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第三十六話 サキュバスの協力
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案内されたのは、ボロい屋敷だった。
窓も割れ、ドアも建て付けが悪いのか半開きだ
った。
「これはまた……すごいな……」
「こんなところに人がいるとは思わねーだろ?」
そう言うと、普通に窓から中へと入っていく。
「やっぱりドアからは入らないんだね?」
「あぁ、そこを使うのは客以外の連中だ。客は
ここから入るんだ。そうしないとあいつはす
ぐに逃げちまうからな」
あいつと言うのは、情報屋トーテンの事だろう。
実際、トーテンと言うのはただの情報屋の名前
ではない。
とある情報屋組織の数名に与えられる名前らし
い。
優秀で、正確な情報をいち早く誰よりも提供で
きる者だけが名乗る事のできる名前であった。
だから、街ごとに姿が違っているのだ。
「こっちだ、早く来いよ」
「あぁ……」
わずかな月明かりを頼りに少年達は屋敷の地下
へと降りていく。
地下という割にさっきまでの一階と比べて蜘蛛
の巣もなく、綺麗に掃除が行き届いていた。
「客を連れてきたぞ~」
「入りなさい」
中から声が響く。
それは女性のような、高い声だった。
中に入ると、蝋燭の薄明かりがぼんやりと見える。
その奥に座っている一人のフードを被った人の姿
があった。
「貴方がこの街の情報屋トーテンですか?」
誠治が声をかけると、フード姿の人はゆっくりと
頷いたのだった。
「私が、この街のトーテンだよ、勇者……だね?
何の用かな?魔族のしもべなら……いや、バン
パイアと言った方がいいかね?あやつはまだこ
の街の近くにおるよ。被害はまだ出ているから
ねぇ~」
「それは本当か!」
「あぁ、森の奥で戦闘があったじゃろう?その後
再び人が消えた。それはまた子供だという」
「まさか、それはいつの事ですか!」
誠治が飛びかからんばかりに近寄ると、スッと
手で制したのだった。
「危険が迫っておる。この街でよくない事が起こ
る……船で怪しげな者達が入ってきている。そ
れも、数人も……」
「それは魔族という事ですか?それなら……」
多分、魔王様が手配してくれた助っ人のような
者達だろう。
魔族のことは魔族に聞くのが早いというが、やっ
ぱり声をかけて正解だと思う。
「その者達が港に来たが、誰も怪しまんかった。
あれは、魔眼じゃろうて。その中でも魅了は
人の記憶をも改ざんする……その類じゃな」
「となると、魔眼持ちはサキュバスって事かな」
「よく、探すんじゃな。何か分かったらこの子
らを通じて連絡しよう」
「分かりました。港に行ってその者と合流しま
す」
「それがよかろう。」
陸の看病の間に、また子供が攫われたと聞いて
少しショックだった。
あの時、取り逃したのが悔やまれる。
もっと、深追いすれば倒せたかもしれない。
だが、あの時は、そうしなかった。
いや、できなかったのだ。
陸が倒れたのを見て、冷静な判断を誤ったの
だ。
屋敷を出ると、宿に一旦戻ってきた。
朝日が見えると、1日が始まったのだと知る。
誠治は数時間だけ寝ると、再び出かけた。
トーテンの情報から、港から入ってきたであろ
う魔族を探す為だった。
それは、すぐに見つけられた。
一際きわどい服を着て、素肌を晒しているから
だった。
「サキュバスのネロか?」
「あら、勇者ちゃん。お久しぶり~元気だった?」
「そうだな……一応はと言った方がいいかもな」
軽い挨拶をしてきたのは、サキュバスのネロだっ
た。
彼女の仲間を勇者誠治は何人も殺している。
だが、彼女は停戦が決まってからは、恨む事なく
平然と話しかけてきたのだ。
その横にいるもう一人のサキュバスは勇者をじっ
と睨んでいる。
「こちらは、ナオ。私の魔眼は行動を抑制するも
のなのよ。そして彼女は悟りの魔眼の持ち主よ」
「悟り?それはどういった魔眼なんだ?」
「その名の通り、全を見抜く目って事よ。彼女に
見えないものはないって事」
「なら、奴の眷属も見付けれるのか?」
「まぁ~、近くにいればね!」
ネロは勇者に友好的だが、ナオは違う。
本当に協力してくれるのかどうか…。
誠治は少し不安だった。
まずは、パーティーメンバーと合流しようと思う
と宿へと案内した。
「人間の街はわかりにくいわね……」
「でも、美味しそうな物がいっぱいあるわ。ちょ
っと寄って行かない?」
ナオは不機嫌そうな声を出し、ネロは好奇心いっ
ぱいの声で言った。
同じサキュバスでも、全く正反対だ。
「後で行こう。今は、報告が先だ」
「おっけ、おっけ。じゃ~君たちの本部へ行きま
しょ」
宿に帰ると、だいぶんと回復した陸が待っていた
のだった。
「誠治、おかえり」
「ただいま。今日は起きてて平気?」
「あぁ、倒れて悪かったな?なんかいきなり魔力
がごっそりなくなってさぁ~」
魔力枯渇で熱を出したという訳だった。
それにしても、いきなりの事で勇者も、陸も気づ
けなかった。
そして何より、聖女が回復をかける事を拒んだせ
いで、余計に日数がかかってしまったのだった。
部屋には、レイネとモンドも集まっていた。
「まぁ、貴方は……」
「また会ったわね!この乳でか女!」
「聖女の私に喧嘩売っているのかしら?受けて立
つわよ?」
平和条約が締結している時点で、魔王様が争いを
起こすような魔族は徹底的に排除したのだった。
それが最初の勇者と一緒に行う、共同作業となっ
たのだった。
窓も割れ、ドアも建て付けが悪いのか半開きだ
った。
「これはまた……すごいな……」
「こんなところに人がいるとは思わねーだろ?」
そう言うと、普通に窓から中へと入っていく。
「やっぱりドアからは入らないんだね?」
「あぁ、そこを使うのは客以外の連中だ。客は
ここから入るんだ。そうしないとあいつはす
ぐに逃げちまうからな」
あいつと言うのは、情報屋トーテンの事だろう。
実際、トーテンと言うのはただの情報屋の名前
ではない。
とある情報屋組織の数名に与えられる名前らし
い。
優秀で、正確な情報をいち早く誰よりも提供で
きる者だけが名乗る事のできる名前であった。
だから、街ごとに姿が違っているのだ。
「こっちだ、早く来いよ」
「あぁ……」
わずかな月明かりを頼りに少年達は屋敷の地下
へと降りていく。
地下という割にさっきまでの一階と比べて蜘蛛
の巣もなく、綺麗に掃除が行き届いていた。
「客を連れてきたぞ~」
「入りなさい」
中から声が響く。
それは女性のような、高い声だった。
中に入ると、蝋燭の薄明かりがぼんやりと見える。
その奥に座っている一人のフードを被った人の姿
があった。
「貴方がこの街の情報屋トーテンですか?」
誠治が声をかけると、フード姿の人はゆっくりと
頷いたのだった。
「私が、この街のトーテンだよ、勇者……だね?
