記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第2章 あなたは暗殺者⁉
気づかない二人①
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厩舎の前に着くと、わたしの到着に気づいた隊長が、にっこりと嬉しそうに笑い、「こっちこっち」と手招きする。
それに誘われるように歩みを進めるわたしは、アンドレの前を素通りして、ナグワ隊長に笑顔を返す。
「ジュディさん! 待ってましたよ」
「遅くなったわね」
「そんなことはないですよ。出発する準備は整っていますからすぐに出ますね。俺の馬に一緒に乗っていきましょう」
「ふふっ、馬くらい自分一人で乗れるわ」
「いや、そうだとしても、一緒にいた方が話もしやすいでしょう。ジュディさんの話も聞きたいし」
「わたしも隊長から、いろいろ教えてもらいたいわ」
「手取り足取り、何でも教えてあげますよ」
「助かるわ」と笑顔で返すと、知らないことに溢れるわたしにとって、願ってもない申し出に期待した。
何より、本日の目的である魔猪を見つけた時に動きやすいはずだ。
そう思ってナグワ隊長と共に、彼の愛馬へ向かおうとすれば、ガシッと手首を掴まれた。
その正体を見ると、ムッとした顔のアンドレだ。
眉根を寄せる彼は、コーヒーゼリーの件を引きずっているのだろう。そう感じるくらい、相変わらず不機嫌な顔をしている。
もう二度と彼のために余計なことはしない。
アンドレにそう誓った以上、むし返す気はさらさらない。
わたしとしては彼の話を聞きたくないが、一応、用件だけ訊ねてみた。
「どうしたの?」
「僕はジュディと仕事の話をしたいので、僕の馬に乗るといいですよ」
「どうせ話なんてないでしょう。あったとしても、戻ってきてからゆっくり話した方がいいんじゃないかしら」
「どちらにしても、ジュディが隊長の馬に乗るのは許可できません」
「どうしてよ?」
「ジュディは僕と同じく、ただの同行者でしょう」
「そうだけど、ナグワ隊長が一緒に乗ろうって勧めてくれているのよ。いいじゃない」
「隊の指揮をするナグワ隊長が、ジュディを乗せていては、何かあってもすぐに動けないでしょう。僕と一緒に行きますよ」
「ですって」と、ナグワ隊長を見つめる。
「まあ、確かにそうだな。ジュディさんはアンドレ殿と一緒に来てください」
顎を触りながら言った。
だとしても、わだかまりの残る彼とは、とてもじゃないが一緒に乗る気になれない。
「それなら一人でいいわよ。アンドレとは一緒に乗らないから」
「馬が魔猪に驚いて暴走すれば、土地勘のないジュディは道に迷ってしまいますよ。僕と一緒に行きましょう」
「嫌よ、それなら他の兵士と一緒に行くから」
「彼らの仕事の邪魔になるでしょう。さあ行きますよ」
と、半ば強引に誘うアンドレと同乗することになった。
アンドレは、わたしのゼリーは絶対に要らないと拒絶したくせに、わたしが他の兵士の馬に乗ると言えば、駄目だと譲らなかった。
彼の謎な行動……。
――これって、じらしというものなのか?
わたしの気を引こうとして、わざと冷たくしたり、そっけなくしたりしているのだろうか。わたしのことが好きなのか?
