俺がモテない理由

秋元智也

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第三十七話 心臓の在処

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ナオは今も勇者を恨んでいる。
家族を殺された恨みはまだ消えない。

勇者ともう一人。
魔術師の陸。

彼もサキュバスを何人も葬ってきた。
もちろん、間接的なのは分かっている。
風の魔法で足止めと、風で音を遮ったせいで
仲間の助けを求める叫びが聞こえなかったの
だった。

止めを刺した勇者を殺したいが、今は魔王様
の命令で、動けない。

「お久しぶりね。陸ちゃん」
「あぁ、確か………ネロさんだよな?よろし 
 くな!」

陽気なネロにみんな夢中でナオのことなど気
にも止めなかった。


ナオは険しい顔つきで陸を睨みつけていた。

「ネロ、俺めっちゃ睨まれてるんだけど?」
「あぁ、この子なら気にしないで。いつもの事
 だから。人間達に……いや、君達に家族を殺
 されたから、ちょっとナイーブになってるの
 よ~」
「ナイーブって、そういうもんか?まぁ、いい 
 けどさ。それで、奴を見つける手助けをして 
 くれるんだっけ?」

陸が聞き返すと、ネロは頷き、ナオは何やら怪
しげにコソッと耳打ちしたのだった。

「あらら……それは困ったわね~……まぁ、魔王
 様の命令は始末しろだったわね~…」

何か話すと、勇者の方を向き直った。

「あのね、私達は魔王様から人間にあだなすアゾ
 ビエンテを始末するように言われて来たの。だ
 から、多少の犠牲は仕方ないって思ってるわ」
「あぁ、それは承知しているつもりだ。どうする 
 つもりか教えてもらえるか?」
「街でも滅ぼすってか?それは承認できないぞ?」

誠治の言葉と一緒に陸も言葉を続ける。

「あんたの魔眼なら、奴の心臓がどこにあるか分
 かるんだろ?だったら……教え……ん?」

いきなりネロの魔眼が眼の前で発動していた。
俺たち勇者パーティーは魔眼の効き目には抵抗が
あった。
だから、すぐにかかったとしても解けてしまう。

それをわかっていてもかける意味が分からんかった。

俺はすぐに杖を出すと、拘束魔法をかけようとして
胸の痛みに言葉を失った。

「えっ……嘘だろ……ごほっごほっ…」
「り……りく………陸ーーー!!」

喉の奥から咳き込むと、口から血が溢れて来て
いた。
なんで?
痛い、熱い……苦しい…。

目の前まで来て居たナオの手に握られていた
短剣の切先が陸の胸に突き刺さっていたのだ。

それほど深くはない。
それでも、痛みは半端ない。

丁度心臓の反対側。
右胸に突き刺さった短剣を握りしめると、ふらっ
と誠治の方へと倒れ込んでいた。

誠治の叫ぶ声が遠くに聞こえてくる。

そんな時、耳の奥から嫌な声が響いて来ていた。

『なぜ分かった?これほど安全な場所はないはず
 だったのにな………』

ゆらっと影が揺れると、陸の影からアゾビエンテ
が姿を現したのだった。

「まさかっ……げほっ、ごほっ……」

『正解だ、お前の身体に俺の心臓を入れておいた
 のさ。移植には痛みが伴うが、なぜか薬でぐっ
 すり眠っていたので好都合だったがな……だが
 もう、返してもらおうか…』

奴の手が俺の身体に伸びて来たのを、反射的に
避けたのだった。

「はっ……誰が思い通りになってやるかよっ……」
「陸っ!いったい何を……」
「わりぃ~な…誠治、俺……ここで退場かも…」
「待って……」

誠治の言葉を聞き終わる前に、刺ささっていた短剣
を握ると自分で奥に突き刺したのだった。

今以上の痛みが全身に走った。

「おい、ナオ……刺すならしっかりとどめをさせ…
 ……よ……」

そこで俺の意識はぷっつりと消えたのだった。

彼女も出来ないまま、死ぬのは……嫌だな……。
いや、そもそもマジでここで死ぬとか、ありえねー
し……。

俺の人生なんだったんだよ……。
いい事なんて……ひとつもねーじゃん。

せめて、可愛い子とセックスしたかったなぁ~。

思い残す事だらけな人生を俺は思い出しながら走馬
灯のように流れる過去の自分を振り返っていた。


遠くに聞こえる悲鳴じみた叫び声は消え、自分を呼ぶ
誠治の声が遠ざかって行った。

誠治……俺、お前の友人だった事……嫌じゃなかった
んだぜ……。

今更、言えなかった言葉を思い返すと何も考える事さ
えも出来なくなっていったのだった。

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