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109・先王よ、うちの子を抱っこせよ
第332話 カルの王宮デビューだ
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「ということになった」
「ほほー。陛下が私たちの赤ちゃんをねえ」
カルを膝の上に乗せながら、ふむふむと頷くリップルなのだった。
我が息子はすっかり首もしっかりし、自らゴロンゴロン寝返りも打てるようになった。
腕の力がかなり強くなっているので、はいはいまではカウントダウンであろう。
赤ちゃんベッドを拡張したのだが、そのスペースの中を縦横無尽に転げ回っている。
これはそろそろオープンスペースが必要になってくるのではあるまいか。
「カル、恐れ多くも先王陛下がお前を抱っこしたいんだそうだ」
「ぶあー?」
「分からんだろうなあ。分からんよなあ」
だが、ちょっとやそっとでは動じない我が子である。
最近ではコゲタにおんぶされて、中庭をキャッキャ言いながら連れ回してもらったりしている。
恐れを知らぬ。
先王陛下だろうが、人見知りもしないだろうな。
まだ人見知りする年齢じゃないか。
「いやあ、でもなんていうか感慨深いなあ。あの若者がもうご隠居になって、カルを孫みたいな気分で抱っこするんだろう?」
「あの人にとって、リップルは憧れの人らしいからなあ」
「そうらしいね。なんでそんなことになっているのかさっぱり分からない。やっぱり男の子は、何歳になっても強い英雄を好むってことかな」
異性として好きなんだよなあ!
プロポーズまでされたはずなのに、さっぱりそういうのを意識してないリップルよ。
一体どれだけの男たちを泣かせてきたのか。
いや、彼女に惚れるほうが悪いな。
どう考えても無理でしょ。
「ナザル、人の顔を見て何を考えているんだい?」
「なんでもない。陛下に抱っこさせるんだから、カルの赤ちゃん服はちょっといいのを買っていった方がいいだろうな」
「ああ、それはそうだろうね」
「あぶー?」
今は僕らが抱っこして心地よく、そしてカルが冷えないようにもこもこした物を着せているからな。
だが、陛下の前に出すならそれなりに上品な外見がいいのではないか……!
ということで、本日は早めに帰ってきたコゲタとアゲパンを加え、カルの赤ちゃん服を買いに行くことにしたのだった。
「カルのふくはどうしようねー」
「そうだなあ。やはりおとこらしいふくがいいとおもう!」
「コゲタはかわいいのがいいなあー」
「かわいいのもわるくないけど、カルはおとこのこだからね」
「それもそっかー」
コボルドたちがぺちゃくちゃお喋りをしている。
アゲパン、惚れた相手だろうと己の矜持みたいなのは貫くタイプなのな。
ちょっと好感度上がったぞ。
そうだなあ。
カルはそれなりにかっこいい系がいいのかも知れない。
こうして向かったのは貴族たちの衣服を扱う店である。
まあ、店と言ってもしょっちゅう人が買いに来るわけではない。
だから、普段は古着の修繕などをやっている。
いざ貴族がやって来ると、店の奥の閉ざされた扉が開き……。
そこにある特別な部屋に招き入れるわけである。
それがここね。
店の主人が一張羅を纏い、僕らを出迎えてくれた。
「あの美食伯の御子息にお洋服を用意できるとは!! 光栄です! なるほど、まだ乳幼児であると。では……このような布でいかがでしょう? これとこれを組み合わせて……」
「紅白の布!? おめでたそう」
「お二人の式も、金色だったり真っ赤だったりしたでしょう。黄金は美食伯の色とされていますが、やはり扱いが難しくちょっと間違えると下品になりますので」
「なるね」
あの礼服は最悪だった。
眩しくて直視もできないもんな!
「いいんじゃないかな? 赤と白ならそんなに眩しくないし。王家の色がオレンジだろう? だったら被ってないからいいと思う」
「コゲタもいいとおもう!」
「われもさんせいです!」
よし、満場一致である。
店主はカルのサイズをサササッと測り、
「今日明日は店を閉めて、服を作ります。明後日には完成しますよ!」
と頼もしい事を言ってくれるのだった。
頼むぞ店主!
二日間はあっという間に過ぎた。
僕が町中を視察したら、高級店でうな重の取り扱いがスタートしており、ギルボウプロデュースの山椒っぽいものまで誕生していることに仰天していたら、もう二日経過していたのだ。
ギルボウめ、止まるということを知らない。
常に進化し続ける男だ。
「いやびっくりした」
驚きながら帰ってきたら、カルが紅白の見事に組み合わさった、品のある赤ちゃん服に身を包んでいたので二度びっくりした。
「うわーっ! 我が家のカルボナルが上品ベビーに!!」
「だうー」
「びっくりしたかい? 本当に二日間で仕上げてくれたよ。これはなかなか可愛くていいねえ」
リップルはご満悦だ。
僕としても、ただでさえかわいいカルが上品さまで身に着けてしまったら、無敵ではないかという事実に気づき震える。
我々は息子のとんでもないポテンシャルを解き放ってしまった。
「おとうさん、おかあさん、それはおそらくおやばかというもので」
「チェストー!!」
「ウグワーッ!」
冷静に突っ込んできたアゲパンの眉間にチョップを叩き込んだ。
親というものは子どもを無条件で褒め称えたりもするものなのだ!