いいや、アンドレに限ってないな。間違いない。
何かと壁を作るアンドレの考えていることは、正直よくわからない。
だけど親から「捨てられた」と話していたから、何か、嫌な思い出でもあるんだろう。
そう考えて、手作りゼリーを拒絶されたことは、水に流しておいた。
――その方が気まずくないからと割り切って。
正直に言うと、朝食での出来事を一度考えだせば、立ち直れない。
今はそれに向き合える気がしないため、考えるのをやめた。
馬に揺られてしばし経過すると、畑が見えてきたため、アンドレに話しかけた。
「魔猪は昼間に活動するし。母親がいなくなった直後に、大きな動きはしてないでしょうね。結界の一番近くの畑にいるんじゃないかしら」
「そうですね。出国用ゲートの一番近くの畑は、もう少しで見えてきますよ」
ならばと、目を閉じる。
視界から入る雑念を消せば、小さな魔力の塊が二つ並んでいるのを感じた。
人の物とは違う魔力に、魔猪だと確信する。
魔猪の子どもといっても、魔力量から推測すると、すでに野生の猪くらいの大きさがありそうだ。
成体になれば、その何倍も体は大きくなり、逃げ回る彼らの足はすこぶる速い。
「やっぱり二頭の魔猪がいたわね。アンドレも感じる?」
「前方にいる兵士たちの魔力に阻まれて、はっきりとは感じないかな」
「右前方七百メートルの距離にいるわよ。想像よりも成体に近いから、ラッキーね」
「ラッキーですか⁉ 逃げ足が速くて面倒だと思いますが」
「だって、大きい方がいっぱい食べられるじゃない。畑の持ち主も、農作物を荒らされて困っているはずだしね。あの大きさなら、一頭渡せば納得してくれるでしょう」
「魔猪を民間人に渡すつもりだったんですか……。それは、また面倒なことを思いつきましたね――」
「アンドレが何と言おうと、絶対に渡してあげるわよ」
「それを決めるのは、ナグワ隊長であってジュディではありません」
「渡してあげないと、わたしの気が済まないわ。魔猪が身を潜めている場所の見当はついていたのに。昨日の夜は自分かわいさに、すぐに動かなかったんだから。悪いでしょう」
「それをジュディが気にする必要はないでしょう」
「いいの。これでもカステン辺境伯軍の一人だもの、気にするわよ」
「そうですか……。ジュディは不思議な人ですね。あなたとは、別の形で出会いたかったです」
「え? どういう意味⁉︎」
しみじみと告げられたアンドレの言葉。その意味が分からず、彼の顔を見ようと後ろを振り返る。
すると、話題を魔猪に戻された。
それに誘われるように歩みを進めるわたしは、アンドレの前を素通りして、ナグワ隊長に笑顔を返す。
「ジュディさん! 待ってましたよ」
「遅くなったわね」
「そんなことはないですよ。出発する準備は整っていますからすぐに出ますね。俺の馬に一緒に乗っていきましょう」
「ふふっ、馬くらい自分一人で乗れるわ」
「いや、そうだとしても、一緒にいた方が話もしやすいでしょう。ジュディさんの話も聞きたいし」
「わたしも隊長から、いろいろ教えてもらいたいわ」
「手取り足取り、何でも教えてあげますよ」
「助かるわ」と笑顔で返すと、知らないことに溢れるわたしにとって、願ってもない申し出に期待した。
何より、本日の目的である魔猪を見つけた時に動きやすいはずだ。
そう思ってナグワ隊長と共に、彼の愛馬へ向かおうとすれば、ガシッと手首を掴まれた。
その正体を見ると、ムッとした顔のアンドレだ。
眉根を寄せる彼は、コーヒーゼリーの件を引きずっているのだろう。そう感じるくらい、相変わらず不機嫌な顔をしている。
もう二度と彼のために余計なことはしない。
アンドレにそう誓った以上、むし返す気はさらさらない。
わたしとしては彼の話を聞きたくないが、一応、用件だけ訊ねてみた。
「どうしたの?」
「僕はジュディと仕事の話をしたいので、僕の馬に乗るといいですよ」
「どうせ話なんてないでしょう。あったとしても、戻ってきてからゆっくり話した方がいいんじゃないかしら」
「どちらにしても、ジュディが隊長の馬に乗るのは許可できません」
「どうしてよ?」
「ジュディは僕と同じく、ただの同行者でしょう」
「そうだけど、ナグワ隊長が一緒に乗ろうって勧めてくれているのよ。いいじゃない」
「隊の指揮をするナグワ隊長が、ジュディを乗せていては、何かあってもすぐに動けないでしょう。僕と一緒に行きますよ」
「ですって」と、ナグワ隊長を見つめる。
「まあ、確かにそうだな。ジュディさんはアンドレ殿と一緒に来てください」
顎を触りながら言った。
だとしても、わだかまりの残る彼とは、とてもじゃないが一緒に乗る気になれない。
「それなら一人でいいわよ。アンドレとは一緒に乗らないから」
「馬が魔猪に驚いて暴走すれば、土地勘のないジュディは道に迷ってしまいますよ。僕と一緒に行きましょう」
「嫌よ、それなら他の兵士と一緒に行くから」
「彼らの仕事の邪魔になるでしょう。さあ行きますよ」
と、半ば強引に誘うアンドレと同乗することになった。
アンドレは、わたしのゼリーは絶対に要らないと拒絶したくせに、わたしが他の兵士の馬に乗ると言えば、駄目だと譲らなかった。
彼の謎な行動……。
――これって、じらしというものなのか?
