記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第5章 離さない
どうして私に縋らない⁉︎②(フィリベール)
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SIDE フィリベール
腹わたが煮えくりかえる感情を必死に抑え、弟と思しき男から、ジュディットへと視線を移す。
「ほら、ジュディットと崖の下で話をしただろう」
少しだけ間を置いたジュディットは、首を傾げ「さぁ?」と小さく答えた。
「陛下ッ! これですよ! 記憶のないジュディットが何よりの証拠です。同じくあの崖の高さから落ちた公爵は、二日間意識が戻らなかった程、衝撃が大きかったんですよ。頭を打って正しい判断ができないジュディットの話を鵜呑みにしないでください!」
そのように申し上げれば、陛下はジュディットに視線を向ける。
「大変申し訳ないジュディット様。愚息が失礼な事ばかりを言いよって、本当に情けない」
「陛下は頭を上げてください。悪いのはフィリベール殿下ですから」
「えええぇ⁉︎ ……ジュ、ジュディット?」
妙に落ち着き払った様子のジュディットを見て、一瞬、闇魔法の契約が解呪され、記憶が戻っているのかと焦ったが、そんな訳はない。驚かせるな。
「わたしの名前を呼んで、何かしら? あれ、フィリベール殿下……その痣だらけの顔は、どうされたんですか?」
「錯乱したお前……ジュディットが私を風に巻いたからだろう。そんなことも覚えていないのか」
「さあ? 崖の下で出会った殿方は、赤い髪ではなかったものですから」
「赤い髪は目立つから、髪と瞳を黒に偽装して、ジュディットを探していたからな」
「そうですか。それなら崖からわたしを落とした黒髪の男は、フィリベール殿下で間違いはなかったということですね」
「何を言っているんだ。ジュディットに、そんなことをするはずがないだろう。私は取るも取らずにジュディットを探しに向かうほど、心配していたんだ」
「わたしのことなんか、心配なんてしてないでしょうに。よく仰いますわね」
「何を言ってるんだ。ジュディットと王宮で暮らすために迎えに行ったんだ。あのとき、愛してると私の気持ちを伝えただろう」
訝しむジュディットを宥めていれば、眉間に深い皺を刻む男が陛下へ「余計な会話は必要ないでしょう」と、進言する。
強情な父が何故か素直に頷くと、全くもって聞き捨てならない宣言をされ、自分の耳を疑った。
「フィリベールの処分を決定する。一つ、王族籍の剥奪――」
「ええぇぇえっ! あ、え⁉︎ ちょっと待ってください陛下‼︎ 私は何もやっておりません。その処分を撤回していただかなければ、ジュディットに結んだ魔法契約を解呪する気はありませんよ」
慌てるのはそちらだろうと待っていれば、ジュディットが口を開いた。
「相変わらず反省はなさっていないのですね」
「私に反省など必要ない!」
「左様ですか。フィリベール殿下がわたしに薬を盛って、記憶と魔力を奪って捨てた挙句、崖から落としたのに、最後まで謝ってくださらないんですか? それ次第で行き先が変わりますよ」
「あっ、えっ! いや、ジュディットは何を言っているんだ。やはり、まだ混乱しているんだな」
「記憶はすっかり戻りましたわ」
「まさか……」
一言口走り、慌てて口を閉じた。
ああぁあ~、危ないところだった。
動揺したせいで、記憶を封印したことまで口走りそうになったが、それは事故で失った事になっているのだ。
ジュディットはどうして、私が薬を盛ったことも、記憶を奪ったことも知っているのだ。
それは……。
あぁ~、なるほどな、そういうことか。あの見知らぬ王族が、余計な入れ知恵をしているのか。
所詮適当に誤魔化しているだけなんだろう。よく思いついたものだ。
「そうか、記憶が戻ったのは良かったなジュディット。だが、魔力がないと生活に困るだろう。元に戻すから私のところへ来いッ」
知らない男の横にいるジュディットを睨む。
私にそっくりな王族は、私を追い詰めて立場を奪うつもりなのだろう。
そうはさせるかと、やつからジュディットを引き離すため、歩みを進める。
