記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第2章 あなたは暗殺者⁉
横恋慕の気配①
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◇◇◇
「はぁぁぁ~」と、深いため息をつく。
見ず知らずのアンドレの横で目覚めてからというもの、今日一日で、本当に色々あった。
厨房の仕事を終え、部屋に戻ったわたしは、真っ先に備え付けの机に向かう。
至ってシンプルな木製の机セットである。椅子の座面は硬い。長く座っているとお尻が痛くなりそうだ。
ましてや寄り掛かるには低すぎる背もたれのせいで、なんとも座り心地が悪い。
真ん前の机の上には、ビー玉のような大司教のガラス玉が、いくつも転がっている。
わたしのポケットに入っていたガラス玉は、全部で二十三個だった。
エレーナからガラス玉と線の関係を教えてもらい、自分が所持していたガラス玉の状況が不安になり、急いで確認した。
使い古しを持ち歩いていたのなら、物を捨てられない、貧乏性の説も浮上したからだ。
とにかく過去の自分探しのため、一つでもヒントが欲しい。
それに、エレーナから借りた分を「返す」と言った手前、未使用品をきちんと確認したかったのも、ひとつの理由である。
今日から使用開始したガラス玉は、僅かに傷ができている。
おそらくこの傷が伸び、中心に一本の線を作るのだろう。
線や傷の存在を確かめようと、明かりに透かしてビー玉をまじまじと見る。
夜になったせいで、差し込む日差しはないうえ、この部屋のランプが薄暗くて光が足りない。
そのため、ガラス玉を透かして見るのに苦労した。
昼間なら自然光を使って、もっと簡単に判別できたはずだ。
まあ時間はあるし、一つひとつ丁寧に時間をかけ、その全てを確認してみた。
そうすれば、中心に線が一本入っているのは、偶然選んだ、最初の一つだけだった。
この状況を順当に考えれば。
記憶を失うまでの生活の中で、大司教のガラス玉を、道具を動かすために使っていたのだろう。
それは理解できるけど……使用済みを一緒に混ぜる自分のだらしない性格に、呆れはする。
まあね。履いていた汚い靴を見ると、そんな性格なのだと腑に落ちる。
「魔物の侵入かぁ……。どうして結界が破られたんだろう……」
エリートと自負する第一部隊の対処能力の低さ。その実情に、ざわざわと不安を感じる。
攻撃力の弱い魔猪ごときを退治するのに二時間もかかっているのだ。もっと強い魔物が入ってきたら、この領地はひとたまりもない。
――おそらくだけど。
ゲートがあるこの辺境伯領の軍事力は、他の領地に比べて高いはずだ。それで、このありさま。
ルダイラ王国全体が、魔物への耐性が低いのだろう。
「はぁぁぁ~」
再び深いため息がこぼれ、新しいガラス玉を無意識に握る。
こうやって触れてみると、使い古しと握った感覚は変わらないことを、改めて実感した。
そして、両手でそれを握りしめ、頬杖をつくように顎に当て、瞳を閉じた。
「このカステン辺境伯領に、魔物が入って来ませんように」
心からの祈りを込めて願う。
すると、ピキッと微かな音が聞こえる。
いや、手のひらの中で感じる極々僅かな衝撃かもしれない。ちょっとした違和感が、手に伝わる。
何だろうなぁと思いながら、ガラス玉を見ると、中央に線が入っているではないか!
それを見て、わたしの新たな事実に直面し、狼狽えたのは間違いない。
「エエぇ――ちょっと! わたしの握力って相当怪力なの⁉ 握りすぎて大司教のガラス玉が割れちゃったじゃない!」
アンドレが、わたしは「実戦訓練をしていた」って言っていたけど。ますます現実味が増してきた。
じゃなきゃ乙女の握力ごときで割れないでしょう。
この新事実は、アンドレから向けられる「暗殺者説」の疑惑が深まる気がしてならないから、とにかく隠しておこう。
壊れたとはいえ、このガラス玉。魔法は使っていないから、まだ、魔力は残っている気はする。
だけど、見た目は使用済みと変わらないため、実際のところ使えるのか? いまいち怪しい。
とりあえず、使用済みの一つと一緒に混ぜておく。いっぱいあるし、いいわよね、一つくらい。
それにしてもこのガラス玉、脆すぎる。
乙女が握ったくらいで簡単に割れるなら、エレーナはどうやって一か月も上手に持ち歩いているのかと、そっちの方が不思議でならない。
ガラス玉の素材は分からないが、結構弱いものだと認識した。
明日から、持ち歩くときは気を付けるべしと学習したわたしは、少しだけ賢くなった。
こんな感じで、一つ、また一つと湧き上がる疑問は、一向に尽きることはない。
もやもやした感情を抱いていると、遠慮がちにノックされる音が部屋に響く。
「やったわ。お待ちかねのものが、来たのね! パジャマ! パジャマ!」
服屋で買った品々が届いたんだと、慌てて駆け寄り、扉を開けた。
「待っていたわよ!」
「遅くなって申し訳ありません。昼間できなかった仕事をしていたら、こんな時間になっていました」
「あっ、ごめんなさい。わたしに付き合わせたせいよね」
「あ、いや、僕が集中できなかっただけですので」
「そう」
「それはそうとして。自分の部屋の扉を開ける時は、相手を確認してくださいね。僕でなければ、どうするつもりだったんですか?」
「だって、他に誰がいるっていうのよ」
「ここはイヴァン卿も出入りしていますし、『軍の事務所だから』と、ナグワ隊長も平気で上がり込んでいますから、注意してください。眠る時は鍵をかけてくださいね」
