ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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157話 ダンジョン生活生配信 3

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 ダンジョンでインタビュー活動をしていくと、結構な量の生活の不満が出てくる。それも仕方ないし、その言葉を聞いて地上に届けるのが主な趣旨だ。

 企画提案者にどんな思惑があったのかは知らないが、生の声を聞くこと自体は悪くないはずだ。
 それと、ここまで不平不満が募るのは、探索者として生活面に不安がある駆け出しだからという声も多く上がる。

 その声に感化されて「どうにかしてやりたい」と思って活動する旨を書き込むコメントが加速する。

 しかし、政府が都度邪魔をしてくるのだそうだ。

 一体なんのためにそんなことをしてくるのか?
 そこだけがわからずにいた。

「そんなわけで、今日はAランクダンジョンの暮らしを見ていきたいと思います。今日は新潟の柏崎にある海中ダンジョンに来ています」

 <コメント>
 :底辺とトップの生活の差を比べる意味ってあるんですか?
 :そりゃ、暮らしの差を見るためだろうがよ
 :Bランク超えていくのは草
 :《美作左近》本当に何がしたいんだお前は!

 何やらコメント欄では企画主がいつものように暴れ回ってるが、無視。
 企画は思った以上に好評で良かったですよ。
 こっちもどれくらい生活が改善されたか表に向けて公表できるいい機会もできたし、そこは感謝してる。

 気を取り直して、挨拶をしていく。
 ここには数日お世話になった関係なのだ。

 連絡を取り付けたら、すぐに対応してくれた。
 また料理をご馳走する約束を取り付けて、それを振る舞う形でインタビューしていく。
 前回世話になった安内さんは閉じ込められなかったらしく、今回ご一緒するのはそれ以外。
 一緒に漁をしたり、イルカ肉をご馳走したりした仲間である。

「こんにちわー」

「おう、久しぶりだな、若ぇの。ここにゃ、あんまり名物とかないぞ? まぁ、上がれや」

「それを撮影しに来たんです。Fランクダンジョンと比べて、ずいぶん整ってますよ、お邪魔しますねー」

「そりゃあ、うちらはこれで食ってるからな。生活の一部みてぇなもんよ。そりゃ、出られないって聞いた時は困り果てたもんだがよ」

 <コメント>
 :普通の田舎って風景だな
 :船着場みたいな感じ、わかる
 :全員がダンジョンに適応してるんやなぁ
 :ポンちゃん達が後回しにしてる理由がわかる
 :食いもんが充実してたら、あとは衣食住か

 本当にね。ちなみに北海道も似たような感じで復興してる。
 向こうは大陸全土がダンジョン化したのもあり、水道とか建築材とかも豊富なので、食材の提供だけで済ませてるところあるよ。

「それで、インタビューってかい? ここは見ての通り海産物しかねぇが、うちらはそのノウハウで食ってるからな」

「そうですね。ところでこちらにダンジョン デリバリーという政府からの配送業者は向かわれてますか?」

「デリ……なんだ?」

 <コメント>
 :知らなくて草
 :来てなくてこれかよ
 :普通に生活できてるのなんなの?
 :ポンちゃんもわかってて放置するわけだ
 :つまりそれより下のBも大差ない?
 :《美作左近》そんなわけねーだろ!
 :優先順位って大事なんやな
 :名産品ないって言っておいて、そこらで干してあり一夜干しとか普通に名産品なんよ
 :それを炭火で煽ってるヨッちゃん
 :ここで現れる日本酒が、熱燗! わかってるねー
 :ヒレあるぞ、炙るか? じゃないんだわ
 :完全に飲兵衛の顔である
 :インタビューどうした?
 :完全に飲み食い配信だ、これ
 :初めから飲み食い配信だろ?
 :それは草

「カーッ! 沁みるねぇ。お、そうだ、もらってばかりじゃ割に合わねぇな。ちょいと待ってな、うちの食料分けちゃるわ」

 久しぶりの日本酒を味わい、顔見知りの漁師さんは自分の収穫物を放出してくれた。

「ああ、いいですねぇ」

 持ち込んでくれたのは、一夜干ししたアオリイカ。
 そして塩辛だった。

 菊池さんのとは違い、隠し味こそないものの、ダンジョンで食べられるものにしては抜群にうまい。本当にここはダンジョンの中なのかと疑うほどだ。
 ここに白飯があったら最高だろう。

