記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第2章 あなたは暗殺者⁉
わたしは誰⑧
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「そうなんですか⁉ それならすぐに、ゲートへ戻らなくては」
領内に魔猪が侵入していると案じたナグワ隊長が、振り返ろうとするため、その動きを急いで制する。
「それはお勧めしませんわ。そもそも、魔猪は夜に動きませんから。今晩退治しても、明日の朝に退治しても被害はそれほど変わりません。それに……。結界が不安定なら、他にも魔物がいるはずです。普段大して害のない魔虫だって、夜になれば活動性が増して、指くらい平気で食いちぎりますからね。闇の中で動くのは、襲ってくれと言っているのも同じです」
目視頼りの彼らには、闇の中で魔物を退治できるわけがない。
彼らが再び結界付近に戻るのを引き止めるため、自分の頭にある知識をひけらかすように語る。
すると、ナグワ隊長が初耳だと言いたげに固まり、呆然としている。
「ジュディさん。あなたは一体何者ですか?」
「ただの田舎娘ですよ。ちょっと事情があって家を飛び出したので、お金も、行く当てもないのをアンドレに拾ってもらったんです」
「田舎娘って……。ここも田舎だが、そんな知識を持った娘を見たことがない」
「わたしの周りはこれ位、知っていて当然だったわよ。ここが遅れているんじゃない?」
首をこてんとかしげて、何を言っているんだかと不思議な顔を向けた。
だって、わたしの中では常識だもの。
誰が教えてくれたのか分からないけれど、魔物の話は子どもの頃から知っている気がする。
まるで、寝る前に本を読んで聞かせてもらうような感覚で、自然と覚えたような記憶になっている。
それは、カステン軍の彼らが疎いのか、わたしが変なのか、判断はできないが。
なんせ、記憶が曖昧だから、わたしに知識を植え付けた人物が分からない。
「明日は暇ですか⁉」
「あ~ら、隊長さん。うちのジュディちゃんを誘惑しないでくれますか!」
エレーナがわたしの前に立ちふさがると、隊長から守るように視線を遮ってくれた。
わたしを連れ出そうと試みるナグワ隊長は、途中、交渉相手をわたしからエレーナに変えた。
「俺が誘っているのは、やましいことではない。明日、第一部隊と同行してくれませんか? ――エレーナ頼む。ジュディさんを貸してくれ」
「ただじゃ貸せないわよ。ジュディちゃんはお金がなくて困っているんだから。ねッ」
エレーナが振り向いて、わたしを見たため、うんと頷く。
身一つで森にいたわたしだ。
欲しいものを挙げたらきりがない。
そのうえアンドレは、ひと月しか部屋を貸してくれないって言うんだもの。
部屋探しのためにも、お給金は使わず貯めておきたいし、正直なところ色々と困っている。
「礼はちゃんとするから、頼む!」
その言葉に誘惑され、エレーナの背中から、ひょこっと顔を出す。
そうすれば、ナグワ隊長が両手を合わせて拝んでいるではないか。
隊長がそこまでして、小娘に魔猪を探して欲しいのか、情けない。
「じゃあ、朝食が終わってからね」と、エレーナが勝手に話をまとめて、わたしへ笑顔を向ける。
「良かったねジュディちゃん。何でも買ってくれるらしいから、しっかり欲しいものを強請るんだよ」
「そんな、悪いですよ」
「隊長が一番お金を持っているんだから遠慮するんじゃないよ」
「別にわざわざ何かを買ってもらうのは、気が引けます」
「駄目よ。知識は十分に価値があるんだから、安売りするんじゃないの。何かを教えてあげるだけでも報酬は受け取らなきゃね」
母のような教えをエレーナから頂戴し、「はい」と従った。
さあ、雑談はこれまでにして仕事、仕事と気を取り直す。
すると、カウンターに身を乗り出してきたナグワ隊長が、真顔で不思議な質問をする。
「ところで、今日の夕食はジュディさんが作ってくれたんですか?」
だからどうした? と思ったものの、多少の見栄も必要だろう。
気取って答えた。
「大半の作業はエレーナさんがしているけど、もちろんわたしも手伝ったわよ」
赤裸々に申告するなら、包丁を取り上げられ、玉ねぎの皮を剥いただけである。
だけど、恥ずかしくて言えないし。
それを聞いたナグワ隊長が、ぐるんと振り向き食堂を見渡すと、大声を張り上げた。
「おい、お前ら! ジュディさんの作った食事を残したら、第一部隊降格だからな」
その途端。食堂中に「はい」と、どすの効いた返答が響く。
「ジュディさん! もし残したやつがいれば、俺に報告ください」
「はははっ。もしも……ですね」
いや。これは密告しちゃまずいやつでしょう。食事を残したくらいで降格させられたら、うらまれるわよ……わたしがッ!
