記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第2章 あなたは暗殺者⁉
わたしは誰③
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二度目となるお嬢様説。今回は、今どきの綺麗な服を着ているせいだろう。
だが令嬢の可能性は「絶対にないだろう」って、わたしもアンドレも思っている。
カウンターに阻まれているエレーナには、わたしの履いている靴が見えていない。なるほどね。そのせいで誤解しているのか。
元々は白かったと思われる靴は、布製で底がぺったんこのパンプスだ。
履き口にゴムが入り、どんなに動き回っても脱げない造りで、実用性しか兼ね備えていない。
それだけならまだしも、草のつゆやら泥やらで元の色も分からず、所々ほころびており、相当に履き古した靴である。
どこのお嬢様が、こんな汚くてボロボロの物を身に着けているというのだ。
相手の靴を見れば人となりが分かるというが、わたしの場合は、おしゃれとは無縁。貧乏丸出しの足元をしている。
先程入店した服屋でも、ただの冷やかし客だと思われたのだろう。
店員から一度も声をかけられず、放置されていたんだから。
「お嬢様なんて、とんでもないです。ちょっと事情があって、家を飛び出してきただけです」
その事情が、犯罪性を秘めていないことだけを願っている。今ごろ、指名手配をされていないかと、内心、気が気ではないのだから。
「飛び出したって駆け落ちかい! いやぁ~若いっていいね。もしかして、ジュディちゃんは、アンドレさんが手紙をやり取りしていたお嬢さんなのかい?」
「手紙ですか?」
「そうよ。アンドレさんは、その人の手紙が届くと凄く嬉しそうにしていたからね。そのお嬢さんが好きなんだって、すぐに分かったけどね」
「やめてくださいエレーナ! そのご令嬢はジュディではありません。ジュディはただの雑役兵ですよ。変な誤解をしないでください」
「あらそうなのね」
「――それに……。僕とそのご令嬢は全く関係ありませんから。お礼状を、ただやり取りしていただけです。変な思い込みは、その方に失礼なのでやめてください」
アンドレがこの場を白けさせるほど、怒った口調で否定した。
だけどこの手の勘違い。
いちいち真に受けず、冗談半分に受け流せばいいのになと、わたしなら思ってしまう。
でも、そう感じたのはわたしだけで、アンドレはわたしと噂されるのが、よっぽど嫌みたいだ。
なんとなくだけど、アンドレはその手紙のご令嬢のことが好きなのかなって思う。そうでなければ、ここまで必死に否定しない。
その逆に、素性の分からないわたしをアンドレが警戒しているのも、肌で感じるけど。
アンドレはわたしを邪険にしている。それは分かっているんだけど……何としても彼の傍にいたい。
わたしの感情が何から湧くものなのか分からないけど、離れるなと必死に頭の奥から訴えてくる。
その感情の正体を探ろうと思考を深めると、額の辺りがむずかゆくなり、思わず手を当てた。
その仕草を見たエレーナは、わたしが気に病んだと思ったのだろう。申し訳なさげに口を開いた。
「あらそうだったのジュディちゃん。おばさんが余計なことを言って悪かったね」
「気にしないでください。それより、わたし……大司教のガラス玉を持っているのに水道を使えなくて、厨房でお役に立てるか自信がなくてですね――」
どうしたものかと悩みを打ち明けると、話の途中で「ジュディちゃんも魔力なしなのかい⁉」と、食い気味に確認された。
「わたしもって⁉ もしかしてエレーナさんも魔力がないのですか? あー――!」
この人が、知識だけは聖女並みの人だ! と言いかけて口を手で覆う。
魔力なしの少数派は、魔力至上主義の社会で虐げられているのは自分が何者か分からないわたしでさえ、知っている。
――聖女並みの知識。
それはおそらく、エレーナさんが生き抜くために必要な知識だったのだろう。
それを茶化す真似は、同じ魔力なしの立場でも言ってはいけない気がしたからだ。
「そうだよ。私みたいなのは、どこでも自由に働けないからね。ここで仕事をもらえて助かっているよ」
「ガラス玉は、持っているだけでいいと教えてもらったんですけど……わたしが大司教のガラス玉をうまく使えないのは、どうしてなんでしょうか?」
ここにくる少し前。シャワーのお湯を出せずに苦戦した事を思い出す。
せっかく持っているのに少しも役に立たないと、指に挟んだガラス玉を、皮肉交じりに見せつけた。
「ちょっと、それを見せてくれるかい?」
