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提出された書類に目を通し、この場に集まった全員が息を飲んだ。
「クレマチスがクーデターを計画している証拠だ。隣国から帰国し次第捕える」
「何をおっしゃっているのですか、殿…下」
「お前らはこの報告書が読めないのか。サフィールがまとめたものだ」
「それは本来の書類の上に魔法で書かれたものですよ」
「どういうことだサフィール」
カルミエが手にしている書類は機密保持のため、決められた呪文でないと読めないように作られている。この人はそれに気付かない。もちろんその内容にも。
「仕方がない。私が作成したものですから1つ1つ見ていきましょうか」
魔法が解け、現れる文書にはエンレ殿下を貶めるために行われた不正の数々が列挙されている。それらの詳細な報告が終わると、次はカルミエ自身についての調査結果がまとめられている。
”魔力は微弱かつ魔法を使えない”
「そんなはずはない。式典で魔法を使っていらっしゃった。魔力も確かに殿下のものであると」
「私が毎回補助をしていた」
「サフィール何を言っている。お前は近衛になって1年足らず。しかも今年はほぼ全ての式典をエンレ殿下が担当されていた。補助も何もしようがない」
「皆さん、仲間の顔をお忘れですか?」
指を鳴らし姿を変える。それは約1年前に亡くなったはずの近衛騎士の姿だった。
「それか、この姿の方が在籍期間は長かったかな」
そう言いながら次々と姿を変えると全員の顔がどんどん青くなっていく。
「秘密がバレないようにと何度も殺される身にもなっていただきたい」
「貴様何者だ」
そんなこと聞かずとも、こんな芸当ができる人間はごくわずかだというのに。
「この調査書の作成者の欄をご覧ください」
―――シオン・ルドベキア
「ルドベキアだと」
名前を呼ばれたのと同時に変化の術を解く。
「私は嫌われているとばかり思っておりましたので、頼りにされて光栄至極に存じます」
「魔法が使えないと分かった途端、父上は私のことを見向きもしなくなった。かつて魔法が使えない王だっていたんだ。だから私だって魔法を使えると証明できれば」
「私は陛下の許可の元、補助を行っておりました。それにエンレ殿下は2人で支え合ってこの国を統治していくことを望んでいた」
「魔力がないことに苦しんだ俺の気持ちがお前に分かるか?支え合う?結局父はエンレを選んだ。魔力の強さだけでエンレに王位を譲るだと?認められるわけがないだろ……俺の実力を認めないやつが悪い!」
誰も魔力の強さのみで判断しているわけではない。魔力の質が見られる先生は、長い間沈黙を守ってきた。当時まだ幼い王子2人に伝えるのは酷だとしてその時がくるまで―――
「遅れてすまない。話はどこまで進んでいるかな」
「残りは最後の項目のみです、エンレ殿下」
「そう。じゃあ丁度いいタイミングだったね」
エンレ殿下が振り向いた先には男が2人―――デュランテ・クレマチスと隣国の軍部大臣クレオ・メグバがいた。
公の場では決して口にしてはいけないこと。しかし、魔法に少しでも通じているものなら感じ続けていた違和感。第二王子エンレ殿下を支持するものの大半は、魔力の強さを主張しているがそれは表向きのものにすぎない。そもそもどちらを選ぶかなどという選択肢が存在しないのである。
報告書の最後にはこう書かれている。
”第一王子カルミエは国王陛下の血を引いていない”
「クレマチスがクーデターを計画している証拠だ。隣国から帰国し次第捕える」
「何をおっしゃっているのですか、殿…下」
「お前らはこの報告書が読めないのか。サフィールがまとめたものだ」
「それは本来の書類の上に魔法で書かれたものですよ」
「どういうことだサフィール」
カルミエが手にしている書類は機密保持のため、決められた呪文でないと読めないように作られている。この人はそれに気付かない。もちろんその内容にも。
「仕方がない。私が作成したものですから1つ1つ見ていきましょうか」
魔法が解け、現れる文書にはエンレ殿下を貶めるために行われた不正の数々が列挙されている。それらの詳細な報告が終わると、次はカルミエ自身についての調査結果がまとめられている。
”魔力は微弱かつ魔法を使えない”
「そんなはずはない。式典で魔法を使っていらっしゃった。魔力も確かに殿下のものであると」
「私が毎回補助をしていた」
「サフィール何を言っている。お前は近衛になって1年足らず。しかも今年はほぼ全ての式典をエンレ殿下が担当されていた。補助も何もしようがない」
「皆さん、仲間の顔をお忘れですか?」
指を鳴らし姿を変える。それは約1年前に亡くなったはずの近衛騎士の姿だった。
「それか、この姿の方が在籍期間は長かったかな」
そう言いながら次々と姿を変えると全員の顔がどんどん青くなっていく。
「秘密がバレないようにと何度も殺される身にもなっていただきたい」
「貴様何者だ」
そんなこと聞かずとも、こんな芸当ができる人間はごくわずかだというのに。
「この調査書の作成者の欄をご覧ください」
―――シオン・ルドベキア
「ルドベキアだと」
名前を呼ばれたのと同時に変化の術を解く。
「私は嫌われているとばかり思っておりましたので、頼りにされて光栄至極に存じます」
「魔法が使えないと分かった途端、父上は私のことを見向きもしなくなった。かつて魔法が使えない王だっていたんだ。だから私だって魔法を使えると証明できれば」
「私は陛下の許可の元、補助を行っておりました。それにエンレ殿下は2人で支え合ってこの国を統治していくことを望んでいた」
「魔力がないことに苦しんだ俺の気持ちがお前に分かるか?支え合う?結局父はエンレを選んだ。魔力の強さだけでエンレに王位を譲るだと?認められるわけがないだろ……俺の実力を認めないやつが悪い!」
誰も魔力の強さのみで判断しているわけではない。魔力の質が見られる先生は、長い間沈黙を守ってきた。当時まだ幼い王子2人に伝えるのは酷だとしてその時がくるまで―――
「遅れてすまない。話はどこまで進んでいるかな」
「残りは最後の項目のみです、エンレ殿下」
「そう。じゃあ丁度いいタイミングだったね」
エンレ殿下が振り向いた先には男が2人―――デュランテ・クレマチスと隣国の軍部大臣クレオ・メグバがいた。
公の場では決して口にしてはいけないこと。しかし、魔法に少しでも通じているものなら感じ続けていた違和感。第二王子エンレ殿下を支持するものの大半は、魔力の強さを主張しているがそれは表向きのものにすぎない。そもそもどちらを選ぶかなどという選択肢が存在しないのである。
報告書の最後にはこう書かれている。
”第一王子カルミエは国王陛下の血を引いていない”
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