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第三章 天使とディーバの取引明細
40.『さよなら』
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同年代の子どもたちがゲームに夢中になったり、読書を楽しんだりするように、彼はオルタナティブロックに惹かれたという。
ラジオや父親の書架に並んだCD、書物で得た知識をもとに、深みにはまっていた。やがて少年はインターネットを通して、インディーズバンドの歌姫に出会った。
「コンタクトをとってみれば、ってすすめたんだ。けど、イチイは律儀に言いつけを守るいい子だから、黙って見ているだけでいいって。もどかしくなって、代わりに僕がSNSに登録してさ。ついでにイチイの作った曲を無断でネットに上げてたら、栗林カナタがコメントくれたんだよね」
「あれ、本当にびっくりしたんですから! いくら先生でも勝手にやったことにはぼく、まだ怒ってます」
「ごめん、ごめんって。それからインターネット上の『梁間ヨウ』の運用について話し合ったんだ。僕はイチイが作った曲は、ただサンプルデータとして公開するに留めて、詳細の言及は避けていたし。ただ、まあ、彼女は梁間ヨウを作曲家として認識した。それを逆手にとるかたちで、僕らはネットを拠点に活動をはじめたんだ」
「あの……さきほどから聞いていて思ったのですが、とってませんよね。親御さんの許可」
「はい、ぼくと先生だけの秘密です。意見をくんでもらうことはありますけど、SNS上でのやりとりは先生に任せてますし、ぼく自身は見せてもらったのを眺めるだけです」
さきほどは親に禁止されていると申告していたが、とんだ詭弁だ。
壱伊くん、小学生ながらなかなか肝が据わった御仁ではないか。
幼少期、大人の目が届かない場所を求めて遊んだ経験は、僕にもあるけれども。
「僕は都合がいいと思ったんだよ。顔が見えない、年齢もわからない、実名も隠された環境で自分を試すってのは」
「荒木家の保護者にバレたら?」
「あはは。解雇されるかも。けどさ、イチイは来年には中学入学の年頃になるんだし、親から自由を制限されすぎるのも考えものじゃない?」
梁間さんの主張によれば、彼は荒木家の人々から全幅の信頼を得ているようで、現在は壱伊くんの教育方針についても一任されている。
少年と両親の間には確執はなく、不仲というほどではない。
ただ、母親が学校に行けない壱伊くんをふがいなく感じていることは、ふたりの話ぶりから推察できた。
「ぼく、自分にもなにかできることがあるのだと実感できたことが、うれしかったんです。画面のむこうには、振りむいてくれる人がいるんだって知れて救われた。そういうことって、ありませんか?」
やがて、壱伊少年は、栗林カナタをイメージした曲を作りはじめた。
カナタさん本人への楽曲提供を唆したのは、教師である梁間さんだが、壱伊くんの意志で行っていたことだという。
壱伊くんは裏方役に徹していたが、満足だった。作曲の謝礼は梁間さんが受け取っていたそうで、壱伊くんが自分で管理できる年齢になるまで預かる約束をしていたらしい。
そして、楽曲提供を始めてから一年半が経過したころ。カナタさんから一度、実際に顔を合わせて会いたいとの希望を伝えられた。
「……困りました。だってぼくたちは、ずっとカナタさんにうそをついていたのですから」
壱伊くんは、憧れの彼女に会いたい気持ちを抱えながらも葛藤した。
作曲家・梁間ヨウの正体を知ったら、彼女はきっと失望するに違いない。そう危惧して、梁間さんに望みを託した。
真実を伏せたまま彼女に「自分こそがあなたの作曲家だ」と告げてはくれないかと、頼み込んだのだ。
以来、壱伊くんは、カナタさんに隠し事をした罪悪感に苛まれていた。心優しい彼は「栗林カナタ」と「梁間ヨウ」の関係について最初から悩んでいたのだ。
音楽に愛された少年は、小さな体を震えさせて仮面の底で泣いていた。
「苦しむイチイを見て、僕もいまさらながら自分の行いを恥じたよ。いつかはこうなるんじゃないか、という恐れはあった。結果的に、イチイのことも、カナタのことも、悲しませてしまって不甲斐ないかぎりだ」
きっかけを作った梁間さんも板挟みだったようだ。
伊奈羽市での会合を経てからは、カナタさんとの交流もこれまで以上に密接になり、頻繁に連絡を取り合うようになっていた。それが罪悪感に拍車をかけてしまった。
