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第5章 祝福されるふたり
5-19 不穏な空気②
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舞踏会の一件からしばらくたっても、スペンサー侯爵家へ押しかける不審人物はいない。
それも当然。エドワードに直接接触しても、彼の権限で処罰されかねないのは、くだんのことで、周知の事実だ。
エドワードが回復魔法師だと勘ぐっておきながら、リンゴの酒を掛ける事件を起こした伯爵夫人。
そもそも伯爵夫人の末路を知る貴族たちしか、スペンサー侯爵家を訪ねてこないのだ。
分かった上で、危険を犯す愚か者はいなかった。
伯爵夫人がいなければ平和そのもの、……というわけにいかないのがルイーズだ。
彼女は、何も分かっていない教養を一から、たたき込まれてるところ。
本来であれば、幼子でさえ身に着けているカーテシーから始まる指導。
その初歩から、ルイーズは悪戦苦闘している。
「ルイーズ、へっぴり腰はやめなさい!」
「じゃぁ、こうですか……」
「違うわ。足にしっかり力を入れないから、体がガタガタ揺れるのよ!」
「おかしいな……。ちゃんとやっているんだけど……」
額に手を当てたエドワードの母に駄目だこれは……、という顔をされた。
ルイーズは、何のことだと首をかしげる。
執念深い侯爵夫人は、それくらいでは諦めるわけもない。……延々と続くエドワードの母の熱烈な指導。
まぎれもなく親子だなと、ルイーズは内心くすくすと笑っている。
**
2人の結婚式も、あと少しと差し迫っている。
朝日が差し込んでいるエドワードの寝室。
朝からじゃれたがるエドワードが、ルイーズを逃さまいと、ぎゅっと力強く抱きしめる。
彼の腕が心地よいルイーズも、このまま、じゃれ合いたいのは山々。
……だが、侯爵家のスパルタ教育が待っているのだ。
なんたって、侯爵夫人が生き生きと楽しそうに、断然やる気を出している。
遅れたら、何を言いだすか気が気ではない。
ルイーズは、エドワードの腕から逃れようともぞもぞと身をよじる。
もう少しルイーズと一緒にいたいエドワードの耳には、早朝から訪問を知らせる呼び鈴の音が、聞こえていた。
少し考え込んだエドワードは、陛下の予定を思い出し……、問題ないと決め込んだ。
「もう、起きているんだから離してよ。また怒られるでしょう。こうなったら、エドワードのせいですって言うわよ」
「くくっ、人のせいにすれば、余計に怒られるぞ。ルイーズと、もう少し一緒にいたいから、しょうがないし、ルイーズもだろう。母なんて気にするな」
ルイーズに触れるエドワードが、口づけを落とそうとする……。
……が、エドワードの動きがピタリと止まった。
そのまま固まり、険しい顔をして動かないままのエドワード。
そんな彼を、ルイーズは首をかしげて不思議そうに見ている。
どうしたんだろう。エドワードは何か怒っているのか?
そう思ったルイーズは、何か気に障ることでもしたのかと、不安気な表情を浮かべる。
「エ……、エドワード……」
「あっ、悪い。少し考えごとをしていた。駄目だ、ルイーズが怒られるから、さっさと起きるぞ」
それ以上何も言わないエドワードは、突然、ベッドから飛び出していた。
何が起きたのか理解が追い付かないルイーズは、呆然とベッドの中に取り残されている。
途端に様子が変わったエドワードを見て、自分に落ち度があると悩み、なかなかベッドから動けない。
エドワードは、思わずにやけそうになるのを、必死にこらえながら、急いで着替え終えた。
ルイーズがぼんやりしていることに気付いた、上機嫌のエドワードは、ほらほらとルイーズをベッドから引っ張る。
だけど、心ここにあらずなエドワード。
(俺からルイーズに伝えるのは、駄目だよな。こういうのは、やはり自分が一番先に気付いて、報告したいんだろう。いつになったら気付くんだ?)
「ほら、朝食の時間がなくなるからさっさと動け。俺、今日はもう王宮へ向かうけど、ルイーズはなんか変わったことはないのか?」
「うん? 至っていつもどおりだけど。ふふっ、どうしたの、今日は真面目に仕事する気になったの?」
「はぁぁーっ、いつだって真面目に仕事をしているだろう」
(どうしてキスするのを、やめちゃったの。どうしよう……。わたし、お母様のことで、何か余計なことを言ったのかしら……)
じんわりと赤くなるルイーズの目には、いつもと変わらないエドワードの姿が映る。
それも当然。エドワードに直接接触しても、彼の権限で処罰されかねないのは、くだんのことで、周知の事実だ。
エドワードが回復魔法師だと勘ぐっておきながら、リンゴの酒を掛ける事件を起こした伯爵夫人。
そもそも伯爵夫人の末路を知る貴族たちしか、スペンサー侯爵家を訪ねてこないのだ。
分かった上で、危険を犯す愚か者はいなかった。
伯爵夫人がいなければ平和そのもの、……というわけにいかないのがルイーズだ。
彼女は、何も分かっていない教養を一から、たたき込まれてるところ。
本来であれば、幼子でさえ身に着けているカーテシーから始まる指導。
その初歩から、ルイーズは悪戦苦闘している。
「ルイーズ、へっぴり腰はやめなさい!」
「じゃぁ、こうですか……」
「違うわ。足にしっかり力を入れないから、体がガタガタ揺れるのよ!」
「おかしいな……。ちゃんとやっているんだけど……」
額に手を当てたエドワードの母に駄目だこれは……、という顔をされた。
ルイーズは、何のことだと首をかしげる。
執念深い侯爵夫人は、それくらいでは諦めるわけもない。……延々と続くエドワードの母の熱烈な指導。
まぎれもなく親子だなと、ルイーズは内心くすくすと笑っている。
**
2人の結婚式も、あと少しと差し迫っている。
朝日が差し込んでいるエドワードの寝室。
朝からじゃれたがるエドワードが、ルイーズを逃さまいと、ぎゅっと力強く抱きしめる。
彼の腕が心地よいルイーズも、このまま、じゃれ合いたいのは山々。
……だが、侯爵家のスパルタ教育が待っているのだ。
なんたって、侯爵夫人が生き生きと楽しそうに、断然やる気を出している。
遅れたら、何を言いだすか気が気ではない。
ルイーズは、エドワードの腕から逃れようともぞもぞと身をよじる。
もう少しルイーズと一緒にいたいエドワードの耳には、早朝から訪問を知らせる呼び鈴の音が、聞こえていた。
少し考え込んだエドワードは、陛下の予定を思い出し……、問題ないと決め込んだ。
「もう、起きているんだから離してよ。また怒られるでしょう。こうなったら、エドワードのせいですって言うわよ」
「くくっ、人のせいにすれば、余計に怒られるぞ。ルイーズと、もう少し一緒にいたいから、しょうがないし、ルイーズもだろう。母なんて気にするな」
ルイーズに触れるエドワードが、口づけを落とそうとする……。
……が、エドワードの動きがピタリと止まった。
そのまま固まり、険しい顔をして動かないままのエドワード。
そんな彼を、ルイーズは首をかしげて不思議そうに見ている。
どうしたんだろう。エドワードは何か怒っているのか?
そう思ったルイーズは、何か気に障ることでもしたのかと、不安気な表情を浮かべる。
「エ……、エドワード……」
「あっ、悪い。少し考えごとをしていた。駄目だ、ルイーズが怒られるから、さっさと起きるぞ」
それ以上何も言わないエドワードは、突然、ベッドから飛び出していた。
何が起きたのか理解が追い付かないルイーズは、呆然とベッドの中に取り残されている。
途端に様子が変わったエドワードを見て、自分に落ち度があると悩み、なかなかベッドから動けない。
エドワードは、思わずにやけそうになるのを、必死にこらえながら、急いで着替え終えた。
ルイーズがぼんやりしていることに気付いた、上機嫌のエドワードは、ほらほらとルイーズをベッドから引っ張る。
だけど、心ここにあらずなエドワード。
(俺からルイーズに伝えるのは、駄目だよな。こういうのは、やはり自分が一番先に気付いて、報告したいんだろう。いつになったら気付くんだ?)
「ほら、朝食の時間がなくなるからさっさと動け。俺、今日はもう王宮へ向かうけど、ルイーズはなんか変わったことはないのか?」
「うん? 至っていつもどおりだけど。ふふっ、どうしたの、今日は真面目に仕事する気になったの?」
「はぁぁーっ、いつだって真面目に仕事をしているだろう」
(どうしてキスするのを、やめちゃったの。どうしよう……。わたし、お母様のことで、何か余計なことを言ったのかしら……)
じんわりと赤くなるルイーズの目には、いつもと変わらないエドワードの姿が映る。
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