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優未

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あの夜会以降、毎日とは言わないが、彼は我が家を訪れ一緒にお茶をする。この人はこんなに頻繁に仕事を抜けてこられるくらい暇ではないはず。なぜなら、巻き戻る前に彼は隣国に遠征に行っていたからだ。

「今日もいらしたのですか?」

「いい加減、いい返事がほしいのだが」

イエスと言うまでこの人は来るつもりなのだろうか。

「あなたのような由緒正しい家柄の方とは釣り合いません」

「我が家は魔法の才で成り上がっただけだ。気にしなくていい。結婚相手に細かい条件などない」

「でも、何故私を」

「君が好きだ。それで十分だろう?」

まっすぐこちらを見つめる視線に嘘はないように思う。それならこれは断らないといけない。

「好きな人がいるんです。…多分、もう会えない人」

「君に思ってもらえるだなんて羨ましいな」

「私、魔法は使えないんですけど、人それぞれがもつ魔力の違いは認識できるんです。あなたと何度も会っているのは、あなたの魔力が少しだけその人のものに似ていたから。懐かしくなってしまって」

一刻も早く婚約者を探したいが、利用するなら私のことを好きじゃない人がいい。それなのにこの人を拒否しきれないのは助けてもらった恩だけではない。本当に自分勝手な理由だ。

「…その能力について知っている人は他にいる?」

「父だけです」

「誰にも言わないほうがいい」

「はぁ…?」

「君は、好きな男がいるから私との婚約を拒否するのか?」

急に話を戻される。

「だが、好きな男がいながら婚約者を探しているのも事実だろう。詳しい事情は知らないが、その男はきっと幸せだったと思う」

あの人と似た魔力でそんなこと言わないで。

「あの人は私のことなんて…」

”世間知らずのお嬢さんを騙すのは簡単だったよ”
”調査に協力してくれた礼だ、君のことは罪に問わないであげるよ”

逃がしても何の脅威にもならない、大した利用価値もない。そんな存在でしかなかった。

「その男のことを思ったままでいい。そのままの君と結婚したい」

こんな風に言われたら、どう断ればいいか私にはわからない。私の中の迷いや悩みもまとめてこの人なら受け止めてくれそうな気がした。

「あなたは後悔しませんか?」

「一生をかけて振り向かせてみせるよ」


今日はサフィールと初めて会った日だった。

私が行動を変えたから、相手方の動きにも影響が出たのだろうか。シオンと婚約したということは、もう彼と会うことはない?私を利用するためだと分かっていても、会えないことが悲しかった。


”その能力のことは誰にも言わないほうがいい”

―――あの時と同じことを言うのね

サフィールの魔力と似ているからではなく、この魔力を私は知っている。彼は、処刑される前、投獄された私のもとを訪れた人なのだから。登場人物が変わっても、父が無謀な企みをしている事実は変わらない。目の前で愛を乞う男が前回の彼の役回りを担う可能性もあるだろう。

だけど今はシオンを信じたい。

そう思った。
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