【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

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第3章 入れ替わりのふたり

3-19 元に戻るふたり②

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 いつもの調子で稽古を始めるルイーズエドワードの体は、エドワードの懸念に少しも気付いていない。

 ガッチーン――!

 2人の剣が大きな音を立ててぶつかる。それと同時にエドワードルイーズの体の腕がジンジンとしびれた。開始早々、辛そうな表情を浮かべている。
 エドワードの体が力を込めて振り下ろした剣。
 それをたった1回受け止めただけで、ルイーズの体では腕の感覚がマヒしてしまう。

(こいつ……。俺が手加減していたことに、全く気付いていないのか。そもそも、こいつ相手に本気で剣を振っていたことはないから、力加減も分からないよな……どうする。ルイーズの細腕では、このままでは危険だ)
 じわりと手に汗をかいた彼1人だけが激しく焦る。

 いつもはエドワードがルイーズに合わせて、手を抜いて適当に剣を振っているだけだった。
 エドワードが力を入れて剣を振れば、ルイーズを容易に傷付ける。それを理解した上で、余裕の手加減。

 それを分かっていなかったルイーズは、渾身こんしんの力で剣を振ってしまったのだ。
 
「お前、落ち着けって。俺の体だって分かっているのか? みっともなく剣を振り回すな」
「みっともなくないし、習ったとおりにしているだけだもん」
 ルイーズエドワードの体は、いつもの調子で剣をエドワードルイーズの体に振り下ろした。

「おい馬鹿、そんなに力を入れたら、危ないってっ――っつ!」
 ムッとした顔をしているルイーズエドワードの顔には、必死の制止の意味は伝わらない。

 ルイーズエドワードの体から力強く降ろされた剣。
 それをエドワードルイーズの体は、か細いルイーズの腕では受け止めきれず剣をはじかれる。
 既に腕が痺れていたのだ。当然、力も入らなかった。

 ……だけど。
 それに気付いて自分が振り下ろした剣を止められるルイーズではない。そんなセンスがあれば、「全く見込みがない」と評価されていないのだ。

 ハッとした表情を見せたルイーズエドワードの体だが、剣の勢いはそのまま止められない――。
 ルイーズエドワードの体の振り下ろした剣で、エドワードルイーズの体は右手首を大きく負傷する。

 慌てるエドワード。だが、職位柄無知ではない。左手で傷を抑えたエドワードルイーズの体は、出血を抑えようと必死だ。

 けれど、相当に深い傷はどう見ても、圧迫止血では間に合わない。

 ひゅっと息をのんだルイーズエドワードの体は、青白い顔をしている。

 彼女は自分の体よりも、すぐにエドワードの心配をした。
 激しく動揺したルイーズだったが、優先したい気持ちに少しの迷いもなかった。

 自分が消えても、誰も悲しまない。だけど、エドワードは違う。
 このままではエドワードが消えて、彼の華やかで幸せな未来がなくなる。愛しい彼には生きていて欲しい。
 そう思ったルイーズは、彼を失うのを避けたい一心で、自分の体に戻ることを強く願っている。
 
(ごめんなさい。わたしのせいだ……。もし、わたしの体と一緒に、あなたが命を落とすことになるのは……、絶対に駄目だ。戻れ、お願い、わたしがわたしの体に戻れ)

 それと同時にルイーズは、感じる痛みと共に自分の体に戻ったことを自覚した。
(――っ! 右手が痛い。も、戻った! よ、良かった……。待って……、エドワードに謝らなきゃ……。……大丈夫だって手を振らなきゃ……)

 ルイーズは朦朧もうろうとする意識の中。エドワードに掛ける声も出せずに、駆け寄ってきた他の訓練生によって、救護室へ運ばれていった。



(――何が起きた⁉ まともに食事を取らずに貧血だった彼女の体が、こんなに失血すれば身が持たないだろう。早く傷を塞がなければ間に合わない! 救護室に向かうより、俺が治療した方が早い。頼む戻ってくれ。俺がルイーズにもっと、違う声を掛けていたら、こんなことには……。頼む早く戻れ、俺の体に戻れ。あっ、――腕に傷がない。もしかして体が戻っていたのか⁉)

 自分の体に戻った彼。
 エドワードは、自分が剣を受け止めきれず、ルイーズの体を傷付けたという衝撃が、余りにも重くのしかかっている。
 そして、体が戻ったことを捉えるのが遅れていた。
 彼が呆然ぼうぜんとしている間に、ルイーズは自分の目の前から、離れた位置にいた。

「あっ……、待て……」
 その彼の声は、誰の耳にも届かないほど、周囲はざわめきは大きい。

 遠くに見えた、ルイーズの左手が、力なくだらりと垂れた瞬間。彼は、心臓が凍り付くようなショックと喪失感を味わって、そのまま動けずにいた。
(……ウソだろう)
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