独り歩きをはじめた虚構は肥大化し、嘘を嘘で固めるうちに、まぼろしの空中楼閣はますます輝きを増幅させた。事実、カナタさんの中で「梁間ヨウ」という虚構は、彼らの手に負えない代物になりかけていた。
そこに、カナタさんから更なる申し出があったという。
「つい先週、相談があったんです。カナタさん、大手音楽事務所から声がかかって、契約を結ぼうかと考えてるって。これからきっと、もっと有名になりますよね」
そうだったのか。
カナタさんから説明がなかったのは、おそらくまだ非公表の情報なのだろう。今回、強引な手段を用いて梁間さんに接触をはかったのも、大手事務所からのスカウトに直面し、今後の出処進退を相談をもちかけるためだとしたら納得ができる。
「だからもう、これが、潮時……ですよね。竜宮城から去る浦島太郎みたいに、楽しい時間はいつか終わりがくるものだから。ぼくたちは、作曲家・梁間ヨウを消すことにしました」
「消す、とは? 具体的にはなにを?」
「ぜんぶです。SNSのアカウントを消して、もう先生との共謀も、曲づくりもやめる。……来年、中学生になるんです。たぶん、また学校に通うことになる。お母さんは、やり直しさせたがってますから」
壱伊くんは眦に溜まった涙をこぼさないようにと必死になりながら、一言ずつ言葉を選びとる。まるで自分自身に言い聞かせているかのようだった。
中学校に通いはじめれば作曲に注げる時間は減るだろう。
視野が広がって興味がうつろったり、新しい目標を得たり、あるいは一緒に遊ぶ友達だってできるかもしれない。
少なくとも、家庭環境と梁間さんとのパーソナルレッスン、そしてカナタさんとの関係でかたちづくられてきた彼の世界は、否応なく広がりをみせるはずだ。
それが彼にとっての正しい選択になるのかは、結果が出るまではわからない。将来という未知に壱伊くん本人も、不安を感じているのだろう。
だって、彼の肩は小刻みに震えている。隣で彼を見守る梁間さんのいたわりを、懸命に振り払うようにしながら。
「カナタさんが、まさか、京都から突然うちまでやってくるなんて考えてなかった。あなたは、伊奈羽市に不慣れなカナタさんを助けてくれた、いい人ですよね。だから、どうか、ぼくのことも助けてくれませんか。お願いします。カナタさんをこれ以上、ぼくらに関わらせないで」
「壱伊くんは、それでいいの?」
心はとっくに決まっていたのだろう。少年の解答に、迷いはなかった。
「……ぼくらの関係はこれきりです。これ以上楽曲提供をするつもりはありません。どうか、カナタさんに『梁間ヨウ』の言葉を伝えてはくれませんか。……これからもがんばってください、って」
ラジオや父親の書架に並んだCD、書物で得た知識をもとに、深みにはまっていた。やがて少年はインターネットを通して、インディーズバンドの歌姫に出会った。
「コンタクトをとってみれば、ってすすめたんだ。けど、イチイは律儀に言いつけを守るいい子だから、黙って見ているだけでいいって。もどかしくなって、代わりに僕がSNSに登録してさ。ついでにイチイの作った曲を無断でネットに上げてたら、栗林カナタがコメントくれたんだよね」
「あれ、本当にびっくりしたんですから! いくら先生でも勝手にやったことにはぼく、まだ怒ってます」
「ごめん、ごめんって。それからインターネット上の『梁間ヨウ』の運用について話し合ったんだ。僕はイチイが作った曲は、ただサンプルデータとして公開するに留めて、詳細の言及は避けていたし。ただ、まあ、彼女は梁間ヨウを作曲家として認識した。それを逆手にとるかたちで、僕らはネットを拠点に活動をはじめたんだ」
「あの……さきほどから聞いていて思ったのですが、とってませんよね。親御さんの許可」
「はい、ぼくと先生だけの秘密です。意見をくんでもらうことはありますけど、SNS上でのやりとりは先生に任せてますし、ぼく自身は見せてもらったのを眺めるだけです」
さきほどは親に禁止されていると申告していたが、とんだ詭弁だ。
壱伊くん、小学生ながらなかなか肝が据わった御仁ではないか。
幼少期、大人の目が届かない場所を求めて遊んだ経験は、僕にもあるけれども。
「僕は都合がいいと思ったんだよ。顔が見えない、年齢もわからない、実名も隠された環境で自分を試すってのは」
「荒木家の保護者にバレたら?」
「あはは。解雇されるかも。けどさ、イチイは来年には中学入学の年頃になるんだし、親から自由を制限されすぎるのも考えものじゃない?」
梁間さんの主張によれば、彼は荒木家の人々から全幅の信頼を得ているようで、現在は壱伊くんの教育方針についても一任されている。
少年と両親の間には確執はなく、不仲というほどではない。
