ヒロイン？ 玉の輿？ 興味ありませんわ！ お嬢様はお仕事がしたい様です。

第五章

部活はどうしよう？

    ……イーリスとの接触は不可避――と言うかそもそも同じクラスなのだから、イベントを避けても遅かれ早かれいつかは絡まれていただろう。

    私はそう自分に言い聞かせる事で自分を慰め、他の攻略対象キャラとの接触を避けるようにしていた。
    その為に、あまり迷う訳にはいかない選択が今、迫られている。

    そう、部活である。
    貴族が通う学校の部活であるから、かつての日本の公立学校の部活に比べお上品な部活は多いが、入ってみれば裏は真っ黒、なんて事もあるのが貴族あるあるだ。

    勿論、テニス部は考慮に入れるまでもなく却下である。……勿論武術系の部も。
    しかし悩んで部活見学なんて行こうものならイベントに巻き込まれる可能性・大。

    「今、すぐに決めてしまうのよ……！    そうすればイベントの起こり様がないわ！」
    貰った部活の一覧表を睨み付けんばかりに凝視し、私は必死に考える。

    リスキーな部は勿論却下だが、だからといっていくらノーリスクでも何の役にも立たない部活に入るなんて時間の無駄。面白そうな部活があれば良いんだけど。

   ……こないだの身体能力測定といい、この後に控える決闘イベントといい、これ以上変に目立ちたくはないから運動部は避けたい。
    なら、文化部一択だ。

   「けどなぁ……。調理部っていってもウフフオホホとお喋りしながらお菓子のデコレーションやトッピングだけしてお茶する部じゃ意味無いし」

    これがグレストの通う職業訓練校の調理部なら、本科の授業には及ばぬものの、本格的な技能を身に付ける事が出来る。
    本科の授業はほんの一握りのプロ――ミシュランで星を獲れるレベルの職人の養成を目指しているが、調理部でも本気で頑張れば、独立して自身の店を持てるレベルの技能とセンスを身に付けられる。

    唯一身に付けておいて損は無さそうな技能を得られる部は――
    「侍女・侍従養成部くらいかしらね」

    貴族でも男爵や子爵家の子息で長男でない者で、身体能力にも自信の無い者は、より高位の貴族の侍女や侍従として仕え、食い扶持を稼ぐ者も多い。
    その為の技能を修練する部であるらしい。

    私は侍女になるつもりは毛頭無いが、おもてなしの仕方等参考になりそうな技能を身に付けられるなら悪くはない。

   「決めた！」
    私は貰ったプリントに即座に丸を付けてヒルデ先生に持って行く。
   「あら、もう決めたのですか？    見学なさらなくてよろしいのですか？」
   「ええ、構いません」
   「では、こちらは私が責任を持って顧問の先生にお渡しし、今日の終礼で入部届けをお渡しします。それに必要事項を記入し、顧問の先生に提出して下さい。入部に必要な物がある場合はその時に顧問の先生から通達があるはずですので、その指示に従う様に」

    「分かりました、よろしくお願い致します」