俺がモテない理由

秋元智也

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第六話 大移動

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誠治との二人旅は早々に終わった。
大勢の子供達と、数人の老人。
そして神官服の女性。

みんなを連れて魔物が跋扈する森を抜けて、隣町
まで行くことになったからだった。

「これはちょっと大変だったかもね?」
「そうだな……せめて馬車でもあれば……」

出発前に辺りを見回したが、壊れた荷馬車がある
だけで、それを引く馬がいない。

「馬はとうに魔物に殺されてしまいました」
「そうなんですね。では、歩いて移動するしかあ
 りませんね……」
「勇者様、この人数ではどうしても無理が…… 
 ですから……」

聖女レイネは口籠ると何か言いたげだった。
俺はそれをじっと見つめると、口を挟んだ。

「それなら、若くて体力のある者だけ連れて行け
 ばいいんじゃねーの?そう言いたかったのか?」
「………」
「それは…せっかくここまで生き残ったんだ、全
 員連れて行くべきだよ」
「だよな?誠治ならそういうと思ったよ。でも…」

聖女はそんな考えなかったんじゃないのか?
と言いたかった。

まぁ言わなくても分かる。
表情が物語っていたからだった。

「まぁいい。そう言えば、リアカーならあったぜ」
「それなら、足の悪い老人はそれで運ぼう」
「それと、いい方法があるぜ?」

それは、森の中を凍らせるというものだった。

地面が凍ってしまえば、力を入れずとも動かす事
ができる。

これは陸が無限の魔力を持っているからこそでき
る事だった。

「陸なら、そう言ってくれると思っていたよ」
「誠治は誰も見捨てないっていうからな……」

俺だって本当なら、NPCなど助けても無駄だと思
い放置しておきたいところだった。

だが、その中に聖女がいるとなれば話は別だ。

だが、その聖女も非情な考えの人物らしい。

多くを助けるよりも、確実に助かる人間を選ぼう
としている。
それは、最初の会話で理解した。
だが、誠治には言い出せないらしい。

もし、勇者パーティーに必要ならきっとついてく
るだろう。
そう思うと、荷物を積み込むと、出発したのだっ
た。

魔物の動きは、寒さによって遅くなっていた。
誠治の剣で薙ぎ払われると、地面に転がってい
くのだった。

「やっぱり勇者って最初からチートだよな……」
「陸も、今ではチート級の魔法師でしょ?」
「それは努力の結果な!誠治のは違うじゃん。ま
 ぁいいけどさ」

大人数での大移動が始まったのだった。

こうして隣町までは、数日をかけて向かった。
途中、何度も魔物に襲われはしたが、勇者の前では
些細な事だった。

その間も、聖女レイネは、勇者であり誠治をじっと
眺めていたのだった。

全員かける事なく隣町に辿りつくと、教会から騎士
団が派遣されていたのだった。

もう少し待っていれば、救援に向かう手筈だったら
しい。

「俺たちがいなくても助かったのかもな」
「それでも、ここまで来た事に、間違いはないと
 思うよ?あのままだったら、全員が無事だとは
 限らなかったかもしれないじゃないか」

俺には、なるようにしかならないと思うのだが、
誠治はそうではないらしい。

「へいへい、では、俺たちは先に進むとしますか」
「あぁ、そうだね」

無事に届けたのだから、すぐに立ち去ろうとすると
聖女のレイネが前に立ち塞がったのだった。

「勇者様、此度は誠に皆をお助けくださり、あり
 がとうございました。もしよろしければ、私も
 旅にお連れ下さいませんか?」

やうやうしく礼をすると、騎士団から反対の声が
上がった。

「聖女様、それはなりません。身元もわからぬよ
 うな者についていくなど」
「そうです、この男達が、信用に足かどうかも分
 からぬというに……」

騎士団は教会から派遣されている。
その為、勝手な判断で動く事は出来ないのだった。

「聖女って勝手について来ちゃダメなのか?教皇様
 ってのが許可を出せばいいのか?」

俺はパーティーに女性がいると嬉しいという理由だ
けで、言葉を言っていた。

「それはそうですわね。教皇猊下のお許しがあれば
 では、まずは聞いてまいりますわ。」

そう言うと、嬉しそうに騎士団と一緒の行ってしま
った。

「まぁ、そうなるわな」
「僕は、陸さえいればそれでいいと思うよ?だって
 陸のが可愛いじゃないか」
「いやいや、男の俺に可愛いはないだろ?誠治って
 目が悪かったけ?」
「それは酷いなぁ~」

皮肉なのだろうか?いつもの冗談として受け取って
おく事にしたのだった。






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