌などどこかに飛んでいってしまうのだった。
四人の王女様が口々にそんなことを仰っている。
いやはや、お喜びいただけて何よりですよ。
でも結婚とかそういうのはね、美味い飯を作るくらいで相手を決めたらいけないからね。
「ふむ」
先王陛下が唸った。
ちょっと場が静かになる。
主に大人たちが、黙って先王の口が開くのを待つ。
「まあ……いつも通り、美味であった。ご苦労、美食伯」
「はっ、ありがたき幸せ」
リップルを取られて複雑な気持ちだろうが、美味しいものには正直なんだよなこの人。
「それでだ、ナザルよ。お前、その、あのな」
「はっ」
ここで察する僕である。
もしかしてこの人……。
あらゆる事に対して異常に素直じゃないから。
「そうだ。カルがそろそろはいはいしそうなのですが、リップルによく似て利発な子で」
「ほう」
食いついた!
「陛下、抱っこしてみますか」
「おお、おうおう! 仕方がないやつだ。先王とは言え、忙しいのだが……仕方ないなあ。連れて来るが良い。余がそなたの息子を抱っこしてやろう……」
ちょっとウキウキし始めたぞ。
ソロス陛下は、仕方ないなあという顔で苦笑している。
先王陛下も、こいういうので生きる張り合いが出てくるなら悪くないんじゃないか。
なお、デュオス公爵と奥方、そしてお嬢さんは大満足の表情だった。
「これはまた明らかに栄養価の高いものが出てきてしまったな」
「体をしっかり動かしていかないと。でも、うなぎを食べたら幾らでもダンスの練習ができそうだわ!」
「私は今すぐ乗馬で早駆けしたい気分かも!」
大いに元気になっている。
公爵と公爵夫人はまあ良いお年なので、さすがにカッとなることはない……と思う。
ひょっとすると年の離れた弟か妹か、ツインとお嬢さんの下に出来てしまうかもしれないが……!
「ナザル、実にご苦労であった。素晴らしい食事をありがとう。そなた以外に、これほどの食を我らの元に届けてくれる者はいない。これからも……期待しているぞ」
「はっ!」
ということで、美食伯はこれからも、様々な美食を届ける事を期待されているのだった。
お任せ願いたい。
まだまだ再現できる食事はたくさんあるのだ。
ちょっと懸念しているのは……。
種類ばかり増やしすぎると、アーランでは広まらずに消えていってしまうのではないかということなのだが。
その後、ギルボウも陛下直々のお褒めの言葉を賜った。
もう金は幾らでもある男なので、名誉を与えられるのが一番ということで、陛下の王笏についていた飾りの一つをバッジとして打ち直し、ギルボウに届けるということになったのだった。
良かったなあ。
完全に箔が付いたぞ。
シャザクもまた、陛下と公爵からねぎらいの言葉があった。
子爵としては、破格のポジションにいる男だ。
貴族の爵位が上に詰まっている以上、現状は子爵より上には行けまい。
だが、公爵家の覚えめでたき執事みたいなポジションにいるので唯一無二だ。
シャザクとエリィの栄達はまだまだ続くな。
次の子が男子なら、家と家のつながりを継ぐことになるだろう。
ということで。
「「「乾杯!!」」」
三人で祝杯を挙げることにした。
エリィのところには、後日王家から美味しいものが届くことだろう。
一足早く、僕ら三人で今回の会食の成功を祝うのだ。
よく冷えたビールをごくごく飲む。
美味い!!
疲れた体に染み込んでいく!
「この店はな、料理はまあまあいけるんだ。俺が作ったほうが美味いが、祝いの時までてめえで作りたくはねえからな」
「いやあギルボウさん勘弁してくださいよ」
店の主人が笑いながら料理を運んできてくれる。
ギルボウがまあまあいけるということは、相当美味いという意味である。
一見すると普通のスペアリブだが……。
「あっ、うめえ!! 下味がすごい」
「あー、これは美味しい。酒が進む」
カパカパビールを飲む、僕とシャザクである。
「しかし、無事に終わって良かったな。王族が全員集まって食事をするなんて初めてだろう?」
「そうだなあ。以前集まったときは第二王妃はいなかったし、王女四人もいなかった。ぶっちゃけ今日が初対面だ。しかもその以前というのはな、第二王子が謀反を疑われて国内で動乱が発生した時で」
「ああ、油革命!」
「えっ、そんな風に呼ばれてるの!?」
シャザクの言葉に目を剥く僕である。
なんだよ、油革命って!!
「油使いが国内の動乱を収めた事件だから、巷では油革命と呼ばれてるんだ。美食伯の伝説みたいな戯曲にも歌われているぞ」
「知らなかった」
「ナザルは世の中のことにあまりにも興味なさすぎだなあ」
「ま、だからこそこいつは空気を読まず、世の中をガンガン動かしていくわけだ。俺やあんたにはとても無理なことだろう?」
「全くだ」
笑いながら、ギルボウとシャザクが乾杯した。
僕が世の中の流れに疎いのを肴に盛り上がるとは何事だ。
ぷりぷりと怒る僕だったが、運ばれてきた次の料理であるポテトグラタンがべらぼうに美味かったので、不機嫌などどこかに飛んでいってしまうのだった。
31
あなたにおすすめの小説
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる