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第4章 離れたふたり
4-13 ルイーズの捕獲③
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「えっと…………」
きょとんと首をかしげているルイーズは、何のことやら、さっぱり分かっていない。
ルイーズに自分が回復魔法師だと気付いて欲しいエドワードは、はっきりと分かる言葉を付け足す。
「ルイーズの右手を傷付けてしまい、俺は、何としても自分の体に戻って、ルイーズの体を治療したかった」
(ちっ、治療……。うっ、うっ、ウソでしょう。そんなわけない。
まままさか、それってエドワードは回復魔法師様だと、そっ、そういうこと⁉)
気安く接していたエドワードが、至上者である回復魔法師だと知ったルイーズ。
目の前のエドワードを、目を見開き凝視する。
全然知らなかった。……とはいえ、これまで散々エドワードに好き勝手なことを言ってきた自覚がある。そんな自分は、とんだ無礼者ではないか。
大変だ。
一大事だ。ルイーズの頭の中は大混乱に陥った。
これまでの自分の言動を思い起こすルイーズは、あたふたしだす。
やっと口に出した言葉も、シドロモドロで何を言いたいのか分からない。
「も、もももしかして……、エッ、エドワードって、えっ、えー、ひっ」
「やっと分かったか。ほら、王宮に着いたぞ。部屋で適当に何か食べさせてやるよ。はぐれるとまずい、俺から離れるな」
理解が追い付かず、及び腰のルイーズをよそに、真剣な表情のエドワードはグイグイとルイーズを引っ張っている。
エドワードは、さもさも当然のように関係者以外立ち入りを固く禁じている通路を通り、自分の部屋へ向かっていた。
ひぇーっと怯えながら、ルイーズは周囲をキョロキョロと見回す。
自分なんかが、厳重な警備を抜けて、王宮の奥に入り込んでいることが怖すぎる。
……たどり着いた部屋。そこは無駄に豪華な家具で整えられ、2人以外誰もいない。
ルイーズは、突然連れられてきた場所がどこか、よく分かっていない。
だが、あまりにも自分は場違いだ。
気まずさを感じたルイーズは、ふいっとエドワードから目をそらす。
困惑の色を見せるルイーズを気に止めないエドワードは、ルイーズと向かい合った。
「右手が動かなくて困っているんだろう、何で言わないんだよ! 何かあったら俺に相談しろって言わなかったか。俺は別に、ルイーズはルイーズだし、その右手が動かなくても、結婚するつもりだ。それでもルイーズは、結婚相手が俺だと困る理由は何かあるのか?」
「えっ、何で右手のことがバレているの……。違う、エドワードが嫌なわけじゃなくて、むしろ好きと言うか……。でも、右手のことを知ったら、エドワードが嫌な気分になるだろうから、知られたくなくて。だから、それで……」
自分を信用せず何も打ち明けてこない。それどころかルイーズは、ウソで誤魔化そうとする。エドワードは、それに気が立っていた。
だが、何も言わないのは自分を思ってのことだと分かり、一安心したエドワード。
ふっと柔らかい笑みを浮かべると同時に、大きなため息をつく。
「そんなことだと思った。俺、ルイーズが好きだって確信した。俺の妻はルイーズしか考えられない、入れ替わるほど相性が合う相手は、この先お互いにいないだろう。結婚するぞ」
表情に真剣さが増すエドワードの一方、不安そうな表情のルイーズ。
「わたし、エドワードの役に立てることなんてないけど、それでもいいの?」
「ルイーズがいてくれるだけで俺にとっては助かるから、余計な心配はするな。ほら、手を出せ、指輪をはめるから。今度は、裏にルイーズと俺の名前を彫ってもらったからな、誰かに盗まれるなよ」
そう言いながら、ルイーズの左手をとり、薬指にそっと大きなダイヤが埋め込まれた指輪をはめるエドワード。
そして、指輪をはめた左手を両手で優しく包み込む。
……しばらくして。
上に乗せていたエドワードの手でルイーズの手の甲へ、軽く2回、いつもの癖で合図をしていた。
「ルイーズ以上に欲しいものはなかった。たった数日会えないだけで自分が壊れるほど、ルイーズを愛してる。自分の気持ちに気付くのが遅くなって、ごめんな」
そう言ったエドワードは、ルイーズの白くてなめらかな左手の甲に、優しいキスを落とす……。
きょとんと首をかしげているルイーズは、何のことやら、さっぱり分かっていない。
ルイーズに自分が回復魔法師だと気付いて欲しいエドワードは、はっきりと分かる言葉を付け足す。
「ルイーズの右手を傷付けてしまい、俺は、何としても自分の体に戻って、ルイーズの体を治療したかった」
(ちっ、治療……。うっ、うっ、ウソでしょう。そんなわけない。
まままさか、それってエドワードは回復魔法師様だと、そっ、そういうこと⁉)
気安く接していたエドワードが、至上者である回復魔法師だと知ったルイーズ。
目の前のエドワードを、目を見開き凝視する。
全然知らなかった。……とはいえ、これまで散々エドワードに好き勝手なことを言ってきた自覚がある。そんな自分は、とんだ無礼者ではないか。
大変だ。
一大事だ。ルイーズの頭の中は大混乱に陥った。
これまでの自分の言動を思い起こすルイーズは、あたふたしだす。
やっと口に出した言葉も、シドロモドロで何を言いたいのか分からない。
「も、もももしかして……、エッ、エドワードって、えっ、えー、ひっ」
「やっと分かったか。ほら、王宮に着いたぞ。部屋で適当に何か食べさせてやるよ。はぐれるとまずい、俺から離れるな」
理解が追い付かず、及び腰のルイーズをよそに、真剣な表情のエドワードはグイグイとルイーズを引っ張っている。
エドワードは、さもさも当然のように関係者以外立ち入りを固く禁じている通路を通り、自分の部屋へ向かっていた。
ひぇーっと怯えながら、ルイーズは周囲をキョロキョロと見回す。
自分なんかが、厳重な警備を抜けて、王宮の奥に入り込んでいることが怖すぎる。
……たどり着いた部屋。そこは無駄に豪華な家具で整えられ、2人以外誰もいない。
ルイーズは、突然連れられてきた場所がどこか、よく分かっていない。
だが、あまりにも自分は場違いだ。
気まずさを感じたルイーズは、ふいっとエドワードから目をそらす。
困惑の色を見せるルイーズを気に止めないエドワードは、ルイーズと向かい合った。
「右手が動かなくて困っているんだろう、何で言わないんだよ! 何かあったら俺に相談しろって言わなかったか。俺は別に、ルイーズはルイーズだし、その右手が動かなくても、結婚するつもりだ。それでもルイーズは、結婚相手が俺だと困る理由は何かあるのか?」
「えっ、何で右手のことがバレているの……。違う、エドワードが嫌なわけじゃなくて、むしろ好きと言うか……。でも、右手のことを知ったら、エドワードが嫌な気分になるだろうから、知られたくなくて。だから、それで……」
自分を信用せず何も打ち明けてこない。それどころかルイーズは、ウソで誤魔化そうとする。エドワードは、それに気が立っていた。
だが、何も言わないのは自分を思ってのことだと分かり、一安心したエドワード。
ふっと柔らかい笑みを浮かべると同時に、大きなため息をつく。
「そんなことだと思った。俺、ルイーズが好きだって確信した。俺の妻はルイーズしか考えられない、入れ替わるほど相性が合う相手は、この先お互いにいないだろう。結婚するぞ」
表情に真剣さが増すエドワードの一方、不安そうな表情のルイーズ。
「わたし、エドワードの役に立てることなんてないけど、それでもいいの?」
「ルイーズがいてくれるだけで俺にとっては助かるから、余計な心配はするな。ほら、手を出せ、指輪をはめるから。今度は、裏にルイーズと俺の名前を彫ってもらったからな、誰かに盗まれるなよ」
そう言いながら、ルイーズの左手をとり、薬指にそっと大きなダイヤが埋め込まれた指輪をはめるエドワード。
そして、指輪をはめた左手を両手で優しく包み込む。
……しばらくして。
上に乗せていたエドワードの手でルイーズの手の甲へ、軽く2回、いつもの癖で合図をしていた。
「ルイーズ以上に欲しいものはなかった。たった数日会えないだけで自分が壊れるほど、ルイーズを愛してる。自分の気持ちに気付くのが遅くなって、ごめんな」
そう言ったエドワードは、ルイーズの白くてなめらかな左手の甲に、優しいキスを落とす……。
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