「ご飯が欲しくなりますねぇ」

「ここらじゃ取れねぇな」

「海中、ですもんねぇ」

 一般的なダンジョンの地盤に、上空を海が形成するダンジョン。
 細かいことを突っ込んだら負けなのは今更である。

「一応育ててみようと手は尽くしたんだが、塩害がな」

 立地もそうだが、野菜に塩風が当たってまっすぐに育たないのだそうだ。地面を耕して、畝をいい感じにしても、潮風で全部ダメになってしまうそうで。

「実はですね、俺の方で米の入手に伝があります」

「本当か!」

「流石に一度にここのダンジョンに住んでる全員分というわけにもいきませんが……」

「それでも構わない。白飯さえあれば、食事のレパートリーはだいぶ変わる。何せこっちは魚だけはいっぱいあるしな!」

 <コメント>
 :おにぎり、定食、餅。あと何だ?
 :塩とかも自作してんの?

「塩は炊き出せば取れるからな。魚を食うにも、干物にするにも塩はあるに越したことねぇもんな」

「海水には事欠かないですもんね。でしたら、海産物やその食塩との交換でよろしいですか?」

「こっちは助かるが」

「では交渉してみますね」

「悪いな」

 クララちゃんに早速通話。
 即座に出たのは笑ったが、わけを話すとすぐに仕事モードに入った。

 うちの屋台から、直接ワープ。
 合流して、一緒に交渉する。

 俺たちは次のインタビューをしながら、持ち込みの魚を捌いたり調理したりする。

「洋一さん、早速のご連絡ありがとうございます。まだAランクダンジョンには入場許可をもらってませんでしたが、こんな抜け道があったなんて」

 おっと、出入りする際は気をつけなきゃいけないみたいだ。
 まぁ、ダンジョンなんて危険地帯だもんな。
 
「交渉の方は?」

「新鮮なお魚との取引は、こちらとしても貴重な商材でしたから。鮮度が命ですし、本来の距離を考えたら、黒字ですね。上位ランク食材はレストランでも喉から手が出るほど欲しいものとなりますし」

「お互いに欲しいものが手元にない状態だ。ここは特に畑を作りたくとも、作れない立地だからね。お米以外に野菜も喜ばれると思うよ」

「そんな情報、ぽんぽん渡しちゃっていいんですか? それこそこっちにとっては値千金の情報だったりしますよ?」

「俺たちとしては、料理する際の食材が多ければ多いほど嬉しいからね。ここの港町に活気が湧くなら、多少のコネぐらい使うさ」

「こっちからしてみればありがたいお話ですね。わかりました、こちらへのお野菜の配達の件はこちらで引き受けます」

「助かるよ」

 そんなわけで、海中ダンジョンに定期的に野菜や米が配達されることになった。

「入場の際は、オリンちゃんに頼めばいいですか?」

「うん、ここにも中継地点を置いとくから、いつでもおいで」

「助かります」

 <コメント>
 :堂々と不正しててワロタ
 :柏崎の自衛隊員さん、涙拭けよ
 :入り口自在かよ、チートやんけ!
 :ポンちゃんじゃなくてオリンの仕業だからな
 :実質、Aランクダンジョン素材は早く欲しいからよくやった!
 :それなんよなー
 :こうやって不正は見逃されるのだ
 :イカの塩辛、普通にうまそうなんだ

 コメントの横で、シャケを串に刺してボイルする。
 ヨッちゃんの魔法を駆使して、あらゆる角度からの火入れが可能なので串焼きが可能なのだ。

「どうぞー、皆さんに持っていってください。小骨はとってありますので、そのままいただけます」

「おーい、母ちゃん。ポンちゃん達がご馳走くれるってよ」

 まさかご家族でダンジョンに取り込まれたのか?
 奥の方から子供を抱えたお母さんがやってきた。
 
「ありがとうね、この人の帰りが遅いから様子を見にいったら、そのまま出られなくなっちゃってねぇ。洗い物が出ないこの作り、助かるわぁ」

「ゴミで困ってるなら、うちのオリンに任せて貰えば吸収しますよ。それと真水の確保も得意です。申しつけてもらえれば便宜します」

「本当かい? そっちの方が嬉しいよ。海水はあっても、真水となると魔法でしか出せないだろう? ここにゃ、川も湧き水もない。ほとほと困ってたんだよ。洗濯するにも水は必要だからね」

