ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜

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第十三章

息抜きデート

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 胃に穴の開きそうな社交レッスンの合間を縫うように、各儀式や祭事のしきたりや手順などの確認や練習が行われる。

 勿論、偉い人達の前で、だ。

 これが連日。

 仕事だから、と自分に言い聞かせて頑張ってはいるけど……。
 うう、領政の為の書類仕事やイベントの準備も大変は大変だけど、大変さの方向が違う。

 好きな教科の勉強は頑張れても、苦手な強化の勉強は及び腰になる様に。私は既に辟易してきていた。
 投げ出さないのは偏にあのクズ親達やアゼルの二の轍を踏みたくないから、それだけだ。

 一度はアクアをパシらせて実現したいくら食べ放題でストレスを発散したものの、あれからまた溜まりに溜まっていた。

 多分、グレストは敏感にそれを感じていたんだろうなー、と。

 私は今、目の前でニコニコ笑う美形王子を前に脱力していた。

 今私が居るのは馬車の中。
 ただし、いつも王宮に向かうのに使う王家の豪華な馬車ではなく、庶民も使う駅馬車の中。
 乗合馬車に乗るのは何も私とノアだけじゃなく、王都の住民も共に乗り合わせていた。

 馬車の向かう先は――
 「ここは?」
 「動植物研究所付属の動植物園だよ。研究の為に育てている動物や植物を展示してる。入園料は展示された動植物の餌代含む必要経費や、研究費の足しにされてる」

 つまり、前世で言う動物園と水族館と植物園を一緒くたにした様な施設らしい。

 入り口で入場券を買って、まず最初に展示されていたのは……

 「か、可愛い……!」

 ゴールデンにキンクマ、ジャンガリアンにロボロフスキー。
 真ん丸なお尻にちょんと付いた小さなしっぽ。両手で餌を持ちモグモグと高速で咀嚼し、頬袋を膨らませていくその可愛さといったら。

 この子らの可愛さの前でムスッとしたまま居られる訳がない。……いるとしたら某猫型ロボット並みのネズミ嫌いか人でなしくらいだろう。

 私は勿論、ぷーぷーと腹を出して眠るジャンガリアンに表情を緩め、クシクシの真っ最中のキンクマに目を輝かせ。
 餌を頬張っている最中のゴールデンハムスターにニヨニヨする。

 「あっちでうさぎに触れるふれあいコーナーがあるよ」

 はい、ハムスターは可愛いけど、慣れないと噛むし、基本触られるのをあまり好まない動物だ。
 モルモットやうさぎを触れる動物園は多くても、ハムスターのお触りはあまり聞かないもんね。

 ふれあいコーナーのうさぎは、スタンダードなタイプのみならず、タレ耳の子、毛色や大小も様々なうさぎが待っていた。

 タレ耳も可愛いけど、私はスタンダードなお耳のうさぎのが好き。そしてあのまるっとふわふわなしっぽが何もとも言えず魅力的で……。

 その素晴らしいモフ心地にたっぷり酔いしれるのだった。
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