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第2章 あなたは暗殺者⁉

不思議なあなたは……②

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 アンドレが、またしても不思議な生き物を見るような目を向けてくる。

 とはいえ、こちらとしては感じたままを口にしただけ。一体なんのことやらと理解に苦しむ。

「ちゃんと魔力の気配は感じるわよ。だけど、間違っているのかしら?」

「いいえ、間違ってはいません。おそらくジュディの言ったとおりです……」

 表情を硬くする彼は、ゆっくりと発した。
 随分と不安そうである。
 そんなアンドレは、地中に潜る土蜘蛛に懸念を抱いているのかしらと考え、彼を元気づけようと極力明るく返す。

「ふふっ、そうでしょう」

「……ですが、土蜘蛛は土に隠れた時点で、周囲に魔力が漏れてこないから、普通の人は感じないレベルですよ」

「変ねぇ? 普通に感じるけど、そうなの?」

「普通って……。僕もゲート越しでは、どこにいるか。場所までは、はっきり分からないくらいです」

「わたしには、はっきりと感じるわよ。ゲートの丁度中央に潜っているわね」

「ぇ……そこまで分かるんですか?」

 と言ったきり、アンドレは額に手を置くと、しばらく考えに耽る。随分と悩ましげだ。

 わたしが「アンドレ?」と声をかければ、どこか吹っ切れたように、ふっと笑った。

「はは……とんでもない手練れを送り込まれたものですね。身を潜めるのは、潮時がきたようです」

「ん? なんの話?」
「……いえ、土蜘蛛の話ですよ。僕は、あの方を一目見るまでは、死にたくないからね」

「そう」と言ったわたしの顔を彼が見つめてくる。
「——ねえ、近くで探している兵士たちは、どうして分からないのかしら? さっさと攻撃すればいいのに」

 納得できずに思わず首を傾げる。
 すると、アンドレがぶっと噴き出し大笑いを始めた。

「シャワーのお湯も出せずに悪戦苦闘していた人物とは思えない発言ですね」

「ちょっと、それとこれでは話が違うでしょう」
 やばい。
 その話題には触れないようにしていたのに、なんでさらっとシャワーの話を持ち出すのよ。恥ずかしいからやめてよね。

「それじゃあ、せっかくです。二人で土蜘蛛の討伐でもしてきますか」

「ま、待ってよ。土蜘蛛といえば、兵士二十人がかりで討伐する魔物でしょう。それを気軽に討伐するって何を考えているのよ。二人って言っても、魔法が使えないわたしは戦力外なんだから」

「本当にジュディは知識だけは聖女並みですね。魔物の強さをさらりと言える女性は、そうそういないと思いますけど」

 ――おや? 珍しく褒められたのか?

 アンドレと出会ってからというもの、良いところなしのわたしは、得意分野を見つけた気がして、気取った口調で言ってみることにした。

「誉め言葉として受け取っておくわね」

「……思うことはいっぱいありますが、言い返すのは面倒です。そのまま得意になっているといいですよ。まだらな記憶も残念なジュディらしくて、可愛いですから」

「その言い方。——さては、わたしのことを馬鹿にしていたのね!」

「くくっ。仕方ないでしょう。名前もどこにいたのかも分からないって言い張るのに、土蜘蛛を見つけるほどの魔力感知を、さらっと披露するんだから。おかしくてしょうがないですよ」

 
 それからしばらく、彼の笑いは止まらない。じぃっと何度も睨んでもみたが、少しも気にする素振りはないんだから。酷いわね。

 そんなわけで。くつくつと笑い続けるアンドレと共に、ゲートと呼ばれる門の近くまで来たのだ。

 彼から見たわたしは、肝心なことはさっぱり分からないくせに、どうしようもない記憶だけ持ち合わせているものね。それが余程おかしかったのだろう。

 だとしても、わたしとしては至って真面目だ。ちっともおかしくないけどね。
 アンドレは愉快に笑っているけど、どうして、こんなおかしな記憶なのか、自分が知りたいくらいだ。

 門の脇で馬を降りれば、そこを守る兵士たちに近づいた。

 約十人くらいの兵士たちは、結界の外に向かって一列に並び様子を窺っているようだ。
 いや、もうすっかりと油断して、その場に立っているだけに見える。

 彼らはそろそろ撤退しようとしているのだろうか? 気を緩めてお喋りをしている。
 むしろそれが、どうかしている。

 ちょうど中央に位置する兵士の先に、土蜘蛛がいるんだもの。上を歩けば民間人に被害が出るわよ。

 ふと周囲を見れば、列とは離れた所から全体の様子を見ている、二十代半ばくらいの兵士が一人いる。

 その男がこちらを睨んでくる。というよりも、どうやらアンドレを見ているようだ。

 いかにも武将といった猛々しい男が、渋い顔をして眉毛をぴくりと動かした。

 その人物の腕に見えている階級章が、他の人物より多いところをみると、上官なのだろう。
 他の兵士より相当若く見えるけど、昇級するのに年齢は関係ないみたいね。

 なるほどなと頷くわたしは、この軍にも存在する、絶対的な魔力主義を理解した。

 まあ想像するに、この軍の中で、彼の魔力が一番大きいのかもしれない。
 
 そう思ったところで、つと横を見れば、アンドレと目が合った。

 アンドレも上官の存在を意識していたみたいだ。「さて、彼の元へ行きますか」と、さらりと口にする。
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