「だったらある程度水貯めとこっか? オレは使用回数そこらへんのマジックキャスターより多いからさ」

「じゃあ、頼めるかい?」

「まかしてまかして」

 シャケの切り身串を受け取りに来たお母さんに水のサービスをするヨッちゃん。
 子連れでこんな場所で生活する上で、自分でも何かできないかって気持ちになったのだろう。

「よかったら、潮風防止の壁とか作るよ? 畑だってばんばん掘るし」

「そこまでしてもらうのは悪いさね。だったら、子供が寝られるスペースをつくっちゃくれないかい? ずっとおんぶするのも骨でねぇ」

 当然、ダンジョンの中にいくジズペースなんてものはない。

「そういうことなら! 任せてくれよ」

 ちょっとした寝床や、トイレ、シャワー室を作り上げる。
 大人達は雑魚寝でいいが、赤子となるとそうはいかない。
 そもそもダンジョンに閉じ込められた不安は相当のものだろう。

 <コメント>
 :やっぱりこの人おかしいよ(褒め言葉)
 :もう大工顔負けなんだよなぁ
 :これを魔法で作る時点でもうな
 :シャワーはオリンと繋がってるの?
 :水が尽きたら塩水が出るんか
 :流石に塩水と分離ぐらいさせるだろ

「塩と水の分離かー、可能なの?」

「キュ(造作もない)」

「可能だそうです。温める際は、魔法か、ここに薪を入れて魔法で着火すればいい感じですね」

「オレが使うならここまで作らないが、他人が使うことまで考えたら、これくらいは必要だよなって」

「シャワー浴びれるなんて最高だよ。どうしたって潮風を浴びるだろ? 肌が乾燥しちゃっていけないったらありゃしない」

「やっぱ潮風防止のバリアいるじゃんよ」

「それも魔法なんだろう?」

「まぁね」

「じゃあ、必要ないよ。それが消えたらあんたを呼ばなきゃいけなくなる。他人に頼りっぱなしっていうのは性に合わないんだ」

「ん。オレも頼られっぱなしは嫌だな」

「だろう? 頼ってなんぼになっちゃあ、おしまいだよ。さて、育児スペースをつくってもらった恩を返さないとね。あんた、酒はいける口かい?」

「うわばみを自称してるぜ」

 嘘をつけ。結構な頻度で酔っ払ってるくせに。

 そんなこんなでここでもヨッちゃんはヒーローになってた。

「藤本さん、変わりました?」

「そう思う?」

 クララちゃんは、率先的に魔法を使うヨッちゃんを見て何かを思ったようだ。

「ええ。以前までは洋一さんがお願いする魔法以外で率先的に動かなかったように思います」

「ああ、それは。使用回数の制限があったからだよ」

「普通ありますよね?」

 スキルによっては、それで仕事量が制限されて厄介と語る。
 けどなぁ、俺のスキルに際限はないのだ。

「俺はないし、ヨッちゃんは最近自己回復速度の方が上回ったらしい」

「自己回復速度、ですか?」

「うん、回復量って、上限値の割合で回復するらしいんだけど」

「ええ、適合調理食材だったり、自然回復だったりしますよね。でも回復したって、1/100程度ですよね?」

「うん。上限1000になったら毎分10回分、回復するらしくて」

 <コメント>
 :やっぱりヨッちゃん化け物だろ
 :ファッ 1000回!?
 :一体どれくらい魔法使ったんやろなぁ
 :日常的に火入れに使う調理人がいるらしいですよ?
 :俺もポンちゃんと一緒についてまわれば、使用上限あがる?
 :まずポストポンちゃん見つけるところからや

「今や加工スキル持ちは政府お抱えらしいからね」

「そもそも、今まで無能扱いされているので、ちょっとやそっとじゃ心開きませんよ?」

 まぁ、そこもあるよね。
 せいぜいスタートが同じ総合ステータスじゃないと、難しいまである。

 <コメント>
 :詰んだぁ
 :初めからわかってたことなんだよなぁ
 :クララちゃんもなんだかんだ有能ですよね
 :そりゃそうだ
 :本人が頑張ったからこそこの地位にいるんやで?

「クララちゃんはねぇ、俺が何もしなくても育ったから」

「返しきれないくらいの恩をもらってるんですけどねぇ」

「あれ? そんなに恩あげてたっけ?」

 <コメント>
 :あげた本人が全く気にしてないのワロタ
 :鈍感もここまでいくと罪だろ
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