俺がモテない理由

秋元智也

文字の大きさ
19 / 61

第十九話 魔物それとも眷属?

しおりを挟む
俺は、この村に入ってから奇妙な視線を感じている。
そこは小さな村で、働き盛りの男達が消えるのは一
大事なのだった。

一刻も早く解決したいのだろう。

一旦、視線の先を調べたくて誠治にもこっそり話し
たのだった。

「でも、その視線の先には誰も居ないんだよね?」
「あぁ、どこを見ても誰も居ない。おかしいよな?」
「陸、動物の可能性はある?」
「いやいや。動物がこんな殺気立った視線を送るか
 よっ!絶対に人間だって」
「違う違う。例えば……蝙蝠とかって事」

蝙蝠と聞いて使い魔を思い出す。

魔王幹部にも蝙蝠を使って諜報をしている者がいた。

「それって……まさか…」
「うん、魔王との契約は魔王サイドの魔族には有効
 がだ、別の組織となれば話は別だからね」

せっかく平和になった世界を再び戦乱の渦に呑みこ
ませるわけにはいかなかった。

「魔王以外の連中なら全員潰したはずだろ?」
「取り逃したのかもね…もしくは……」

魔王と手を組んで、魔王の取り決め反対する魔族を
一掃したのが、最近あった出来事だった。

それは、勇者と魔王が初めて共同戦線をおこなった
事を意味していた。

「魔王は、戦いを好まなかった……でも配下も同じ
 とは限らないよね?」
「確かにな……でもさ、それでも農作物を一口づつ 
 齧る理由が分からねーんだよな」
「それは捕まえて聞いてみればいいんじゃないかな」
「まぁ、そうだな。待ち伏せしようじゃねーか」

すぐに村長の家に行くと、休ませてもらう事にした。
そして、夜になってようやく行動開始したのだった。


俺がまずしたのは、魔術結界を張る事だった。

自分には視認阻害をかけてただじっと待つのだ。
その間に、勇者の誠治が見回りと称してわざと松明を
持って見回りに出る。

誠治が通り過ぎた後に、ゆっくりと影が落ちる。
ゆらゆらと明かりがゆらめいて誠治が歩いて行くの
が見える。

俺はただ、じっとしているだけだ。
そして、ガサガサッと音がして一人の男が顔を出し
た。
身なりはシャツ一枚の着古した布を着ており、農地
へとゆっくりと近づく。

頭をガッと掻きむしると、植えてある農作物を引き
抜いた。

尖った牙で噛み付くと、地面にペッと吐き出した。

「何をやってるんだ?」

不思議でならない。
同じような事を繰り返すと、どこからかもう一人現
れると同じ事を繰り返したのだった。
彼らには殺気などない。

では、誰が?

そう思っていると、無数の鳥が飛んできて集まって
行く。
いや、違う。
鳥じゃない。翼を持つ夜の使者。
蝙蝠の大群だった。
1箇所に集まると、人の形を成した。

「あいつは……」

それはかつて魔王に仕えていた吸血鬼の種族の王に
して最後まで人間の勇者と手を組む事を反対してい
た者だった。

確か、魔王領を出て行ったのは覚えている。

他の魔族のように勇者に向かって来なかったので
すっかり忘れていた。

奴の得意なスキルは催眠状態にして自分の思うがま
ま操り、眷属を増やす事だったはずだ。

では、この畑を荒らしている者達は、元は村人?
それとも、もう眷属になっているのだろうか?

眷属なら、捕まえて朝日を待てばいい。
もし、まだ中途半端なのだとしたら……。

生きる屍のように村の人間を襲うかもしれなかった。

なんにしろ、やる事は一つだ。

まずは足止めして拘束。
その後の事は、その時考えればいい。

『風の刃よ、我が前の敵を穿て!熱き炎よ、燃え
 上がり周りを囲え』

俺の使える最大火力を持って封じる。

辺りを突風が吹くと畑を荒らしていた男達の足元
をすり抜けた。

作物ギリギリと風の刃が通り過ぎると両足が簡単
にちぎれた。

周りを囲むように炎の檻が出来ると、出ようとし
た瞬間、灼熱の炎が身体を焼くように出来ている。

「こんなところに隠れているとは……勇者のオマ
 ケくん」
「あ″ぁ?なんだと?」

俺が一瞬、自分の事をオマケと言った男を睨みつ
けたのだった。

「あぁ、そういえば魔術師だったんですね~、そ
 のつたない魔法で私の子達を捕まえておけると
 でも?」

ニヤニヤといやらしく笑うと、再び蝙蝠に変化し
て暗闇に消えていった。

今も炎の檻の中には、さっきまで畑を荒らしてい
た男達がおとなしくしていた。

「何言ってやがるんだ?ただの負け惜しみだろ?」
「陸!」

誠治の声に俺は振り返ると、畑の真ん中で炎の柱
が上がった。

「なにっ!」

さっきまで大人しくしていた男達がいきなり暴れ
出したのだった。
身体は炎に焼かれ、身体が焼ける匂いがする。

それなのに、行動を止めなかった。

足を切断されたにも関わらず、這ってでも動き出
そうとしたのだった。

「なんだよ、こいつら…」
『風よ、我が前に渦を巻き、頭上へと巻き上げよ』

一瞬で頭上まで巻き上げると、地面に一気に落下
したのだった。

「これで……うげっ……まだ動いてるっ!」
「僕が止めを刺すよ」

駆けてきた誠治が剣を抜くと脳をひとつきした。

ぴくりとも動かなくなると、やっと終わったのだ
と知る。

「やっぱり、アゾビエンテという魔族の仕業だね」
「あぁ、間違いない。あの野郎、俺を勇者のオマ
 ケって言いやがった!全くふざけた奴だぜ」

朝の日が差し込むと、さっき止めをさした男達は
灰へと変わって行ったのだった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

新生活始まりました

たかさき
BL
コンビニで出会った金髪不良にいきなり家に押しかけられた平凡の話。

唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。 大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる

水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。 「君のすべては、俺が管理する」 戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。 これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

処理中です...