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第2章 あなたは暗殺者⁉

崩壊の予感①(フィリベール)

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◇◇◇SIDEフィリベール

 宗教信仰の強いルダイラ王国。その中でも特に信者が多いのがカトリック教徒である。
 その中枢となる中央教会は、王政と並ぶほど権力を有し、見くびることはできない。

 本来、王室とは別の組織にもかかわらず、聖女が王族であるが故、陛下と中央教会は必要以上に結びつきが強い。

 大司教のガラス玉に至っては、大司教の主張のまま、陛下は法律まで制定したのだ。

 正直なところ、私はそれに納得していない。

 ボンボンと生産できる魔力の結晶に、不要な付加価値を付け、中央教会の支配を強めつつあるのだから。自身が王位に就けば見直すつもりだ。

 その中央教会へ馬車で向かう途中。げんなりする感情から、はぁ~あと深いため息が溢れた。

 ジュディットを追い出した後になって、次から次へと明るみに出る不愉快な事象の数々。
 婚約者がこなしていた膨大な政務に、結界に、黒魔術を実行した犯人。挙げ句の果てに、何も知らずに禊ぎの儀まで交わしたーー……。ああぁぁあ~うんざりだ。

 何がどうなっているのかと混迷をきたし、頭をくらくらさせながら中央教会へ到着した。

 教会の裏手から関係者用通路を突き進むと、なぜかそこには、王宮の騎士団の姿がある。

 は? 私に泉の魔物退治を押し付けておきながら何をしているのかと、眉をひそめる。

 顔ぶれからすると第二部隊だろう。
 だが、ジュディットと恋愛関係にあると聞きかじった、シモンという名の隊長の姿は見当たらない。

 騎士らと目が合う。そうすれば彼らも私を認識し、ハッとした顔を浮かべる。にもかかわらず敬礼一つしないため、やつらへのいらだちが増す。

「おい、お前たちは魔物の討伐に向かったのではないのか? ここで何をしている」

「お、王太子殿下! 殿下こそ泉を任されたはずでは⁉」

「それは別の者に頼んだ。私はお前らに、とやかく言われる立場にない。質問にさっさと答えろ!」

「はい。申し訳ありませんでした。我々は陛下の命令で聖女リナ様が祈祷室から出てこないように見張っております」

「ハァッ⁉ 何をふざけたことをしている。リナは私の婚約者だ! すぐに開放せよ。これは私の命令だ!」

「なりません。一度この部屋から出してしまえば、どこへ逃げ出すか分からないと、陛下から厳命が出ております」

 騎士二人がかりで私の前に立ちふさがり、行く手を阻む。

 王太子に向かい、なんと無礼なやつらだと叱責しようとした矢先。横から大司教が声をかけてきた。

 自分から姿を見せてくれるとは話が早い。喜ばしい状況に口角を上げる。

「王太子殿下。この場で大きな声を出すのはお止めください。不安を感じる国民が、ただでさえ救いを求めて教会に来ているんですから。殿下の声が国民の不安をあおりますぞ」

「リナが拘束されていると知り、大人しく引き下がれるわけないだろう」

「あの聖女を祈祷室から出したところで、人前に出られる姿はしておりませんぞ。今まで、偽装魔法を使って誤魔化していたんでしょうが、魔力が枯渇していてはそれもできませんからな」

「それは……」
「明朝、回復した魔力を無駄な偽装魔法に使って欲しくはありませんからね。それくらいならせめて、祈祷室に留め置く方が、国民のためになると国王陛下が判断されたのですぞ」

 言わんとしていることは理解できるが、問題はもう一つある。
 そこを解決しなければ、私が動くに動けない。

「それでは王宮に発生した瘴気だまりはどうするつもりだ!」

「それは王太子殿下の責任でしょう。黒魔術を使っていた者を聖なる泉に入れたのは、ご自身なんですから。どうにかしてください。黒魔術が瘴気の原因になるからこそ、禁術として違法にしているのはご存じでしょう。そんな人物を泉に入れるなんて、どうかしていますぞ!」

「煩いッ! いいからガラス玉を寄越せ! リナを連れていき、泉を浄化させる」

「無理です。昨日、最後の一つをリナ殿にお渡ししましたから。きつく忠告したのに一日で使い終わりよって。それだって殿下へ会いに行くために偽装魔法を使ったせいでしょう」

「はぁ⁉︎ 最後の一個とはどういう意味だ! あのガラス玉を作っているのは大司教自身だろう!」

「殿下……。あなたの婚約者様だったのに、そんなこともご存じなかったのですね」

 哀れみの視線を向けられた。
 いくらなんでも侮辱しすぎだ。不愉快極まりないとカッとする。
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