記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第2章 あなたは暗殺者⁉
わたしを嫌うあなたには、打ち明けられない不安
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◇◇◇SIDEジュディ
確か屋上にいたはずだが、ここはどこだろう。
わたしには少し高い枕の感覚からすると、強引に転がり込んだ部屋のベッドの中ってところか――。
それなら目を開いても問題はないかと考えたのだが、近くに人がいる気配を感じる。
その人物は、アンドレではない男の人のように思える。
このまま起き上がってよいものかと悩むわたしは、その前にひとしきり考え抜くことにした。
屋上でシーツの洗濯をしてもらおうと、準備しているときだった。
何か不吉な者に、自分を乗っ取られるような感覚が襲いかかってきた。
――あれは一体何だったんだろう。
自分の体の中から禍々しい気配を感じ、全力で抵抗したはずだ。
どうしてそんな現象が起きたのか分からないが、気を抜いては絶対に駄目だと、自分の中の何かが騒いだ。
頭が割れるように痛い中、その不吉な気配にあらがい続けた。
まあ、それがうまくいったのかどうかは分からない。
だけど、こうして知らぬ間に自分の布団で寝ているところをみると、そのまま気を失ったのだろう。
あのときの自分は、アンドレが来るのを待っていたのだから、ここまで運んでくれたのは、彼だと思う。
もうすっかり元気になったことだし、彼にお礼を言いに行くかと、起き上がる決意を固めパチリと目を開く。
「おっ。目が覚めたか!」
ボリュームの大きな声が耳に刺さる。その存在に「なるほどな」と頷いた。ここにいてもおかしくない人物だと分かり、そのまま体を起こす。
彼を注意深く見ているが、彼の方も、わたしをじぃーっと見つめている。
アンドレの言っていたとおり、本当に部屋に入ってくるんだと内心焦る。
布団に隠れてポケットをまさぐるわたしは、手籠めにされないかと心が激しく波打ち、身の危険を案じる。
密かに探してみたガラス玉は、残念ながらなかった。何かあれば逃げるしかないと思いながら、慎重に言葉を選ぶ。
「カステン辺境伯はどうしてこちらに?」
「意識が早く戻って良かったな」
「わたしのことを気にして、傍にいてくれたんですか?」
「まあな。この地に侵入した魔猪を退治してくれた恩があるからな。それに関しては感謝している。だが、俺が気にしているのは、お宅じゃなくてアンドレの方だけどな」
「アンドレがどうかしたんですか?」
「名前はジュディだったよな。お宅はアンドレのことをどう思っている? 好きなのか?」
目が覚めて突然、一体何を言いたいんだろうこの人は、と思いながら返答に困る。
好きかどうかを問われても分からない。一緒にいたいと思う理由は多分違う。
そんな風に抱いた感情のせいで、怪訝な顔を彼に向けてしまったのだろう。
カステン辺境伯は、わたしの返事を待たずして話を続けた。
「良かった。ジュディがアンドレを好きだと言い出したらどうしようかと思っていたが、そうじゃなくて助かったよ」
「彼に好きな人がいるからですか?」
「ああ、知っていたのか。そうだよ。だからアンドレには興味を持つなよ」
「別に興味なんて……」
「アンドレは、お宅に早く去って欲しいと思っているのに、優しいから強く言えないんだろう。俺からの頼みだ。早くここから出ていってくれ、迷惑だ」
怒気混じりに告げられた。
彼の近くにいると、自分を取り戻せる気がしてならないのだが、それは自分の都合でしかない。
距離をおけと釘を刺された以上、諦めるしかないのか。
そう考えた瞬間、ザワザワと心が騒ぐ。
――駄目だ。彼の近くにいることを諦めてはいけない。
「アンドレは身分証を持っていないと言っていましたけど、その方と結婚する気なんですか?」
「アンドレはそういう形にこだわらないからな。結婚はしないだろうさ。だけどあいつ、身分証がないわけじゃない。この場所に置いていないだけだ。ジュディは聞いていて知ってんじゃないのか?」
アンドレから当然聞いているだろうという口ぶりだが、彼からは、身分証がないと聞かされているだけだ。
だからといって、彼が話したがらないことに踏み込む気はないし。
とりあえず。出ていけと言うカステン辺境伯へ、当たり障りのない返答をするのが無難だろう。
「分かりました。アパートを探すのは、真剣に考えておきます」
「助かった。じゃあ、さっさと出ていけよ。アンドレがお宅を気味悪いって嫌がっているんだからな」
と言い捨てれば、カステン辺境伯は静かに部屋を後にした。
彼の歩く足音が徐々に遠ざかっていくのを確認して、はぁ~ぁと、大きくため息をついた。
アンドレがわたしのゼリーを拒んだ理由が分かった気がする。
彼が喜んでくれたら、調子に乗ってまた作っていただろうし、気味の悪いわたしから何かされても困るだけ。
確かに自分でも思う。やけに魔物のことばかり詳しくて気味が悪い。
今さらだが、冷たく突き返されたと、気にしている場合ではなかったようだ。
今日は随分と虫の居所が悪い彼だが、なんだかんだと優しい人だから、冷たく放っておけなかったのだろう。
できることなら彼とずっと一緒にいたい。
込み上げてくる何かがそう告げるけど、やはり無理なのか。
屋上での異変。何かの前兆なのだろうか……酷く心が騒ぐ。
――わたしの中で何かが起きている。
今日起きた不思議な出来事をアンドレに相談したいなと考えたけれど、駄目だ。