そうだった。朝も普通にカステン辺境伯が立っていたんだ。
「はぁぁぁ~」と、深いため息をつく。
見ず知らずのアンドレの横で目覚めてからというもの、今日一日で、本当に色々あった。
厨房の仕事を終え、部屋に戻ったわたしは、真っ先に備え付けの机に向かう。
至ってシンプルな木製の机セットである。椅子の座面は硬い。長く座っているとお尻が痛くなりそうだ。
ましてや寄り掛かるには低すぎる背もたれのせいで、なんとも座り心地が悪い。
真ん前の机の上には、ビー玉のような大司教のガラス玉が、いくつも転がっている。
わたしのポケットに入っていたガラス玉は、全部で二十三個だった。
エレーナからガラス玉と線の関係を教えてもらい、自分が所持していたガラス玉の状況が不安になり、急いで確認した。
使い古しを持ち歩いていたのなら、物を捨てられない、貧乏性の説も浮上したからだ。
とにかく過去の自分探しのため、一つでもヒントが欲しい。
それに、エレーナから借りた分を「返す」と言った手前、未使用品をきちんと確認したかったのも、ひとつの理由である。
今日から使用開始したガラス玉は、僅かに傷ができている。
おそらくこの傷が伸び、中心に一本の線を作るのだろう。
線や傷の存在を確かめようと、明かりに透かしてビー玉をまじまじと見る。
夜になったせいで、差し込む日差しはないうえ、この部屋のランプが薄暗くて光が足りない。
そのため、ガラス玉を透かして見るのに苦労した。
昼間なら自然光を使って、もっと簡単に判別できたはずだ。
まあ時間はあるし、一つひとつ丁寧に時間をかけ、その全てを確認してみた。
そうすれば、中心に線が一本入っているのは、偶然選んだ、最初の一つだけだった。
この状況を順当に考えれば。
記憶を失うまでの生活の中で、大司教のガラス玉を、道具を動かすために使っていたのだろう。
それは理解できるけど……使用済みを一緒に混ぜる自分のだらしない性格に、呆れはする。
まあね。履いていた汚い靴を見ると、そんな性格なのだと腑に落ちる。
「魔物の侵入かぁ……。どうして結界が破られたんだろう……」
エリートと自負する第一部隊の対処能力の低さ。その実情に、ざわざわと不安を感じる。
攻撃力の弱い魔猪ごときを退治するのに二時間もかかっているのだ。もっと強い魔物が入ってきたら、この領地はひとたまりもない。
――おそらくだけど。
ゲートがあるこの辺境伯領の軍事力は、他の領地に比べて高いはずだ。それで、このありさま。
ルダイラ王国全体が、魔物への耐性が低いのだろう。
「はぁぁぁ~」
再び深いため息がこぼれ、新しいガラス玉を無意識に握る。
こうやって触れてみると、使い古しと握った感覚は変わらないことを、改めて実感した。
そして、両手でそれを握りしめ、頬杖をつくように顎に当て、瞳を閉じた。
「このカステン辺境伯領に、魔物が入って来ませんように」
心からの祈りを込めて願う。
すると、ピキッと微かな音が聞こえる。
いや、手のひらの中で感じる極々僅かな衝撃かもしれない。ちょっとした違和感が、手に伝わる。
何だろうなぁと思いながら、ガラス玉を見ると、中央に線が入っているではないか!
それを見て、わたしの新たな事実に直面し、狼狽えたのは間違いない。
「エエぇ――ちょっと! わたしの握力って相当怪力なの⁉ 握りすぎて大司教のガラス玉が割れちゃったじゃない!」
アンドレが、わたしは「実戦訓練をしていた」って言っていたけど。ますます現実味が増してきた。
じゃなきゃ乙女の握力ごときで割れないでしょう。
この新事実は、アンドレから向けられる「暗殺者説」の疑惑が深まる気がしてならないから、とにかく隠しておこう。
壊れたとはいえ、このガラス玉。魔法は使っていないから、まだ、魔力は残っている気はする。
だけど、見た目は使用済みと変わらないため、実際のところ使えるのか? いまいち怪しい。
とりあえず、使用済みの一つと一緒に混ぜておく。いっぱいあるし、いいわよね、一つくらい。
それにしてもこのガラス玉、脆すぎる。
乙女が握ったくらいで簡単に割れるなら、エレーナはどうやって一か月も上手に持ち歩いているのかと、そっちの方が不思議でならない。
ガラス玉の素材は分からないが、結構弱いものだと認識した。
明日から、持ち歩くときは気を付けるべしと学習したわたしは、少しだけ賢くなった。
こんな感じで、一つ、また一つと湧き上がる疑問は、一向に尽きることはない。
もやもやした感情を抱いていると、遠慮がちにノックされる音が部屋に響く。
「やったわ。お待ちかねのものが、来たのね! パジャマ! パジャマ!」
服屋で買った品々が届いたんだと、慌てて駆け寄り、扉を開けた。
「待っていたわよ!」
「遅くなって申し訳ありません。昼間できなかった仕事をしていたら、こんな時間になっていました」
「あっ、ごめんなさい。わたしに付き合わせたせいよね」
「あ、いや、僕が集中できなかっただけですので」
「そう」
「それはそうとして。自分の部屋の扉を開ける時は、相手を確認してくださいね。僕でなければ、どうするつもりだったんですか?」
「だって、他に誰がいるっていうのよ」
「ここはイヴァン卿も出入りしていますし、『軍の事務所だから』と、ナグワ隊長も平気で上がり込んでいますから、注意してください。眠る時は鍵をかけてくださいね」
そうだった。朝も普通にカステン辺境伯が立っていたんだ。
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