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第3章 わたしを捨てたのはあなた⁉

あなたは……わたしを捨てた人③

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「やっぱりすぐに答えは出せそうにないわ、アンドレの言っていることが、正直なところよく分からないし。そんなアンドレと新天地で暮らすのは、ちょっと無理があるわよ……」

「そうですか。まあ焦る必要はないから、じっくり考えてください。だけど、僕にとっても都合がいいので、傍にいて欲しいのは間違いないから」

「アンドレがわたしのことを、好きか分からないって言っている時点で、結局わたしを好きじゃないのよ。そんなんで、二人で暮らしても、本当にいいのかしら?」

「好きじゃない……そうかもしれないけど、ジュディだって僕のことが好きなんですか?」

「そう聞かれたら、別に好きとは違うわね」

「ジュディだって、僕を好きじゃないけど一緒にいようとしていたでしょう。それと同じじゃないかな」

「確かにそのとおりだけど……」

 自分にも自分の考えていることが、よく分からない。だから困っている。
 無意識に働く感情が、アンドレといる必要があると告げる。ただそれだけ。

 けれどこうして彼も同じ感情だと言われれば、納得したような、しないような気になり、好きだの恋だの考える価値は、ないように思えた。

 アンドレと二人で、家族ごっこのようなものか。
 まあね。ちょっと気がかりはあるけれど、他に行く当てもないし、それもいいかも知れない。

「二人でここから去ったら、カステン辺境伯が怒らないかしら」
 アンドレの兄のように振る舞う辺境伯は、どう思うのだろう。
 わたしを毛嫌うカステン辺境伯に、わたしだけ、こっぴどく怒られそうだ。

「それは僕から説明しておくので、ジュディが考えなくても問題はないですよ」

「分かったわ。この話はまたの機会にするわね」

「はい。できるだけ色よい返答を期待しています。あっ、そうだ。今日はジュディの歓迎会でしたね」

 こちらからその話題を振ろうと考えていたところ、アンドレから先に振られた。
 そんなところは随分と気が合うなと感心する。

「そうそうそれで、靴屋に行った帰りに、バーべキューの材料を買いに行く予定なのよ。アンドレも荷物持ちをお願いね。魔猪だけじゃ足りないから、お肉と、お肉と、お肉を買ってきましょう」

「ふふっ、お肉ばっかりですね。他にも必要な食材はあるでしょう」

「だって、外で食べるバーベキューで、肉以外食べた記憶がないわよ。他には何を焼くのかしら?」

 焚火を囲んで何かを食べていた気がするけど、どこで、誰と過ごしていたんだろう。

「さあぁ~、僕はそんな経験がないから分からないですね。兵士の感覚に近いジュディがそう言うなら、肉だけでいいんじゃないですか? 兵士より勇ましいですし。くく」

「乙女に向かって失礼しちゃうわね! 体を動かした後は肉に限るのよ」

「ははっ、今までこの寄宿舎で一番偉そうにしていた方も、以前、同じようなことを言っていたけどね」

「一体誰と比べているのよ……」

「その方と馬車で待ち合わせをしているんでしょう。さあ、そろそろ行きますか」
 既に食事を終えていたアンドレが時計を見ると、ガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。

 それに合わせるようにわたしも動き出す。

「わたしは食器を洗ってから外に出るから、先に馬車に向かってくれる」

「ええ。じゃあ僕は、事務所のエントランスにかけてあるジュディの外套を持ってきますね」

 優しい笑顔を見せるアンドレが、わたしとは反対側へ歩き、食堂を後にした。
 二人分の食器を洗うくらい、そんなに時間もかからない。彼のすぐ後を追うようにわたしも馬車へと向かった。

◇◇◇

 軍の馬車は、建物の裏手に位置する。

 宿舎から出て、そこへ向かおうとしたのだが、既に馬車の傍にいると思っていたアンドレの背中が、すぐ近くに見える。

 何をやっているんだろうと思いながら、彼にゆっくりと近づく。

 アンドレの話声が聞こえ、彼は独りでないことが分かる。どうやら彼と向き合うように立つ男性がいたようだ。

 彼の手に外套がないところをみると、アンドレは寄宿舎を出てからずっと、中年男性と話し込んでいたのだろう。

 ん~、誰かな。客人だろうか? 商人には見えないし、誰かの父親という感じかしら。
 と、思いつつもアンドレの空気がピリついている。あまり歓迎すべき客人ではない気配を感じ、耳をそばだてる。

「何度言われましても、探している人物の名前も伝えてくれない方に、こちらとしては対応致しかねますので、お引き取りください」

 強めの口調でピシャリと言ったのが聞こえ、彼の背中側から声をかけた。

「どうかしたの?」
「ジュディ……随分と早かったね」

 振り向いた彼が、困惑気味に呟いた。
 まあねと言おうと思った矢先、アンドレの目の前にいる中年男性が大きな声を上げた。

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