わたしの気を引こうとして、わざと冷たくしたり、そっけなくしたりしているのだろうか。わたしのことが好きなのか?
いいや、アンドレに限ってないな。間違いない。
何かと壁を作るアンドレの考えていることは、正直よくわからない。
だけど親から「捨てられた」と話していたから、何か、嫌な思い出でもあるんだろう。
そう考えて、手作りゼリーを拒絶されたことは、水に流しておいた。
――その方が気まずくないからと割り切って。
正直に言うと、朝食での出来事を一度考えだせば、立ち直れない。
今はそれに向き合える気がしないため、考えるのをやめた。
馬に揺られてしばし経過すると、畑が見えてきたため、アンドレに話しかけた。
「魔猪は昼間に活動するし。母親がいなくなった直後に、大きな動きはしてないでしょうね。結界の一番近くの畑にいるんじゃないかしら」
「そうですね。出国用ゲートの一番近くの畑は、もう少しで見えてきますよ」
ならばと、目を閉じる。
視界から入る雑念を消せば、小さな魔力の塊が二つ並んでいるのを感じた。
人の物とは違う魔力に、魔猪だと確信する。
魔猪の子どもといっても、魔力量から推測すると、すでに野生の猪くらいの大きさがありそうだ。
成体になれば、その何倍も体は大きくなり、逃げ回る彼らの足はすこぶる速い。
「やっぱり二頭の魔猪がいたわね。アンドレも感じる?」
「前方にいる兵士たちの魔力に阻まれて、はっきりとは感じないかな」
「右前方七百メートルの距離にいるわよ。想像よりも成体に近いから、ラッキーね」
「ラッキーですか⁉ 逃げ足が速くて面倒だと思いますが」
「だって、大きい方がいっぱい食べられるじゃない。畑の持ち主も、農作物を荒らされて困っているはずだしね。あの大きさなら、一頭渡せば納得してくれるでしょう」
「魔猪を民間人に渡すつもりだったんですか……。それは、また面倒なことを思いつきましたね――」
「アンドレが何と言おうと、絶対に渡してあげるわよ」
「それを決めるのは、ナグワ隊長であってジュディではありません」
「渡してあげないと、わたしの気が済まないわ。魔猪が身を潜めている場所の見当はついていたのに。昨日の夜は自分かわいさに、すぐに動かなかったんだから。悪いでしょう」
「それをジュディが気にする必要はないでしょう」
「いいの。これでもカステン辺境伯軍の一人だもの、気にするわよ」
「そうですか……。ジュディは不思議な人ですね。あなたとは、別の形で出会いたかったです」
「え? どういう意味⁉︎」
しみじみと告げられたアンドレの言葉。その意味が分からず、彼の顔を見ようと後ろを振り返る。
すると、話題を魔猪に戻された。
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