ただ、母親が学校に行けない壱伊くんをふがいなく感じていることは、ふたりの話ぶりから推察できた。
「ぼく、自分にもなにかできることがあるのだと実感できたことが、うれしかったんです。画面のむこうには、振りむいてくれる人がいるんだって知れて救われた。そういうことって、ありませんか?」
やがて、壱伊少年は、栗林カナタをイメージした曲を作りはじめた。
カナタさん本人への楽曲提供を唆したのは、教師である梁間さんだが、壱伊くんの意志で行っていたことだという。
壱伊くんは裏方役に徹していたが、満足だった。作曲の謝礼は梁間さんが受け取っていたそうで、壱伊くんが自分で管理できる年齢になるまで預かる約束をしていたらしい。
そして、楽曲提供を始めてから一年半が経過したころ。カナタさんから一度、実際に顔を合わせて会いたいとの希望を伝えられた。
「……困りました。だってぼくたちは、ずっとカナタさんにうそをついていたのですから」
壱伊くんは、憧れの彼女に会いたい気持ちを抱えながらも葛藤した。
作曲家・梁間ヨウの正体を知ったら、彼女はきっと失望するに違いない。そう危惧して、梁間さんに望みを託した。
真実を伏せたまま彼女に「自分こそがあなたの作曲家だ」と告げてはくれないかと、頼み込んだのだ。
以来、壱伊くんは、カナタさんに隠し事をした罪悪感に苛まれていた。心優しい彼は「栗林カナタ」と「梁間ヨウ」の関係について最初から悩んでいたのだ。
音楽に愛された少年は、小さな体を震えさせて仮面の底で泣いていた。
「苦しむイチイを見て、僕もいまさらながら自分の行いを恥じたよ。いつかはこうなるんじゃないか、という恐れはあった。結果的に、イチイのことも、カナタのことも、悲しませてしまって不甲斐ないかぎりだ」
きっかけを作った梁間さんも板挟みだったようだ。
伊奈羽市での会合を経てからは、カナタさんとの交流もこれまで以上に密接になり、頻繁に連絡を取り合うようになっていた。それが罪悪感に拍車をかけてしまった。
独り歩きをはじめた虚構は肥大化し、嘘を嘘で固めるうちに、まぼろしの空中楼閣はますます輝きを増幅させた。事実、カナタさんの中で「梁間ヨウ」という虚構は、彼らの手に負えない代物になりかけていた。
そこに、カナタさんから更なる申し出があったという。
「つい先週、相談があったんです。カナタさん、大手音楽事務所から声がかかって、契約を結ぼうかと考えてるって。これからきっと、もっと有名になりますよね」
そうだったのか。
カナタさんから説明がなかったのは、おそらくまだ非公表の情報なのだろう。今回、強引な手段を用いて梁間さんに接触をはかったのも、大手事務所からのスカウトに直面し、今後の出処進退を相談をもちかけるためだとしたら納得ができる。
「だからもう、これが、潮時……ですよね。竜宮城から去る浦島太郎みたいに、楽しい時間はいつか終わりがくるものだから。ぼくたちは、作曲家・梁間ヨウを消すことにしました」
「消す、とは? 具体的にはなにを?」
「ぜんぶです。SNSのアカウントを消して、もう先生との共謀も、曲づくりもやめる。……来年、中学生になるんです。たぶん、また学校に通うことになる。お母さんは、やり直しさせたがってますから」
壱伊くんは眦に溜まった涙をこぼさないようにと必死になりながら、一言ずつ言葉を選びとる。まるで自分自身に言い聞かせているかのようだった。
中学校に通いはじめれば作曲に注げる時間は減るだろう。
視野が広がって興味がうつろったり、新しい目標を得たり、あるいは一緒に遊ぶ友達だってできるかもしれない。
少なくとも、家庭環境と梁間さんとのパーソナルレッスン、そしてカナタさんとの関係でかたちづくられてきた彼の世界は、否応なく広がりをみせるはずだ。
それが彼にとっての正しい選択になるのかは、結果が出るまではわからない。将来という未知に壱伊くん本人も、不安を感じているのだろう。
だって、彼の肩は小刻みに震えている。隣で彼を見守る梁間さんのいたわりを、懸命に振り払うようにしながら。
「カナタさんが、まさか、京都から突然うちまでやってくるなんて考えてなかった。あなたは、伊奈羽市に不慣れなカナタさんを助けてくれた、いい人ですよね。だから、どうか、ぼくのことも助けてくれませんか。お願いします。カナタさんをこれ以上、ぼくらに関わらせないで」
「壱伊くんは、それでいいの?」
心はとっくに決まっていたのだろう。少年の解答に、迷いはなかった。
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