何の用かな?魔族のしもべなら……いや、バン
パイアと言った方がいいかね?あやつはまだこ
の街の近くにおるよ。被害はまだ出ているから
ねぇ~」
「それは本当か!」
「あぁ、森の奥で戦闘があったじゃろう?その後
再び人が消えた。それはまた子供だという」
「まさか、それはいつの事ですか!」
誠治が飛びかからんばかりに近寄ると、スッと
手で制したのだった。
「危険が迫っておる。この街でよくない事が起こ
る……船で怪しげな者達が入ってきている。そ
れも、数人も……」
「それは魔族という事ですか?それなら……」
多分、魔王様が手配してくれた助っ人のような
者達だろう。
魔族のことは魔族に聞くのが早いというが、やっ
ぱり声をかけて正解だと思う。
「その者達が港に来たが、誰も怪しまんかった。
あれは、魔眼じゃろうて。その中でも魅了は
人の記憶をも改ざんする……その類じゃな」
「となると、魔眼持ちはサキュバスって事かな」
「よく、探すんじゃな。何か分かったらこの子
らを通じて連絡しよう」
「分かりました。港に行ってその者と合流しま
す」
「それがよかろう。」
陸の看病の間に、また子供が攫われたと聞いて
少しショックだった。
あの時、取り逃したのが悔やまれる。
もっと、深追いすれば倒せたかもしれない。
だが、あの時は、そうしなかった。
いや、できなかったのだ。
陸が倒れたのを見て、冷静な判断を誤ったの
だ。
屋敷を出ると、宿に一旦戻ってきた。
朝日が見えると、1日が始まったのだと知る。
誠治は数時間だけ寝ると、再び出かけた。
トーテンの情報から、港から入ってきたであろ
う魔族を探す為だった。
それは、すぐに見つけられた。
一際きわどい服を着て、素肌を晒しているから
だった。
「サキュバスのネロか?」
「あら、勇者ちゃん。お久しぶり~元気だった?」
「そうだな……一応はと言った方がいいかもな」
軽い挨拶をしてきたのは、サキュバスのネロだっ
た。
彼女の仲間を勇者誠治は何人も殺している。
だが、彼女は停戦が決まってからは、恨む事なく
平然と話しかけてきたのだ。
その横にいるもう一人のサキュバスは勇者をじっ
と睨んでいる。
「こちらは、ナオ。私の魔眼は行動を抑制するも
のなのよ。そして彼女は悟りの魔眼の持ち主よ」
「悟り?それはどういった魔眼なんだ?」
「その名の通り、全を見抜く目って事よ。彼女に
見えないものはないって事」
「なら、奴の眷属も見付けれるのか?」
「まぁ~、近くにいればね!」
ネロは勇者に友好的だが、ナオは違う。
本当に協力してくれるのかどうか…。
誠治は少し不安だった。
まずは、パーティーメンバーと合流しようと思う
と宿へと案内した。
「人間の街はわかりにくいわね……」
「でも、美味しそうな物がいっぱいあるわ。ちょ
っと寄って行かない?」
ナオは不機嫌そうな声を出し、ネロは好奇心いっ
ぱいの声で言った。
同じサキュバスでも、全く正反対だ。
「後で行こう。今は、報告が先だ」
「おっけ、おっけ。じゃ~君たちの本部へ行きま
しょ」
宿に帰ると、だいぶんと回復した陸が待っていた
のだった。
「誠治、おかえり」
「ただいま。今日は起きてて平気?」
「あぁ、倒れて悪かったな?なんかいきなり魔力
がごっそりなくなってさぁ~」
魔力枯渇で熱を出したという訳だった。
それにしても、いきなりの事で勇者も、陸も気づ
けなかった。
そして何より、聖女が回復をかける事を拒んだせ
いで、余計に日数がかかってしまったのだった。
部屋には、レイネとモンドも集まっていた。
「まぁ、貴方は……」
「また会ったわね!この乳でか女!」
「聖女の私に喧嘩売っているのかしら?受けて立
つわよ?」
平和条約が締結している時点で、魔王様が争いを
起こすような魔族は徹底的に排除したのだった。
それが最初の勇者と一緒に行う、共同作業となっ
たのだった。
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