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8 荒れる心
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「来週の週末、お茶会にご招待だって。場所は、「それ、内緒じゃないんですか?噂では一人で来るようにとか内緒でなんて書かれていたと」
アディニーが読み上げていく内容を聞きたくなくて、聞きかじった噂話で遮った。
年は同じ、身長もほぼ変わらない。顔はさすがに似ていないけれど、社交界の白百合と謳われた母上に似た容姿は悪くない筈。家格も同じ、家だって隣で、私とアディニーの何が違って、私にはこの招待状を頂けなかった?
・・・あの方の好みなんて一切知らない。
そんなことを考えて、私は、私にだけお手紙が頂けなかった事がショックだったのだと自覚してしまった。
私が、あの方の好みに当て嵌まらない事が。
どうしよう。これではまるで、アディニーに嫉妬しているみたいじゃないか。
私の言葉にキョトンとするアディニーに、先程の言葉はわざとらしかっただろうか?と内心冷や汗が出る。
「あ、ごめーん!書いてあったよ。内密にだって!」
「いや、そういう内容も込みで”内密に”でしょう?」
「あ、そっか!」
そうだねー!なんて言いながらカードを適当に封筒にしまうアディニーの姿に、胸の中がモヤモヤする。
宛名はあの方の直筆だろう。見覚えのある几帳面な字だった。
私ならもっと丁寧に扱うのに。
トレイも使わずテーブルの端に放って置かれた手紙に、そう思わずにはいられなかった。
「でもさあ「気軽に」なんて書いてあるけど、絶対気軽になんて行けないし、手土産とかどうしたらいいと思う?」
「これー」と言いながら、パタッと封筒の上に手を乗せるアディニーにさすがにちょっと腹が立って、言うつもりが無かったことを言ってしまった。
「アディニー、その手紙、殿下の直筆ですよ。もっと大切に扱った方がいいですよ」
発した声には明らかに棘があった。もう、完全に八つ当たりだ。直後から自己嫌悪に陥る。
なのに、ちょっと天然なところのあるアディニーはそんな事には微塵も気付かず、
「え!?これ殿下の直筆なの!?」と驚愕した顔を見せるばかりだ。
そして、サッと封筒に乗せていた手を避け、誰かに見られていないかとキョロキョロと周りを確認している。
さっき自分で人払いしたでしょう。
「誰にも見られていないよね!?」
「・・・誰もいないですよ。でも、不敬だからやめましょうね」
「うん、ごめんねデュオニーソス」
「謝るなら僕にじゃなくて殿下にでしょう」
まあ、実際謝ったら苦笑されるだけでしょうけれど。
「殿下は小さい事は気にさない方ですが」「ううん、デュオニーソスにごめんねって」
「え?」
私に、ごめんね?
「なぜ?」
両手の指先を合わせ、気まずそうに上目遣いをするアディニーに訊き返すと、それこそ言いにくそうに視線を逸らした。
「・・・だって」
「だって?」
顔を逸らしながらもこちらを伺うようにチラリと視線を寄越す。器用だな。
「・・・昔の事とか言いながら、殿下の字とか、覚えてるんでしょ?
なのに、僕、殿下からの手紙を雑に扱っちゃって・・・」
聞いた瞬間、カッと胸の奥が熱くなるのを感じた。
どうして!
どうして!!
どうして!!!
僕がそんな目で見られなくちゃいけない!?
可愛がられていたくせに、手紙のひとつももらってなくて、可哀そう!?
せっかくもらった、僕が頂いていない殿下からの手紙を雑に扱ってごめんね!?
アディニーの性格なら、ワザとした言い回しではないだろう。
けれど、その視線は僕に同情するものだった。
同い年の幼馴染だけれど、その性格から弟のように感じていたアディニー同情されるなんて、どこか屈辱のように感じてしまった。
そんな事を感じてしまう事すら嫌だというのに。
「・・・別に、覚えたものを忘れないだけです。覚えていようとしていた訳ではありませんよ」
「そう、なの?」
「アディニーは僕の事など気にせず、お茶会へ行ってきてください。
殿下は美味しいスイーツをたくさんご存じですよ。楽しんでくださいね」
内心の、嵐のような感情を隠してアディニーに微笑む。
物心ついた頃から一緒にいたアディニーに隠しきれていたかは分からないけれど、自分の醜い感情を曝け出す事だけは避けられたと思う。
それでもどこかギクシャクした雰囲気は残ってしまい、二人だけのお茶会は短い時間で解散を告げた。
「また、ね。デュオニーソス様」
「ええ、また。アディニー様。ごきげんよう」
二人ともそれと分かる作り笑顔だったのを覚えている。
アディニーが読み上げていく内容を聞きたくなくて、聞きかじった噂話で遮った。
年は同じ、身長もほぼ変わらない。顔はさすがに似ていないけれど、社交界の白百合と謳われた母上に似た容姿は悪くない筈。家格も同じ、家だって隣で、私とアディニーの何が違って、私にはこの招待状を頂けなかった?