わたしの存在に困惑している彼にこれ以上迷惑はかけられないし、止めておくか。それが無難な気がする。
確か屋上にいたはずだが、ここはどこだろう。
わたしには少し高い枕の感覚からすると、強引に転がり込んだ部屋のベッドの中ってところか――。
それなら目を開いても問題はないかと考えたのだが、近くに人がいる気配を感じる。
その人物は、アンドレではない男の人のように思える。
このまま起き上がってよいものかと悩むわたしは、その前にひとしきり考え抜くことにした。
屋上でシーツの洗濯をしてもらおうと、準備しているときだった。
何か不吉な者に、自分を乗っ取られるような感覚が襲いかかってきた。
――あれは一体何だったんだろう。
自分の体の中から禍々しい気配を感じ、全力で抵抗したはずだ。
どうしてそんな現象が起きたのか分からないが、気を抜いては絶対に駄目だと、自分の中の何かが騒いだ。
頭が割れるように痛い中、その不吉な気配にあらがい続けた。
まあ、それがうまくいったのかどうかは分からない。
だけど、こうして知らぬ間に自分の布団で寝ているところをみると、そのまま気を失ったのだろう。
あのときの自分は、アンドレが来るのを待っていたのだから、ここまで運んでくれたのは、彼だと思う。
もうすっかり元気になったことだし、彼にお礼を言いに行くかと、起き上がる決意を固めパチリと目を開く。
「おっ。目が覚めたか!」
ボリュームの大きな声が耳に刺さる。その存在に「なるほどな」と頷いた。ここにいてもおかしくない人物だと分かり、そのまま体を起こす。
彼を注意深く見ているが、彼の方も、わたしをじぃーっと見つめている。
アンドレの言っていたとおり、本当に部屋に入ってくるんだと内心焦る。
布団に隠れてポケットをまさぐるわたしは、手籠めにされないかと心が激しく波打ち、身の危険を案じる。
密かに探してみたガラス玉は、残念ながらなかった。何かあれば逃げるしかないと思いながら、慎重に言葉を選ぶ。
「カステン辺境伯はどうしてこちらに?」
「意識が早く戻って良かったな」
「わたしのことを気にして、傍にいてくれたんですか?」
「まあな。この地に侵入した魔猪を退治してくれた恩があるからな。それに関しては感謝している。だが、俺が気にしているのは、お宅じゃなくてアンドレの方だけどな」
「アンドレがどうかしたんですか?」
「名前はジュディだったよな。お宅はアンドレのことをどう思っている? 好きなのか?」
目が覚めて突然、一体何を言いたいんだろうこの人は、と思いながら返答に困る。
好きかどうかを問われても分からない。一緒にいたいと思う理由は多分違う。
そんな風に抱いた感情のせいで、怪訝な顔を彼に向けてしまったのだろう。
カステン辺境伯は、わたしの返事を待たずして話を続けた。
「良かった。ジュディがアンドレを好きだと言い出したらどうしようかと思っていたが、そうじゃなくて助かったよ」
「彼に好きな人がいるからですか?」
「ああ、知っていたのか。そうだよ。だからアンドレには興味を持つなよ」
「別に興味なんて……」
「アンドレは、お宅に早く去って欲しいと思っているのに、優しいから強く言えないんだろう。俺からの頼みだ。早くここから出ていってくれ、迷惑だ」
怒気混じりに告げられた。
彼の近くにいると、自分を取り戻せる気がしてならないのだが、それは自分の都合でしかない。
距離をおけと釘を刺された以上、諦めるしかないのか。
そう考えた瞬間、ザワザワと心が騒ぐ。
――駄目だ。彼の近くにいることを諦めてはいけない。
「アンドレは身分証を持っていないと言っていましたけど、その方と結婚する気なんですか?」
「アンドレはそういう形にこだわらないからな。結婚はしないだろうさ。だけどあいつ、身分証がないわけじゃない。この場所に置いていないだけだ。ジュディは聞いていて知ってんじゃないのか?」
アンドレから当然聞いているだろうという口ぶりだが、彼からは、身分証がないと聞かされているだけだ。
だからといって、彼が話したがらないことに踏み込む気はないし。
とりあえず。出ていけと言うカステン辺境伯へ、当たり障りのない返答をするのが無難だろう。
「分かりました。アパートを探すのは、真剣に考えておきます」
「助かった。じゃあ、さっさと出ていけよ。アンドレがお宅を気味悪いって嫌がっているんだからな」
と言い捨てれば、カステン辺境伯は静かに部屋を後にした。
彼の歩く足音が徐々に遠ざかっていくのを確認して、はぁ~ぁと、大きくため息をついた。
アンドレがわたしのゼリーを拒んだ理由が分かった気がする。
彼が喜んでくれたら、調子に乗ってまた作っていただろうし、気味の悪いわたしから何かされても困るだけ。
確かに自分でも思う。やけに魔物のことばかり詳しくて気味が悪い。
今さらだが、冷たく突き返されたと、気にしている場合ではなかったようだ。
今日は随分と虫の居所が悪い彼だが、なんだかんだと優しい人だから、冷たく放っておけなかったのだろう。
できることなら彼とずっと一緒にいたい。
込み上げてくる何かがそう告げるけど、やはり無理なのか。
屋上での異変。何かの前兆なのだろうか……酷く心が騒ぐ。
――わたしの中で何かが起きている。
今日起きた不思議な出来事をアンドレに相談したいなと考えたけれど、駄目だ。
わたしの存在に困惑している彼にこれ以上迷惑はかけられないし、止めておくか。それが無難な気がする。
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