俺がモテない理由

秋元智也

文字の大きさ
38 / 61

第三十八話 仲間の死

しおりを挟む
いきなりの事で、何もかもが夢のような感覚だった。

ネロとナオを連れて来た誠治は皆に、魔王の配下の
サキュバスがアゾビエンテを探すのを手伝ってくれ
る趣旨を話すと、今から共同戦線を張ると言いたか
った。

だが、いきなりのネロの魔眼に遅れを取ると、目の
前で一番大事な人が血を吐いて倒れる瞬間が目に映
ったのだった。

「り……りく……陸ーーーー!!」

咄嗟に手を出すと彼の身体を支えた。

大量の出血に、目の前がクラクラした。
陸が……死ぬ?

一緒に召喚されて、今まで一緒に戦って来た仲間で
そして、唯一の欲しい者。

いくら勇者として持ち上げられても、物欲などなか
った。
誠治には、別に何を貰っても、誰から好意を向けら
れても嬉しくはなかった。

たった一人からの、言葉がどんなに嬉しかったか。
それをくれるのが陸だった。

いつも女にモテたいと口では言っているが、目つき
の悪さと、口の悪さが祟ってか、本当にモテない。

実際は誠治に目がいって、陸には興味を抱けないだ
けなのだが、それは誠治には理解できなかった。

なぜなら、誠治にとっては陸が一番魅力的だったか
らだ。

いつも、陸には尽くしたいと思っていたし、側にい
て欲しかった。

夜も一緒じゃないと寝れないと嘘を言ってそばで眠
るようにしていた。
寝相が悪いから、ごめん。
と言いながらも、わざと陸を抱きしめて眠った。

陸の影から出て来たアゾビエンテを見た瞬間、殺意
が生まれたのだった。

まだ息があるうちに、レイネの魔法でと、声をかけ
る前に、目の前で陸の声が聞こえて来たのだった。

「はっ……誰が思い通りになってやるかよっ……」
「陸っ!いったい何を……」
「わりぃ~な…誠治、俺……ここで退場かも…」
「待って……」

腕の中で血の匂いが一層濃くなった。

噴き出る血を浴びると、誠治は剣を抜いていた。
奴の首を……。

剣先が奴の首をとらえた瞬間、さらさらっと崩れ始
めたのだった。

「どう……して……」
「陸が奴の心臓を刺したからだろう?まさか、こん
 な場所に隠すとはね。奴らしいといえば、奴らし
 いな……一番安全な場所か……」

それは勇者の真横で、一番勇者に愛される男の中。
これほど安全な場所はなかっただろう。

それは、見抜かれたら終わりの危険な場所だ。

「陸……お願いだ……目を開けてくれ……陸……」

抱き起こすと、いくら揺すっても固く瞑った目は
開く事はなかった。

「レイネっ!早く魔法をっ!」
「それは……無理だわ」
「なぜ?すぐに魔法で傷を治せば……」

取り乱した誠治の横で、ネロが肩を叩く。

「死んだ人間は回復では直せないわ」
「何を言っている?まだ暖かいんだ。ふざけている
 のか?」

勇者となって、初めて怒りあらわにした瞬間だった。

いつもは、温和な誠治が取り乱しているのだ。
徐々に体温が失われていくのを、ただ見る事しかで
きない。

「レイネ……僕の言う事が聞けないの?」

低音の声が響くと、殺気が籠る。

「無理…なんです……私には、その人の傷は直せない
 そもそも、魔法が効かないのよ…………」

最後に絞り出すような声で言い放ったのだった。

勇者パーティーを組んだ時も、陸はポーションを常
に持っていて、怪我はそれで治していた。

途中から自作のものを持っていた気がする。
レイネの回復魔法は主に、勇者である誠治やモンド
を中心にかけていた。


ネロは少し考えるようにポツリと声を漏らした。

「さっきの状態なら、呪解をかければ心臓とのリン
 クをはずせたかもね。まぁ、それをすると、奴は
 逃げてたかもだけど」
「それは聖女だけができる魔法か………なら、なぜ
 やらなかった?陸を見殺しにしたのか?僕の陸を
 殺したのか?」

あまりに冷たく感情のない声に、レイネはゾッとし
た。
自分が誘惑しようとしていた勇者はこんな人だった
だろうか?…………と。

「違う……私は……」
「待て、勇者。お前は陸がした事を否定するのか? 
 あいつは、自分ごと、奴を葬ったんだぞ?誇るべ
 きじゃないのか?」
「陸が死んで……誇る?何を誇るんだ?陸がいない
 ならこんな世界滅んでしまえばいいじゃないか…」

一瞬、ネロすらもゾッとするほどだった。
ナオは、ほくそ笑むと、この世界ごと滅んでしまえ
ばいいという言葉に賛同していたのだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

新生活始まりました

たかさき
BL
コンビニで出会った金髪不良にいきなり家に押しかけられた平凡の話。

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。 大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...