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幕間②
英断か愚策か - 某影視点 -
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「――申し訳ございません」
ノア様を王城へ送り届けた私はその日の夜、王の私室で彼の前に膝を付き深く頭を下げていた。
本当なら、あの平和な田舎でもっと長く平穏な日々を送らせて差し上げる事が可能なはずだった。が、私の配慮不足によりそれは夢物語として消えて無くなってしまったのだ。
これからの事を思案する王の苦悩を思えば私ごときの頭一つ下げたところで何の足しにもならないのは分かっていても、私には王に命じられるままに動く以外能の無い影。次の命が下されるのを待ち、頭を下げ続ける。
「――あの娘はどんな具合だ、“サン”」
サン、とは“3 ”。私のコードネームでございます。かの伯爵家では任務用に王が用意した偽名と戸籍で働いております。
「それは、お嬢様の事についてのご質問でしょうか?」
「そうだ、辺境伯家の精霊姫だ。使えそうか?」
「はい。まだ幼く未熟な点は多くございますが、精霊の扱いや精霊魔法の腕は私が目にした資料の記述より長けている様に見受けられます。お勉強も……淑女教育はあまり好まない様ですが、あの年頃のご令嬢としては特に問題の無いレベルでこなされますし、その他の成績は優良でしょう。……少々――いえかなりお転婆な性格では……ございますが」
肉親は居るものの付き合いの無いお嬢様をお育てしたのは我ら使用人故、任務とはいえ私もお嬢様は可愛い。王の言葉に少しばかり反感を覚えるも、私は影。己の感情など王の命令の前に必要ない。
「……王都の親のもと、どうやら新たな子が出来たようだがどうやらまた娘だったそうだ。精霊姫の素質は皆無だそうでそのまま屋敷で育てるそうでな。――精霊姫を嫁に迎えるのは難しい。故に、婿入りを目論んだんだが」
「――お嬢様はノア様に対し恐怖や忌避感など持っておられない様でしたが」
むしろ恐怖は私に対して示していた様な。
あの歳で敏い娘だ。
「恐らく状況を理解していないのだろう。……そうだな、アゼルも身体が弱くて困っておるが、小娘のご機嫌取り位なら体力が無くとも出来よう。サン、精霊姫に王子との婚姻話を土産に持って帰ってやれ。こちらの交渉はこちらでやっておく」
……お伽噺に憧れる様な娘であれば、喜ぶのだろう王族との縁談。王都の伯爵一家は喜ぶであろうが、果たしてお嬢様はどんな顔をするのか。
「――帰りの船に乗る前に、薬屋へ寄ろう。頭痛薬と胃薬を仕入れねば」
そう考えるくらいには、お嬢様の反応が予測できてしまって。
私は頭を抱えた。
ノア様を王城へ送り届けた私はその日の夜、王の私室で彼の前に膝を付き深く頭を下げていた。
本当なら、あの平和な田舎でもっと長く平穏な日々を送らせて差し上げる事が可能なはずだった。が、私の配慮不足によりそれは夢物語として消えて無くなってしまったのだ。
これからの事を思案する王の苦悩を思えば私ごときの頭一つ下げたところで何の足しにもならないのは分かっていても、私には王に命じられるままに動く以外能の無い影。次の命が下されるのを待ち、頭を下げ続ける。
「――あの娘はどんな具合だ、“サン”」
サン、とは“3 ”。私のコードネームでございます。かの伯爵家では任務用に王が用意した偽名と戸籍で働いております。
「それは、お嬢様の事についてのご質問でしょうか?」
「そうだ、辺境伯家の精霊姫だ。使えそうか?」
「はい。まだ幼く未熟な点は多くございますが、精霊の扱いや精霊魔法の腕は私が目にした資料の記述より長けている様に見受けられます。お勉強も……淑女教育はあまり好まない様ですが、あの年頃のご令嬢としては特に問題の無いレベルでこなされますし、その他の成績は優良でしょう。……少々――いえかなりお転婆な性格では……ございますが」
肉親は居るものの付き合いの無いお嬢様をお育てしたのは我ら使用人故、任務とはいえ私もお嬢様は可愛い。王の言葉に少しばかり反感を覚えるも、私は影。己の感情など王の命令の前に必要ない。
「……王都の親のもと、どうやら新たな子が出来たようだがどうやらまた娘だったそうだ。精霊姫の素質は皆無だそうでそのまま屋敷で育てるそうでな。――精霊姫を嫁に迎えるのは難しい。故に、婿入りを目論んだんだが」
「――お嬢様はノア様に対し恐怖や忌避感など持っておられない様でしたが」
むしろ恐怖は私に対して示していた様な。
あの歳で敏い娘だ。
「恐らく状況を理解していないのだろう。……そうだな、アゼルも身体が弱くて困っておるが、小娘のご機嫌取り位なら体力が無くとも出来よう。サン、精霊姫に王子との婚姻話を土産に持って帰ってやれ。こちらの交渉はこちらでやっておく」
……お伽噺に憧れる様な娘であれば、喜ぶのだろう王族との縁談。王都の伯爵一家は喜ぶであろうが、果たしてお嬢様はどんな顔をするのか。
「――帰りの船に乗る前に、薬屋へ寄ろう。頭痛薬と胃薬を仕入れねば」
そう考えるくらいには、お嬢様の反応が予測できてしまって。
私は頭を抱えた。
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