記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第3章 わたしを捨てたのはあなた⁉
ワケあり王子の不器用な決断②
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「どうでしょうか?」
「うわぁブランデー紅茶ね、とてもおいしいわよ。以前、どこかでいただいた気がするけど、どこで飲んだか分からないわ」
紅茶にブランデーを加え、ロマンティックな香りがする。 口に含むと気持ちが落ち着くため、眠る前にはちょうどいい。だから選んでくれたのだろう。
「気に入ってくれて良かったです」
「アンドレって苦手なことがあるのかしら? あなたが何でも卒なくこなすから、できないことで溢れる自分が恥ずかしく思えるわ」
「それはもちろんありますよ、隠しているだけで。まあ、ジュディは全部見せてくれるから、分かりやすいですが」
「わたしだって常々隠したいと思っているけど、たまたまアンドレに見つかっているだけよ。何でもできるアンドレが羨ましいわ」
そう伝えると彼は、穏やかな笑顔を浮かべている。
魔力計測器の針が一番上まで跳ね上がる魔力を上手く使いこなすのは、なかなかできることではない。
それに引き換え魔力なしで、調理もイマイチ、洗濯も碌にできない身としては、肩身が狭く、羨んでしまう。
「そう見せているだけですよ。僕は自分に素直なジュディが羨ましいけどね」
「嘘ばっかり。どこがいいのよ。ただ単に。わたしが、ないない尽くしのオンパレードだから、知らないだの、欲しいだの、騒いでいるだけでしょう。それは素直って言わないのよ」
「ジュディを元気づけようと言葉を選んだつもりですが、自分で否定するんですね。じゃあ、我が儘ってことにしておきますか。くくっ」
「あのねぇ、我が儘ってどういうことよ……酷いわね」
「他にピッタリの言葉が見つからないでしょう」
アンドレがくつくつくと笑っている。
その顔を見て、ふと思いつく。
少しの根拠もないが、アンドレにあの栞を送った令嬢に近づけば、漠然と何かを思い出せる気がしたのだ。
「ねぇねぇ、アンドレにあの栞をくれた方は、どのような女性なの? わたしも見習おうかしら」
「ふふっ、凄く謙虚で優しくて、常に誰かのことを考えている方ですよ」
「は? それって、わたしとは一番遠いタイプじゃない!」
「そうでしょうか?」
「だって、感情にずかずか入り込む図々しい性格だもの、見習える気がしないわよ」
わたしには相当な背伸びを要する話であり、遠い目をして、アンドレに返す。
するとアンドレが声に出して笑っており、そうだと肯定されている気分になった。
「それって遠回しに。いいえ、直接的にわたしには無理だと、アンドレも認めているじゃない」
「ふふっ、まさか」と、またしても彼が笑っている。
何だかなぁ~。
本当に嫌われているなぁと、虚しくなったところで、カステン辺境伯の話を思い出し、いよいよその話題を切り出す。
彼は内心私を気味悪いと感じているのだ。そんな事実に少し気落ちしているせいか、躊躇いもない。
……お互いにとって大事な話だ。それまで楽し気に話していた雰囲気をがらりと変え、真顔になる。
「大丈夫よ安心して。わたし、近いうちに部屋を探して出ていくから」
「えっ」と言うアンドレからも、笑顔が消え失せる。
彼のことだ。てっきり「良かった」と、言い返してくると思ったのだが、そのまま固まっている。
それを見て思う。
見ず知らずの人間を森から拾ってくるような、心優しい彼のことだ。わたしを追い出すのに成功しても、手放しで喜ぶ姿を見せない気遣いだろう。
けれど勝手に転がり込み、悪いのはわたしだ。アンドレが案ずる必要はないと伝えたくて、優しく微笑み言葉を付け足した。
「アンドレに迷惑をかけてばかりじゃいけないからね」
「それは本気で言っているんですか! 昨日の朝までは、出て行きたくないって、ごねていたのに、どうして急に変わったんですか! ナグワ隊長ですか!」
彼が突如として、動揺したように焦っている。
アンドレの感情の起伏が激しくて、何だって難しい。ついていけないわねと思い、困った顔を向ける。
「どうしたのよ。アンドレが出て行きなさいって言うから、大人しく従っているだけでしょう」
「そうですが……」
彼は抜け殻のように、中身のない口調で答えた。
「早々に不動産屋へアパートを探しに行くわ」
「待ってジュディ……。僕と一緒に暮らしてくれませんか? 僕がここに残ったままだと、イヴァン卿に迷惑をかけるので、できれば違う土地へ移って」
「え?」
怖いくらい真剣な顔をする彼が、予期せぬ言葉を口にする。
その申し出が、わたしにとっては心嬉しいというよりも、面食らうだけだ。
わたしが彼のために作った、たかだかコーヒーゼリーでさえ、迷惑だから要らないと言い張ったのは、アンドレである。
それなのにカステン軍を離れ、彼はわたしと二人きりで、何がしたいというのだろう。