すると、目の前に小さな氷が落ちてきて、すんでのところでかわす。
「危ないだろう! 狙いも定まらない魔法を調子に乗って使いやがって」
「お宅が僕の婚約者にそれ以上近づくなら、次は頭の上に落としますよ」
「お、おい! 勝手にジュディットの婚約者を名乗るな、この無礼者! 王城で魔法を使うとは何事だ!」
「事前に陛下の許可はありますので」
「陛下がお前ごときの話を聞くわけないだろう」
見覚えのない王族へ告げたのだが、激昂した陛下がまくし立てる。
「煩い。これ以上見苦しい真似をするな! 同情の余地もないお前は、この時間をもって、王族籍から外れるものとする。お前とドゥメリー元公爵を、カステン辺境伯領の監獄塔に収容し、生涯幽閉とする。以上だ」
はあっ? どういうことだ……。
何故に私を引き止めない! くそぅっ。
再びジュディットへ目をやると、男に肩を抱かれて寄り掛かっている。
その女は私のものだ。私がいなければ利用価値もないくせに。
その手を避けろと思っていれば、右肩にあるべき魔法陣が……ない!
はぁ!!!! そんなわけがない!
見間違いかと思い、目をゴシゴシ擦って再び視線を向けたが、ない、ない、ないいいぃぃ!
「どういうことだ! どうしてジュディットの右肩の魔法陣が消えているんだよ!」
「おい。この部屋に入る前に余計な口を開くなと命じたはずだ。いい加減、その顔でいらない発言をするな」
偉そうに告げる男は、声まで私にそっくりだ。やはり私の弟なのか。
「お、お前……誰だ」
「まあそうですね、もう二度と会うことはないので挨拶くらいしておきましょう」
そう言うと、ふっと笑みを浮かべ、話を続けた。
「……初めてお目にかかります、弟のアンフレッドです。右肩にあったジュディの魔法契約は、先程、陛下の目の前で僕が消しましたので、ご心配なく」
「そんな馬鹿な……。魔法契約なんだぞ。他人が消せるわけがない……。どうしてだ!」
「さあ、何故でしょうね。教える気はありませんし、廃位した人間が知る必要もないですから」
「魔法契約が……消えた……? 嘘だ、嘘だ、嘘だあああ――」
「黙れ。その愚か者をさっさと檻車へ連れていけ!」
私の声を遮り、陛下が命じた。
すると、その言葉を待っていたようなカステン辺境伯が、私をずるずると引きずるように連れ出すではないか! 何がどうなっているんだよ。この事態がまったく飲み込めない。カッとして振り向く。
「絶対に許さないからな。覚えていろよ、ジュディット! 男をたぶらかして味方に付けたとしても、お前は俺のものだ。他の男には渡さないからな」
扉から出る直前に言い放つ。
すると真横にいるカステン辺境伯が声を張り上げた。
「おい。その声で余計な口を利くな! 馬鹿!」
「また、お前か無礼者ッ!」
「生憎だな。お宅はもう王族じゃないんで、立場を弁えろ」
何がどうなっているんだ。くそぅっ。全てリナとジュディットのせいなのか⁉
いや、こうなった原因は全てジュディットだ。
ジュディットが妹のリナの黒魔術に気づきもしなかったのが悪い。何が聖女だ。
それに、そもそもジュディットに可愛げがあれば、リナに走ることはなかった。
いつもすました顔をしていたジュディットが悪い。私じゃない。私は何も悪くない――。
あの女を思い出し、わなわなと体を震わせていると、大きな手の平で、肩をボンッと叩かれた。
「お宅の女の趣味が悪いおかげで、アンドレが幸せそうで良かったよ」
「私を馬鹿にするな!」
「ははっ、相変わらず威勢だけはいいな。お宅の婚約者、祈祷室で喚き散らして酷いな。あんな女のどこが良かったんだ? どう考えても、ジュディット様の方がいいだろう、馬ッ鹿だな」
「煩い、煩い、煩いッ! ……もう、何も言うな……」
――禊の儀。半ば強引にリナに押し切られたが、あれが全ての元凶だ。私は悪くない。悪くない。全部リナとジュディットが悪いんだ。
「いいからさっさと歩けよ、フィリベール殿下。あっ、間違った。お前、もう殿下じゃないんだったな」
「貴ッ様ぁぁ!」
「口を慎め。お前に貴様呼ばわりされる立場じゃない」
「離せ! 私を拘束するな!」
そう主張すれば、今度は頭を強く叩かれた。
――あーっ、畜生! どうして私がこんな屈辱を……。
なぜに私が監獄塔に送られるんだ!