エレーナさんが手を出すから、「あ、はい」と、よく分からないながらも彼女の手のひらに置く。
すると、それを見た途端。ガハハッと大きな笑い声が上がった。
だが令嬢の可能性は「絶対にないだろう」って、わたしもアンドレも思っている。
カウンターに阻まれているエレーナには、わたしの履いている靴が見えていない。なるほどね。そのせいで誤解しているのか。
元々は白かったと思われる靴は、布製で底がぺったんこのパンプスだ。
履き口にゴムが入り、どんなに動き回っても脱げない造りで、実用性しか兼ね備えていない。
それだけならまだしも、草のつゆやら泥やらで元の色も分からず、所々ほころびており、相当に履き古した靴である。
どこのお嬢様が、こんな汚くてボロボロの物を身に着けているというのだ。
相手の靴を見れば人となりが分かるというが、わたしの場合は、おしゃれとは無縁。貧乏丸出しの足元をしている。
先程入店した服屋でも、ただの冷やかし客だと思われたのだろう。
店員から一度も声をかけられず、放置されていたんだから。
「お嬢様なんて、とんでもないです。ちょっと事情があって、家を飛び出してきただけです」
その事情が、犯罪性を秘めていないことだけを願っている。今ごろ、指名手配をされていないかと、内心、気が気ではないのだから。
「飛び出したって駆け落ちかい! いやぁ~若いっていいね。もしかして、ジュディちゃんは、アンドレさんが手紙をやり取りしていたお嬢さんなのかい?」
「手紙ですか?」
「そうよ。アンドレさんは、その人の手紙が届くと凄く嬉しそうにしていたからね。そのお嬢さんが好きなんだって、すぐに分かったけどね」
「やめてくださいエレーナ! そのご令嬢はジュディではありません。ジュディはただの雑役兵ですよ。変な誤解をしないでください」
「あらそうなのね」
「――それに……。僕とそのご令嬢は全く関係ありませんから。お礼状を、ただやり取りしていただけです。変な思い込みは、その方に失礼なのでやめてください」
アンドレがこの場を白けさせるほど、怒った口調で否定した。
だけどこの手の勘違い。
いちいち真に受けず、冗談半分に受け流せばいいのになと、わたしなら思ってしまう。
でも、そう感じたのはわたしだけで、アンドレはわたしと噂されるのが、よっぽど嫌みたいだ。
なんとなくだけど、アンドレはその手紙のご令嬢のことが好きなのかなって思う。そうでなければ、ここまで必死に否定しない。
その逆に、素性の分からないわたしをアンドレが警戒しているのも、肌で感じるけど。
アンドレはわたしを邪険にしている。それは分かっているんだけど……何としても彼の傍にいたい。
わたしの感情が何から湧くものなのか分からないけど、離れるなと必死に頭の奥から訴えてくる。
その感情の正体を探ろうと思考を深めると、額の辺りがむずかゆくなり、思わず手を当てた。
その仕草を見たエレーナは、わたしが気に病んだと思ったのだろう。申し訳なさげに口を開いた。
「あらそうだったのジュディちゃん。おばさんが余計なことを言って悪かったね」
「気にしないでください。それより、わたし……大司教のガラス玉を持っているのに水道を使えなくて、厨房でお役に立てるか自信がなくてですね――」
どうしたものかと悩みを打ち明けると、話の途中で「ジュディちゃんも魔力なしなのかい⁉」と、食い気味に確認された。
「わたしもって⁉ もしかしてエレーナさんも魔力がないのですか? あー――!」
この人が、知識だけは聖女並みの人だ! と言いかけて口を手で覆う。
魔力なしの少数派は、魔力至上主義の社会で虐げられているのは自分が何者か分からないわたしでさえ、知っている。
――聖女並みの知識。
それはおそらく、エレーナさんが生き抜くために必要な知識だったのだろう。
それを茶化す真似は、同じ魔力なしの立場でも言ってはいけない気がしたからだ。
「そうだよ。私みたいなのは、どこでも自由に働けないからね。ここで仕事をもらえて助かっているよ」
「ガラス玉は、持っているだけでいいと教えてもらったんですけど……わたしが大司教のガラス玉をうまく使えないのは、どうしてなんでしょうか?」
ここにくる少し前。シャワーのお湯を出せずに苦戦した事を思い出す。
せっかく持っているのに少しも役に立たないと、指に挟んだガラス玉を、皮肉交じりに見せつけた。
「ちょっと、それを見せてくれるかい?」
エレーナさんが手を出すから、「あ、はい」と、よく分からないながらも彼女の手のひらに置く。
すると、それを見た途端。ガハハッと大きな笑い声が上がった。
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