アンドレの申し出の意味が、これっぽっちも分からないため、困惑を返す以上の言葉が見つからなかった。
「うわぁブランデー紅茶ね、とてもおいしいわよ。以前、どこかでいただいた気がするけど、どこで飲んだか分からないわ」
紅茶にブランデーを加え、ロマンティックな香りがする。 口に含むと気持ちが落ち着くため、眠る前にはちょうどいい。だから選んでくれたのだろう。
「気に入ってくれて良かったです」
「アンドレって苦手なことがあるのかしら? あなたが何でも卒なくこなすから、できないことで溢れる自分が恥ずかしく思えるわ」
「それはもちろんありますよ、隠しているだけで。まあ、ジュディは全部見せてくれるから、分かりやすいですが」
「わたしだって常々隠したいと思っているけど、たまたまアンドレに見つかっているだけよ。何でもできるアンドレが羨ましいわ」
そう伝えると彼は、穏やかな笑顔を浮かべている。
魔力計測器の針が一番上まで跳ね上がる魔力を上手く使いこなすのは、なかなかできることではない。
それに引き換え魔力なしで、調理もイマイチ、洗濯も碌にできない身としては、肩身が狭く、羨んでしまう。
「そう見せているだけですよ。僕は自分に素直なジュディが羨ましいけどね」
「嘘ばっかり。どこがいいのよ。ただ単に。わたしが、ないない尽くしのオンパレードだから、知らないだの、欲しいだの、騒いでいるだけでしょう。それは素直って言わないのよ」
「ジュディを元気づけようと言葉を選んだつもりですが、自分で否定するんですね。じゃあ、我が儘ってことにしておきますか。くくっ」
「あのねぇ、我が儘ってどういうことよ……酷いわね」
「他にピッタリの言葉が見つからないでしょう」
アンドレがくつくつくと笑っている。
その顔を見て、ふと思いつく。
少しの根拠もないが、アンドレにあの栞を送った令嬢に近づけば、漠然と何かを思い出せる気がしたのだ。
「ねぇねぇ、アンドレにあの栞をくれた方は、どのような女性なの? わたしも見習おうかしら」
「ふふっ、凄く謙虚で優しくて、常に誰かのことを考えている方ですよ」
「は? それって、わたしとは一番遠いタイプじゃない!」
「そうでしょうか?」
「だって、感情にずかずか入り込む図々しい性格だもの、見習える気がしないわよ」
わたしには相当な背伸びを要する話であり、遠い目をして、アンドレに返す。
するとアンドレが声に出して笑っており、そうだと肯定されている気分になった。
「それって遠回しに。いいえ、直接的にわたしには無理だと、アンドレも認めているじゃない」
「ふふっ、まさか」と、またしても彼が笑っている。
何だかなぁ~。
本当に嫌われているなぁと、虚しくなったところで、カステン辺境伯の話を思い出し、いよいよその話題を切り出す。
彼は内心私を気味悪いと感じているのだ。そんな事実に少し気落ちしているせいか、躊躇いもない。
……お互いにとって大事な話だ。それまで楽し気に話していた雰囲気をがらりと変え、真顔になる。
「大丈夫よ安心して。わたし、近いうちに部屋を探して出ていくから」
「えっ」と言うアンドレからも、笑顔が消え失せる。
彼のことだ。てっきり「良かった」と、言い返してくると思ったのだが、そのまま固まっている。
それを見て思う。
見ず知らずの人間を森から拾ってくるような、心優しい彼のことだ。わたしを追い出すのに成功しても、手放しで喜ぶ姿を見せない気遣いだろう。
けれど勝手に転がり込み、悪いのはわたしだ。アンドレが案ずる必要はないと伝えたくて、優しく微笑み言葉を付け足した。
「アンドレに迷惑をかけてばかりじゃいけないからね」
「それは本気で言っているんですか! 昨日の朝までは、出て行きたくないって、ごねていたのに、どうして急に変わったんですか! ナグワ隊長ですか!」
彼が突如として、動揺したように焦っている。
アンドレの感情の起伏が激しくて、何だって難しい。ついていけないわねと思い、困った顔を向ける。
「どうしたのよ。アンドレが出て行きなさいって言うから、大人しく従っているだけでしょう」
「そうですが……」
彼は抜け殻のように、中身のない口調で答えた。
「早々に不動産屋へアパートを探しに行くわ」
「待ってジュディ……。僕と一緒に暮らしてくれませんか? 僕がここに残ったままだと、イヴァン卿に迷惑をかけるので、できれば違う土地へ移って」
「え?」
怖いくらい真剣な顔をする彼が、予期せぬ言葉を口にする。
その申し出が、わたしにとっては心嬉しいというよりも、面食らうだけだ。
わたしが彼のために作った、たかだかコーヒーゼリーでさえ、迷惑だから要らないと言い張ったのは、アンドレである。
それなのにカステン軍を離れ、彼はわたしと二人きりで、何がしたいというのだろう。
アンドレの申し出の意味が、これっぽっちも分からないため、困惑を返す以上の言葉が見つからなかった。
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