「よりによって凶悪犯ばかり収容する、あんな場所に王族だと分かる姿で投獄されれば、何をされるか分からないだろう」
「だろうな」
にまっと笑う辺境伯を見て、自分の置かれた現実に気づき、背筋が凍る。
「嫌だ、頼むからやめてくれ。何でもするから、そこだけはやめてくれ」
「ははっ! お前なら、塔のやつらが熱く歓迎してくれるから、心配するな」
「お願いだ。悪かった、私が悪かったんだ。ジュディットに謝るから、もう一度戻らせてくれ。頼むから、あそこに入れられるのは、まずい。無理だ。ジュディットならきっと考えてくれるはずだ」
「馬~鹿。遅いんだよ! 一回決まった処分が覆るはずないだろう。アンドレにそっくりなお前を見たら、塔のやつらも喜んで仕返ししてくれるから、まあ良かったな。ははは」
「はぁ? なんだか分からないが、よくないだろう。もう一度話せばジュディットなら……」
繰り返す説得も虚しく、気づけば檻車へ押し込められた──。
嘘だろぅ……。
◇◇◇
腹わたが煮えくりかえる感情を必死に抑え、弟と思しき男から、ジュディットへと視線を移す。
「ほら、ジュディットと崖の下で話をしただろう」
少しだけ間を置いたジュディットは、首を傾げ「さぁ?」と小さく答えた。
「陛下ッ! これですよ! 記憶のないジュディットが何よりの証拠です。同じくあの崖の高さから落ちた公爵は、二日間意識が戻らなかった程、衝撃が大きかったんですよ。頭を打って正しい判断ができないジュディットの話を鵜呑みにしないでください!」
そのように申し上げれば、陛下はジュディットに視線を向ける。
「大変申し訳ないジュディット様。愚息が失礼な事ばかりを言いよって、本当に情けない」
「陛下は頭を上げてください。悪いのはフィリベール殿下ですから」
「えええぇ⁉︎ ……ジュ、ジュディット?」
妙に落ち着き払った様子のジュディットを見て、一瞬、闇魔法の契約が解呪され、記憶が戻っているのかと焦ったが、そんな訳はない。驚かせるな。
「わたしの名前を呼んで、何かしら? あれ、フィリベール殿下……その痣だらけの顔は、どうされたんですか?」
「錯乱したお前……ジュディットが私を風に巻いたからだろう。そんなことも覚えていないのか」
「さあ? 崖の下で出会った殿方は、赤い髪ではなかったものですから」
「赤い髪は目立つから、髪と瞳を黒に偽装して、ジュディットを探していたからな」
「そうですか。それなら崖からわたしを落とした黒髪の男は、フィリベール殿下で間違いはなかったということですね」
「何を言っているんだ。ジュディットに、そんなことをするはずがないだろう。私は取るも取らずにジュディットを探しに向かうほど、心配していたんだ」
「わたしのことなんか、心配なんてしてないでしょうに。よく仰いますわね」
「何を言ってるんだ。ジュディットと王宮で暮らすために迎えに行ったんだ。あのとき、愛してると私の気持ちを伝えただろう」
訝しむジュディットを宥めていれば、眉間に深い皺を刻む男が陛下へ「余計な会話は必要ないでしょう」と、進言する。
