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9 会いたくないのに
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アディニーとは学校は同じだけれどクラスは違い、朝の苦手なアディニーは毎朝遅刻寸前だし、僕は馬車止まりが混むのが嫌で早めに出る。騎士科と文官科と専攻も違う為わざわざ会おうと思わなければほぼ校内で会う事は無い。
テストが近いから昼休みもサロンで勉強したいと言い訳をして予約したサロンに籠ってしまえば、一番会う可能性のあった時間でさえ確率は限りなくゼロ%になる。
とにかく今はアディニーに会いたくなかった。
自分が、大事にしていたつもりの幼馴染をどこか下に見ていた事に気付いてしまった。
考えれば考えるほど自分が醜い生き物だと思い知る。
弟なんて可愛いものじゃない。無意識にアディニーと自分を比較して、アディニーが自分よりも劣っているというその結果に安心して、そんな事に依存しかけていた。
そしてそんな存在であるアディニーに同情された事に勝手に屈辱を感じている。
アディニーは本当にただ単に僕に悪いと思っただけなんだろう。
僕ならあの手紙をもっと大切に扱うだろうと。そこに悪感情なんて微塵も無い。
僕だけが、醜い。
綺麗で可愛いアディニーは心まで綺麗だ。
どんな神様の悪戯か精神だけは年を繰って、純粋さなんて失った。
前世なんて関係ないなんて思って毎日を過ごしていたのに、どうしても言葉の裏を考えてしまうのはどんな小さな情報も丁寧に扱えという貴族としての父の教えよりも、前世からの卑屈な性格かもしれない。
一般社会人のくせに周りの反応をいちいち気にして、外面だけは綺麗に繕って生きてきた。
自分が傷つかないように。
どんな仕事で、家族構成や恋人の有無すら覚えていないくせに、そんなロクでもない事だけ覚えている。
こんな記憶なんていらなかった。
神様って奴は、どんな気持ちで僕に前世の記憶を残したのか。
・・・どうせ試しに記憶残したまま生まれ変わったらどんな生き物に育つかなーとか、適当に遊んでんだろ。
―――――ああ、心が荒んで神様さえ罵ってる。何様だろう。
結局、勉強したいという名目で借りたサロンでは、開いたノートを目の前にひとり悶々としただけで終わってしまった。
「もうすぐ昼休みが終わってしまいますよ」と侍従に声を掛けられ、食べ掛けのサンドイッチを急いで口に詰め込んだ。
「何か心配事がおありでしょうか?」と心配そうに尋ねる侍従に、「大丈夫」となけなしのプライドで言い切り部屋を出る。
「―――っあ」
廊下を歩き出すと同時、小さく聞こえてきた声はとても聴き慣れた声で。
「―――ごきげんよう、アディニー様」
にっこりと挨拶をすると彼は一瞬ビクっと怯えたように震え、そして「ごきげんよう、デュオニーソス様」とどう見てもぎこちない笑顔を見せた。
テストが近いから昼休みもサロンで勉強したいと言い訳をして予約したサロンに籠ってしまえば、一番会う可能性のあった時間でさえ確率は限りなくゼロ%になる。
とにかく今はアディニーに会いたくなかった。
自分が、大事にしていたつもりの幼馴染をどこか下に見ていた事に気付いてしまった。
考えれば考えるほど自分が醜い生き物だと思い知る。
弟なんて可愛いものじゃない。無意識にアディニーと自分を比較して、アディニーが自分よりも劣っているというその結果に安心して、そんな事に依存しかけていた。
そしてそんな存在であるアディニーに同情された事に勝手に屈辱を感じている。
アディニーは本当にただ単に僕に悪いと思っただけなんだろう。
僕ならあの手紙をもっと大切に扱うだろうと。そこに悪感情なんて微塵も無い。
僕だけが、醜い。
綺麗で可愛いアディニーは心まで綺麗だ。
どんな神様の悪戯か精神だけは年を繰って、純粋さなんて失った。
前世なんて関係ないなんて思って毎日を過ごしていたのに、どうしても言葉の裏を考えてしまうのはどんな小さな情報も丁寧に扱えという貴族としての父の教えよりも、前世からの卑屈な性格かもしれない。
一般社会人のくせに周りの反応をいちいち気にして、外面だけは綺麗に繕って生きてきた。
自分が傷つかないように。
どんな仕事で、家族構成や恋人の有無すら覚えていないくせに、そんなロクでもない事だけ覚えている。
こんな記憶なんていらなかった。
神様って奴は、どんな気持ちで僕に前世の記憶を残したのか。
・・・どうせ試しに記憶残したまま生まれ変わったらどんな生き物に育つかなーとか、適当に遊んでんだろ。
―――――ああ、心が荒んで神様さえ罵ってる。何様だろう。
結局、勉強したいという名目で借りたサロンでは、開いたノートを目の前にひとり悶々としただけで終わってしまった。
「もうすぐ昼休みが終わってしまいますよ」と侍従に声を掛けられ、食べ掛けのサンドイッチを急いで口に詰め込んだ。
「何か心配事がおありでしょうか?」と心配そうに尋ねる侍従に、「大丈夫」となけなしのプライドで言い切り部屋を出る。
「―――っあ」
廊下を歩き出すと同時、小さく聞こえてきた声はとても聴き慣れた声で。
「―――ごきげんよう、アディニー様」
にっこりと挨拶をすると彼は一瞬ビクっと怯えたように震え、そして「ごきげんよう、デュオニーソス様」とどう見てもぎこちない笑顔を見せた。
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