ただでさえ、でかい声なのに脅すのはやめてよね。
なんなら、妙な緊張感を兵士たちに与えないでよ。
そのせいで喉が通らなくなっても、わたしのせいじゃないいわよ。たぶん。
その後。食堂に居座るナグワ隊長によって、当然ながら、夕食を残す隊員は一人としていなかった。
彼らが落ち着いて夕食を摂れたかは別問題だけど。
それにしても、魔猪の攻撃法を伝えただけで、これ程までに驚かれる理由が分からないんだけど。
領内に魔猪が侵入していると案じたナグワ隊長が、振り返ろうとするため、その動きを急いで制する。
「それはお勧めしませんわ。そもそも、魔猪は夜に動きませんから。今晩退治しても、明日の朝に退治しても被害はそれほど変わりません。それに……。結界が不安定なら、他にも魔物がいるはずです。普段大して害のない魔虫だって、夜になれば活動性が増して、指くらい平気で食いちぎりますからね。闇の中で動くのは、襲ってくれと言っているのも同じです」
目視頼りの彼らには、闇の中で魔物を退治できるわけがない。
彼らが再び結界付近に戻るのを引き止めるため、自分の頭にある知識をひけらかすように語る。
すると、ナグワ隊長が初耳だと言いたげに固まり、呆然としている。
「ジュディさん。あなたは一体何者ですか?」
「ただの田舎娘ですよ。ちょっと事情があって家を飛び出したので、お金も、行く当てもないのをアンドレに拾ってもらったんです」
「田舎娘って……。ここも田舎だが、そんな知識を持った娘を見たことがない」
「わたしの周りはこれ位、知っていて当然だったわよ。ここが遅れているんじゃない?」
首をこてんとかしげて、何を言っているんだかと不思議な顔を向けた。
だって、わたしの中では常識だもの。
誰が教えてくれたのか分からないけれど、魔物の話は子どもの頃から知っている気がする。
まるで、寝る前に本を読んで聞かせてもらうような感覚で、自然と覚えたような記憶になっている。
それは、カステン軍の彼らが疎いのか、わたしが変なのか、判断はできないが。
なんせ、記憶が曖昧だから、わたしに知識を植え付けた人物が分からない。
「明日は暇ですか⁉」
「あ~ら、隊長さん。うちのジュディちゃんを誘惑しないでくれますか!」
エレーナがわたしの前に立ちふさがると、隊長から守るように視線を遮ってくれた。
わたしを連れ出そうと試みるナグワ隊長は、途中、交渉相手をわたしからエレーナに変えた。
「俺が誘っているのは、やましいことではない。明日、第一部隊と同行してくれませんか? ――エレーナ頼む。ジュディさんを貸してくれ」
「ただじゃ貸せないわよ。ジュディちゃんはお金がなくて困っているんだから。ねッ」
エレーナが振り向いて、わたしを見たため、うんと頷く。
身一つで森にいたわたしだ。
欲しいものを挙げたらきりがない。
そのうえアンドレは、ひと月しか部屋を貸してくれないって言うんだもの。
部屋探しのためにも、お給金は使わず貯めておきたいし、正直なところ色々と困っている。
「礼はちゃんとするから、頼む!」
その言葉に誘惑され、エレーナの背中から、ひょこっと顔を出す。
そうすれば、ナグワ隊長が両手を合わせて拝んでいるではないか。
隊長がそこまでして、小娘に魔猪を探して欲しいのか、情けない。
「じゃあ、朝食が終わってからね」と、エレーナが勝手に話をまとめて、わたしへ笑顔を向ける。
「良かったねジュディちゃん。何でも買ってくれるらしいから、しっかり欲しいものを強請るんだよ」
「そんな、悪いですよ」
「隊長が一番お金を持っているんだから遠慮するんじゃないよ」
「別にわざわざ何かを買ってもらうのは、気が引けます」
「駄目よ。知識は十分に価値があるんだから、安売りするんじゃないの。何かを教えてあげるだけでも報酬は受け取らなきゃね」
母のような教えをエレーナから頂戴し、「はい」と従った。
さあ、雑談はこれまでにして仕事、仕事と気を取り直す。
すると、カウンターに身を乗り出してきたナグワ隊長が、真顔で不思議な質問をする。
「ところで、今日の夕食はジュディさんが作ってくれたんですか?」
だからどうした? と思ったものの、多少の見栄も必要だろう。
気取って答えた。
「大半の作業はエレーナさんがしているけど、もちろんわたしも手伝ったわよ」
赤裸々に申告するなら、包丁を取り上げられ、玉ねぎの皮を剥いただけである。
だけど、恥ずかしくて言えないし。
それを聞いたナグワ隊長が、ぐるんと振り向き食堂を見渡すと、大声を張り上げた。
「おい、お前ら! ジュディさんの作った食事を残したら、第一部隊降格だからな」
その途端。食堂中に「はい」と、どすの効いた返答が響く。
「ジュディさん! もし残したやつがいれば、俺に報告ください」
「はははっ。もしも……ですね」
いや。これは密告しちゃまずいやつでしょう。食事を残したくらいで降格させられたら、うらまれるわよ……わたしがッ!
ただでさえ、でかい声なのに脅すのはやめてよね。
なんなら、妙な緊張感を兵士たちに与えないでよ。
そのせいで喉が通らなくなっても、わたしのせいじゃないいわよ。たぶん。
その後。食堂に居座るナグワ隊長によって、当然ながら、夕食を残す隊員は一人としていなかった。
彼らが落ち着いて夕食を摂れたかは別問題だけど。
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