強情な父が何故か素直に頷くと、全くもって聞き捨てならない宣言をされ、自分の耳を疑った。
「フィリベールの処分を決定する。一つ、王族籍の剥奪――」
「ええぇぇえっ! あ、え⁉︎ ちょっと待ってください陛下‼︎ 私は何もやっておりません。その処分を撤回していただかなければ、ジュディットに結んだ魔法契約を解呪する気はありませんよ」
慌てるのはそちらだろうと待っていれば、ジュディットが口を開いた。
「相変わらず反省はなさっていないのですね」
「私に反省など必要ない!」
「左様ですか。フィリベール殿下がわたしに薬を盛って、記憶と魔力を奪って捨てた挙句、崖から落としたのに、最後まで謝ってくださらないんですか? それ次第で行き先が変わりますよ」
「あっ、えっ! いや、ジュディットは何を言っているんだ。やはり、まだ混乱しているんだな」
「記憶はすっかり戻りましたわ」
「まさか……」
一言口走り、慌てて口を閉じた。
ああぁあ~、危ないところだった。
動揺したせいで、記憶を封印したことまで口走りそうになったが、それは事故で失った事になっているのだ。
ジュディットはどうして、私が薬を盛ったことも、記憶を奪ったことも知っているのだ。
それは……。
あぁ~、なるほどな、そういうことか。あの見知らぬ王族が、余計な入れ知恵をしているのか。
所詮適当に誤魔化しているだけなんだろう。よく思いついたものだ。
「そうか、記憶が戻ったのは良かったなジュディット。だが、魔力がないと生活に困るだろう。元に戻すから私のところへ来いッ」
知らない男の横にいるジュディットを睨む。
私にそっくりな王族は、私を追い詰めて立場を奪うつもりなのだろう。
そうはさせるかと、やつからジュディットを引き離すため、歩みを進める。
すると、目の前に小さな氷が落ちてきて、すんでのところでかわす。
「危ないだろう! 狙いも定まらない魔法を調子に乗って使いやがって」
「お宅が僕の婚約者にそれ以上近づくなら、次は頭の上に落としますよ」
「お、おい! 勝手にジュディットの婚約者を名乗るな、この無礼者! 王城で魔法を使うとは何事だ!」
「事前に陛下の許可はありますので」
「陛下がお前ごときの話を聞くわけないだろう」
見覚えのない王族へ告げたのだが、激昂した陛下がまくし立てる。
「煩い。これ以上見苦しい真似をするな! 同情の余地もないお前は、この時間をもって、王族籍から外れるものとする。お前とドゥメリー元公爵を、カステン辺境伯領の監獄塔に収容し、生涯幽閉とする。以上だ」
はあっ? どういうことだ……。
何故に私を引き止めない! くそぅっ。
再びジュディットへ目をやると、男に肩を抱かれて寄り掛かっている。
その女は私のものだ。私がいなければ利用価値もないくせに。
その手を避けろと思っていれば、右肩にあるべき魔法陣が……ない!
はぁ!!!! そんなわけがない!
見間違いかと思い、目をゴシゴシ擦って再び視線を向けたが、ない、ない、ないいいぃぃ!