さて、このハチャメチャに無敵になったカルを、先王陛下に抱っこさせてあげようではないか。
「ほほー。陛下が私たちの赤ちゃんをねえ」
カルを膝の上に乗せながら、ふむふむと頷くリップルなのだった。
我が息子はすっかり首もしっかりし、自らゴロンゴロン寝返りも打てるようになった。
腕の力がかなり強くなっているので、はいはいまではカウントダウンであろう。
赤ちゃんベッドを拡張したのだが、そのスペースの中を縦横無尽に転げ回っている。
これはそろそろオープンスペースが必要になってくるのではあるまいか。
「カル、恐れ多くも先王陛下がお前を抱っこしたいんだそうだ」
「ぶあー?」
「分からんだろうなあ。分からんよなあ」
だが、ちょっとやそっとでは動じない我が子である。
最近ではコゲタにおんぶされて、中庭をキャッキャ言いながら連れ回してもらったりしている。
恐れを知らぬ。
先王陛下だろうが、人見知りもしないだろうな。
まだ人見知りする年齢じゃないか。
「いやあ、でもなんていうか感慨深いなあ。あの若者がもうご隠居になって、カルを孫みたいな気分で抱っこするんだろう?」
「あの人にとって、リップルは憧れの人らしいからなあ」
「そうらしいね。なんでそんなことになっているのかさっぱり分からない。やっぱり男の子は、何歳になっても強い英雄を好むってことかな」
異性として好きなんだよなあ!
プロポーズまでされたはずなのに、さっぱりそういうのを意識してないリップルよ。
一体どれだけの男たちを泣かせてきたのか。
いや、彼女に惚れるほうが悪いな。
どう考えても無理でしょ。
「ナザル、人の顔を見て何を考えているんだい?」
「なんでもない。陛下に抱っこさせるんだから、カルの赤ちゃん服はちょっといいのを買っていった方がいいだろうな」
「ああ、それはそうだろうね」
「あぶー?」
今は僕らが抱っこして心地よく、そしてカルが冷えないようにもこもこした物を着せているからな。
だが、陛下の前に出すならそれなりに上品な外見がいいのではないか……!
ということで、本日は早めに帰ってきたコゲタとアゲパンを加え、カルの赤ちゃん服を買いに行くことにしたのだった。
「カルのふくはどうしようねー」
「そうだなあ。やはりおとこらしいふくがいいとおもう!」
「コゲタはかわいいのがいいなあー」
「かわいいのもわるくないけど、カルはおとこのこだからね」
「それもそっかー」
コボルドたちがぺちゃくちゃお喋りをしている。
アゲパン、惚れた相手だろうと己の矜持みたいなのは貫くタイプなのな。
ちょっと好感度上がったぞ。
そうだなあ。
カルはそれなりにかっこいい系がいいのかも知れない。
こうして向かったのは貴族たちの衣服を扱う店である。
まあ、店と言ってもしょっちゅう人が買いに来るわけではない。
だから、普段は古着の修繕などをやっている。
いざ貴族がやって来ると、店の奥の閉ざされた扉が開き……。
そこにある特別な部屋に招き入れるわけである。
それがここね。
店の主人が一張羅を纏い、僕らを出迎えてくれた。
「あの美食伯の御子息にお洋服を用意できるとは!! 光栄です! なるほど、まだ乳幼児であると。では……このような布でいかがでしょう? これとこれを組み合わせて……」
「紅白の布!? おめでたそう」
「お二人の式も、金色だったり真っ赤だったりしたでしょう。黄金は美食伯の色とされていますが、やはり扱いが難しくちょっと間違えると下品になりますので」
「なるね」
あの礼服は最悪だった。
眩しくて直視もできないもんな!
「いいんじゃないかな? 赤と白ならそんなに眩しくないし。王家の色がオレンジだろう? だったら被ってないからいいと思う」
「コゲタもいいとおもう!」
「われもさんせいです!」
よし、満場一致である。
店主はカルのサイズをサササッと測り、
「今日明日は店を閉めて、服を作ります。明後日には完成しますよ!」
と頼もしい事を言ってくれるのだった。
頼むぞ店主!
二日間はあっという間に過ぎた。
僕が町中を視察したら、高級店でうな重の取り扱いがスタートしており、ギルボウプロデュースの山椒っぽいものまで誕生していることに仰天していたら、もう二日経過していたのだ。
ギルボウめ、止まるということを知らない。
常に進化し続ける男だ。
「いやびっくりした」
驚きながら帰ってきたら、カルが紅白の見事に組み合わさった、品のある赤ちゃん服に身を包んでいたので二度びっくりした。
「うわーっ! 我が家のカルボナルが上品ベビーに!!」
「だうー」
「びっくりしたかい? 本当に二日間で仕上げてくれたよ。これはなかなか可愛くていいねえ」
リップルはご満悦だ。
僕としても、ただでさえかわいいカルが上品さまで身に着けてしまったら、無敵ではないかという事実に気づき震える。
我々は息子のとんでもないポテンシャルを解き放ってしまった。
「おとうさん、おかあさん、それはおそらくおやばかというもので」
「チェストー!!」
「ウグワーッ!」
冷静に突っ込んできたアゲパンの眉間にチョップを叩き込んだ。
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