ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜

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第一章

休日の朝

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 「お嬢様、朝でございますよ」

    シャッとカーテンを開ける音のすぐ後に、眩しい朝日が寝台に日だまりを作る。……最近では日の出が随分と早まり、日の入る角度が変わり、日だまりの大きさも違う。
    ガタン、と音を立てて両開きの窓が開けられ、潮の香りのする風が部屋に吹き込んでくる。

    暖かい春の風は寝坊へと誘う。……が。
   「はいはい、起きましょうね」
   「うう、今日はお休みなのに……」

    そう、今日は休日。
    漁師だって年中無休で海に出る訳ではない。
    私の勉強も、基本週休二日となっている。

    ……まぁ、ノアが来る前の一ヶ月は休日返上で詰め込まれたけど、だからこそ今日くらい寝坊しても良いじゃない?
    だけど、ばあやは容赦なく私から布団を奪う。

    「起きて、王子様のお相手をなさって下さいませ。我ら使用人ではお世話は出来ても、お相手は出来ないのですから」

    ……彼を送ってきた人間は皆、彼を置いてすぐに帰って行った。――侍従の一人も残さずに。故に、彼の着替えや風呂を世話しているのはウチ伯爵家の使用人だ。
    ……仮にも伯爵家の使用人だから男の子の世話くらい問題なく出来るけど、王子様なんてまず一生お目にかかるはずの無い存在を前にどう対応すべきか困っているらしい。

    まぁ、私にするみたいに王子からお布団剥ぎ取ったりとかは出来ないんだろう。

    「隣室に着替えとヨーグルトを用意してございます」
    ――スープではなく、ヨーグルト。
    最近では随分と暖かい日が多くなり、温かいスープではなく冷たいフルーツたっぷりのヨーグルトデザートが用意されている。

    周囲を海に囲まれた島だから漁業は盛んではあるけど、牧畜や農業だって負けず劣らず盛んな土地だ。
    甘いフルーツをヨーグルトの酸味が程良くさっぱりさせてくれる。

    ……だけど、私は少し物足りなさを感じていた。
   前世のヨーグルトに欠かせないとある具材が無い。……いや、素材の存在は確認してるから、近いうちに絶対に再現してやると誓っている。やっぱりヨーグルトにナタデココは欠かせないもんね?    アロエもあったら更に嬉しい。

    ヨーグルトを食べ、着替えが済むと、私は食堂に追い立てられた。……今日は漁もお休みだから、朝食もお屋敷で食べる。
    メニューは……朝なのにレストランの豪華ランチみたいな皿が並んでいました。先に来ていたノアは当然のように食べていますが……

    「ナニ、コレ?」
    私、この屋敷でこんな朝食メニュー見るの初めてですよ?    と言うか。

    「ノア。朝からよくこんなメニュー食べられるね?」
    「え……?    普通の朝食メニューだろう?」
    「え!?」

    ……これが普通?
    じゃあ私のこれまでの朝食は?
    これが普通なんだとしたら……。
    拝啓、お父様お母様。私、王都で暮らせる自信が無くなりました。
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