「どういうことだ! どうしてジュディットの右肩の魔法陣が消えているんだよ!」
「おい。この部屋に入る前に余計な口を開くなと命じたはずだ。いい加減、その顔でいらない発言をするな」
偉そうに告げる男は、声まで私にそっくりだ。やはり私の弟なのか。
「お、お前……誰だ」
「まあそうですね、もう二度と会うことはないので挨拶くらいしておきましょう」
そう言うと、ふっと笑みを浮かべ、話を続けた。
「……初めてお目にかかります、弟のアンフレッドです。右肩にあったジュディの魔法契約は、先程、陛下の目の前で僕が消しましたので、ご心配なく」
「そんな馬鹿な……。魔法契約なんだぞ。他人が消せるわけがない……。どうしてだ!」
「さあ、何故でしょうね。教える気はありませんし、廃位した人間が知る必要もないですから」
「魔法契約が……消えた……? 嘘だ、嘘だ、嘘だあああ――」
「黙れ。その愚か者をさっさと檻車へ連れていけ!」
私の声を遮り、陛下が命じた。
すると、その言葉を待っていたようなカステン辺境伯が、私をずるずると引きずるように連れ出すではないか! 何がどうなっているんだよ。この事態がまったく飲み込めない。カッとして振り向く。
「絶対に許さないからな。覚えていろよ、ジュディット! 男をたぶらかして味方に付けたとしても、お前は俺のものだ。他の男には渡さないからな」
扉から出る直前に言い放つ。
すると真横にいるカステン辺境伯が声を張り上げた。
「おい。その声で余計な口を利くな! 馬鹿!」
「また、お前か無礼者ッ!」
「生憎だな。お宅はもう王族じゃないんで、立場を弁えろ」
何がどうなっているんだ。くそぅっ。全てリナとジュディットのせいなのか⁉
いや、こうなった原因は全てジュディットだ。
ジュディットが妹のリナの黒魔術に気づきもしなかったのが悪い。何が聖女だ。
それに、そもそもジュディットに可愛げがあれば、リナに走ることはなかった。
いつもすました顔をしていたジュディットが悪い。私じゃない。私は何も悪くない――。
あの女を思い出し、わなわなと体を震わせていると、大きな手の平で、肩をボンッと叩かれた。
「お宅の女の趣味が悪いおかげで、アンドレが幸せそうで良かったよ」
「私を馬鹿にするな!」
「ははっ、相変わらず威勢だけはいいな。お宅の婚約者、祈祷室で喚き散らして酷いな。あんな女のどこが良かったんだ? どう考えても、ジュディット様の方がいいだろう、馬ッ鹿だな」
「煩い、煩い、煩いッ! ……もう、何も言うな……」
――禊の儀。半ば強引にリナに押し切られたが、あれが全ての元凶だ。私は悪くない。悪くない。全部リナとジュディットが悪いんだ。
「いいからさっさと歩けよ、フィリベール殿下。あっ、間違った。お前、もう殿下じゃないんだったな」
「貴ッ様ぁぁ!」
「口を慎め。お前に貴様呼ばわりされる立場じゃない」
「離せ! 私を拘束するな!」
そう主張すれば、今度は頭を強く叩かれた。
――あーっ、畜生! どうして私がこんな屈辱を……。
なぜに私が監獄塔に送られるんだ!
「よりによって凶悪犯ばかり収容する、あんな場所に王族だと分かる姿で投獄されれば、何をされるか分からないだろう」
「だろうな」
にまっと笑う辺境伯を見て、自分の置かれた現実に気づき、背筋が凍る。
「嫌だ、頼むからやめてくれ。何でもするから、そこだけはやめてくれ」
「ははっ! お前なら、塔のやつらが熱く歓迎してくれるから、心配するな」
「お願いだ。悪かった、私が悪かったんだ。ジュディットに謝るから、もう一度戻らせてくれ。頼むから、あそこに入れられるのは、まずい。無理だ。ジュディットならきっと考えてくれるはずだ」
「馬~鹿。遅いんだよ! 一回決まった処分が覆るはずないだろう。アンドレにそっくりなお前を見たら、塔のやつらも喜んで仕返ししてくれるから、まあ良かったな。ははは」
「はぁ? なんだか分からないが、よくないだろう。もう一度話せばジュディットなら……」
繰り返す説得も虚しく、気づけば檻車へ押し込められた──。
嘘だろぅ……。
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