記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第5章 離さない
離さない②(アンドレ&フィリベール)
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王宮までの道中、シモンが声をかけてきた。
「ジュディット様が無事だったのに、随分と浮かない顔をされていますが、何かあったんですか?」
「顔に出てますか?」
「ええ。先ほどの休憩でも、何も召し上がっておりませんでしたし」
「極力顔に出さないようにしていたんですけどね。ははっ、ジュディから何度も大っ嫌いだと叫ばれてしまい、正直へこんでます。あ~、でも何も口にしてないのは気にしないでください。彼女が起きるのを待っているので、そうしているだけですから」
「ふふっ、本当にアンフレッド殿下とジュディット様は仲がよろしいのですね。ジュディット様がそんなことを言うなんて」
短髪の穏やかな青年が、笑って言ったが、予期せぬ反応に思わず聞き返す。
「え? 大っ嫌いですよ」
「ええ。好きや嫌いだと、ご自分の感情を口にされているのは、基本、食べ物のことしかありませんから」
「言われてみれば、しょっちゅう肉の話をしてますね」
「ジュディット様は、肉で釣れば大概のことは、なんとかなりますので助かります」
「それは、ジュディらしいですね」
「それなのに、王太子とは、ほとんど会話をしたことがないくらい、無関心でしたから。昔に殿下と何かあったのでしょうが、そういう話は絶対に隠されるので誰も分かりませんが」
「あ~、なんとなく、分かる気がします」
右肩の魔法契約のことだろうと想像を巡らす。
「結婚が近くなってから、殿下に興味を持とうと試行錯誤しているようでしたが、色恋にはてんで無頓着でしたから」
「そうですか。少しだけ希望が持てました」
気持ちよさげに夢を見ているジュディの顔を覗き込む。
目を覚ましたら、僕の元から逃げ出そうとするだろうが、僕の家で暮らしたいと言ったのはジュディですからね。もう逃がしませんよ。
◇◇◇SIDEフィリベール王太子
誰かが私の頬をパシパシと叩いている。
王太子の顔に触れるなど、どこの無礼者だッ。それに気づいた瞬間。頭に血が昇り、カッと目を見開く。
「オッ! 起きたか!」
「お前は誰だ。どこかで見た気がするな」
「ええ、カステン辺境伯領を治めている当主ですので、何度もご挨拶した記憶がこちらにもあります」
「辺境伯が何故に私を拘束している。このロープを解け」
「無理だな」と、自信満々な辺境伯に鼻で笑われた。
眼球をそろりと動かし周囲を確認する。ドゥメリー公爵が用意した馬車が横転して道を塞いでいる。
どうやらジュディットを落とした山道に戻ってきたようだ。
思い出した。畜生ッ!
あの女が突然、竜巻を起こしたんだった。ジュディットが魔法を使うとは思わず、すっかり油断した。
やってくれたなあの女。こちらが下手に出ていたのに何をしてくれたんだ。記憶を奪っても可愛げのない女だな、あいつは。
私の横には、まだ気を失い仰向けで横たわるドゥメリー公爵がいる。
内心チッと舌打ちをする。
この男がへまをしたのだろう。ジュディットを説得するのが面倒になり、半ば強引に攫ってきたのか。それを見られ、兵士たちが後を追いかけてきたとはな――。
何から何までどんくさい男だと、しかめ面を向ける。
「辺境伯! お前は私が誰か分かって拘束しているのか? 知らないのなら見逃してやろう。だが今すぐ拘束を解かなければ、王宮の牢へぶち込むぞ」
「もちろん知っていますよ王太子殿下。その髪と瞳を見て分からないはずがないでしょう。牢にぶち込まれるのはそちらですし」
「貴様! 私が王太子だと分かっていてその態度なのかッ。この無礼者ッ!」
「生憎ですが、お宅を王宮まで連行する重要な仕事を、カステン辺境伯軍が任命されたからな。今、俺の兵士たちがここへ来るまで、二人を見張っているって訳だ」
この私が連行されるだと! そんなはずはない。
とりあえず、話の通じない男とは会話をするだけ無駄だ。見張りが一人だけならこのまま逃げるかと考え、魔法でロープを切ろうとした。
だが、魔法が何故か発動しない。
「――ッ」
「あ、そうだった。二人の魔力をパスカル殿下が封印なさったから魔法は使えない。俺から離れるな、狼が近くにいるぞ」
「パスカル殿下がなぜここに⁉ 王宮の騎士団長がどうして私に魔法契約を⁉」
「そりゃぁ~、アンドレの最愛のご令嬢を襲ったからだろう。一度捨てたくせに、王太子殿下の往生際が悪いからだ」
「ふざけんなッ!」
「ふざけてはいない、こっちは至って真面目だ。お宅の偽装姿をアンドレが怒っていたぞ。黒になるのは反則だな。ジュディット様のトラウマになったらどうしてくれるんだよ。俺のかわいいアンドレが、ジュディット様に嫌われていたら、俺が出鱈目なことを言ったせいじゃなくて、王太子殿下のせいだからな! 間違いない」
何かに焦るカステン辺境伯が、よく分からない話を始め、「私が悪いというオチ」で、勝手に頷き、納得している。
どちらにしろ聞き捨てならない。
アンドレが何者かは知らないが、ジュディットは私の側室に上げる予定で当主とも話はついている。
ジュディットに闇魔法をかける直前。婚約破棄に関する魔法の書状交わしたのは失敗だったが、妃だろうが側室だろうと関係ない。