・・・あの方の好みなんて一切知らない。
そんなことを考えて、私は、私にだけお手紙が頂けなかった事がショックだったのだと自覚してしまった。
私が、あの方の好みに当て嵌まらない事が。
どうしよう。これではまるで、アディニーに嫉妬しているみたいじゃないか。
私の言葉にキョトンとするアディニーに、先程の言葉はわざとらしかっただろうか?と内心冷や汗が出る。
「あ、ごめーん!書いてあったよ。内密にだって!」
「いや、そういう内容も込みで”内密に”でしょう?」
「あ、そっか!」
そうだねー!なんて言いながらカードを適当に封筒にしまうアディニーの姿に、胸の中がモヤモヤする。
宛名はあの方の直筆だろう。見覚えのある几帳面な字だった。
私ならもっと丁寧に扱うのに。
トレイも使わずテーブルの端に放って置かれた手紙に、そう思わずにはいられなかった。
「でもさあ「気軽に」なんて書いてあるけど、絶対気軽になんて行けないし、手土産とかどうしたらいいと思う?」
「これー」と言いながら、パタッと封筒の上に手を乗せるアディニーにさすがにちょっと腹が立って、言うつもりが無かったことを言ってしまった。
「アディニー、その手紙、殿下の直筆ですよ。もっと大切に扱った方がいいですよ」
発した声には明らかに棘があった。もう、完全に八つ当たりだ。直後から自己嫌悪に陥る。
なのに、ちょっと天然なところのあるアディニーはそんな事には微塵も気付かず、
「え!?これ殿下の直筆なの!?」と驚愕した顔を見せるばかりだ。
そして、サッと封筒に乗せていた手を避け、誰かに見られていないかとキョロキョロと周りを確認している。
さっき自分で人払いしたでしょう。
「誰にも見られていないよね!?」
「・・・誰もいないですよ。でも、不敬だからやめましょうね」
「うん、ごめんねデュオニーソス」
「謝るなら僕にじゃなくて殿下にでしょう」
まあ、実際謝ったら苦笑されるだけでしょうけれど。
「殿下は小さい事は気にさない方ですが」「ううん、デュオニーソスにごめんねって」
「え?」
私に、ごめんね?
「なぜ?」
両手の指先を合わせ、気まずそうに上目遣いをするアディニーに訊き返すと、それこそ言いにくそうに視線を逸らした。
「・・・だって」
「だって?」
顔を逸らしながらもこちらを伺うようにチラリと視線を寄越す。器用だな。
「・・・昔の事とか言いながら、殿下の字とか、覚えてるんでしょ?
なのに、僕、殿下からの手紙を雑に扱っちゃって・・・」
聞いた瞬間、カッと胸の奥が熱くなるのを感じた。
どうして!
どうして!!
どうして!!!
僕がそんな目で見られなくちゃいけない!?
可愛がられていたくせに、手紙のひとつももらってなくて、可哀そう!?
せっかくもらった、僕が頂いていない殿下からの手紙を雑に扱ってごめんね!?
アディニーの性格なら、ワザとした言い回しではないだろう。
けれど、その視線は僕に同情するものだった。
同い年の幼馴染だけれど、その性格から弟のように感じていたアディニー同情されるなんて、どこか屈辱のように感じてしまった。
そんな事を感じてしまう事すら嫌だというのに。
「・・・別に、覚えたものを忘れないだけです。覚えていようとしていた訳ではありませんよ」
「そう、なの?」
「アディニーは僕の事など気にせず、お茶会へ行ってきてください。
殿下は美味しいスイーツをたくさんご存じですよ。楽しんでくださいね」
内心の、嵐のような感情を隠してアディニーに微笑む。
物心ついた頃から一緒にいたアディニーに隠しきれていたかは分からないけれど、自分の醜い感情を曝け出す事だけは避けられたと思う。
それでもどこかギクシャクした雰囲気は残ってしまい、二人だけのお茶会は短い時間で解散を告げた。
「また、ね。デュオニーソス様」
「ええ、また。アディニー様。ごきげんよう」
二人ともそれと分かる作り笑顔だったのを覚えている。
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