とりあえず私のものにしてしまえば、あとは何とかなる。
「ジュディット様が無事だったのに、随分と浮かない顔をされていますが、何かあったんですか?」
「顔に出てますか?」
「ええ。先ほどの休憩でも、何も召し上がっておりませんでしたし」
「極力顔に出さないようにしていたんですけどね。ははっ、ジュディから何度も大っ嫌いだと叫ばれてしまい、正直へこんでます。あ~、でも何も口にしてないのは気にしないでください。彼女が起きるのを待っているので、そうしているだけですから」
「ふふっ、本当にアンフレッド殿下とジュディット様は仲がよろしいのですね。ジュディット様がそんなことを言うなんて」
短髪の穏やかな青年が、笑って言ったが、予期せぬ反応に思わず聞き返す。
「え? 大っ嫌いですよ」
「ええ。好きや嫌いだと、ご自分の感情を口にされているのは、基本、食べ物のことしかありませんから」
「言われてみれば、しょっちゅう肉の話をしてますね」
「ジュディット様は、肉で釣れば大概のことは、なんとかなりますので助かります」
「それは、ジュディらしいですね」
「それなのに、王太子とは、ほとんど会話をしたことがないくらい、無関心でしたから。昔に殿下と何かあったのでしょうが、そういう話は絶対に隠されるので誰も分かりませんが」
「あ~、なんとなく、分かる気がします」
右肩の魔法契約のことだろうと想像を巡らす。
「結婚が近くなってから、殿下に興味を持とうと試行錯誤しているようでしたが、色恋にはてんで無頓着でしたから」
「そうですか。少しだけ希望が持てました」
気持ちよさげに夢を見ているジュディの顔を覗き込む。
目を覚ましたら、僕の元から逃げ出そうとするだろうが、僕の家で暮らしたいと言ったのはジュディですからね。もう逃がしませんよ。
◇◇◇SIDEフィリベール王太子
誰かが私の頬をパシパシと叩いている。
王太子の顔に触れるなど、どこの無礼者だッ。それに気づいた瞬間。頭に血が昇り、カッと目を見開く。
「オッ! 起きたか!」
「お前は誰だ。どこかで見た気がするな」
「ええ、カステン辺境伯領を治めている当主ですので、何度もご挨拶した記憶がこちらにもあります」
「辺境伯が何故に私を拘束している。このロープを解け」
「無理だな」と、自信満々な辺境伯に鼻で笑われた。
眼球をそろりと動かし周囲を確認する。ドゥメリー公爵が用意した馬車が横転して道を塞いでいる。
どうやらジュディットを落とした山道に戻ってきたようだ。
思い出した。畜生ッ!
あの女が突然、竜巻を起こしたんだった。ジュディットが魔法を使うとは思わず、すっかり油断した。
やってくれたなあの女。こちらが下手に出ていたのに何をしてくれたんだ。記憶を奪っても可愛げのない女だな、あいつは。
私の横には、まだ気を失い仰向けで横たわるドゥメリー公爵がいる。
内心チッと舌打ちをする。
この男がへまをしたのだろう。ジュディットを説得するのが面倒になり、半ば強引に攫ってきたのか。それを見られ、兵士たちが後を追いかけてきたとはな――。
何から何までどんくさい男だと、しかめ面を向ける。
「辺境伯! お前は私が誰か分かって拘束しているのか? 知らないのなら見逃してやろう。だが今すぐ拘束を解かなければ、王宮の牢へぶち込むぞ」
「もちろん知っていますよ王太子殿下。その髪と瞳を見て分からないはずがないでしょう。牢にぶち込まれるのはそちらですし」
「貴様! 私が王太子だと分かっていてその態度なのかッ。この無礼者ッ!」
「生憎ですが、お宅を王宮まで連行する重要な仕事を、カステン辺境伯軍が任命されたからな。今、俺の兵士たちがここへ来るまで、二人を見張っているって訳だ」
この私が連行されるだと! そんなはずはない。
とりあえず、話の通じない男とは会話をするだけ無駄だ。見張りが一人だけならこのまま逃げるかと考え、魔法でロープを切ろうとした。
だが、魔法が何故か発動しない。
「――ッ」
「あ、そうだった。二人の魔力をパスカル殿下が封印なさったから魔法は使えない。俺から離れるな、狼が近くにいるぞ」
「パスカル殿下がなぜここに⁉ 王宮の騎士団長がどうして私に魔法契約を⁉」
「そりゃぁ~、アンドレの最愛のご令嬢を襲ったからだろう。一度捨てたくせに、王太子殿下の往生際が悪いからだ」
「ふざけんなッ!」
「ふざけてはいない、こっちは至って真面目だ。お宅の偽装姿をアンドレが怒っていたぞ。黒になるのは反則だな。ジュディット様のトラウマになったらどうしてくれるんだよ。俺のかわいいアンドレが、ジュディット様に嫌われていたら、俺が出鱈目なことを言ったせいじゃなくて、王太子殿下のせいだからな! 間違いない」
何かに焦るカステン辺境伯が、よく分からない話を始め、「私が悪いというオチ」で、勝手に頷き、納得している。
どちらにしろ聞き捨てならない。
アンドレが何者かは知らないが、ジュディットは私の側室に上げる予定で当主とも話はついている。
ジュディットに闇魔法をかける直前。婚約破棄に関する魔法の書状交わしたのは失敗だったが、妃だろうが側室だろうと関係ない。
とりあえず私のものにしてしまえば、あとは何とかなる。
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