淫愛家族

箕田 はる

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「彼らに恥じないように、睦紀のことは大切にしていくつもりだからね。何度も言うようだけど、私や春馬に遠慮はいらないよ。こうして君をこの家に迎え入れることが出来て、私は幸せなんだから。春馬だってそう思うだろう?」
「ええ。俺もそう思います」

 口元を緩く上げ、春馬もそう言って睦紀を見つめてくる。

「……ありがとうございます」

 嬉しい反面、照れくささから睦紀は俯く。そこでリビングの扉が開き、甘い香りが漂った。

「……涼華」

 やや不機嫌そうな表情で現れた涼華の姿に、睦紀は思わず腰を上げる。明らかに会社に行っていたような服装ではなく、短い丈の派手なワンピースを着ていた。

「……ただいま」
「お帰り、涼華。たった今、始めたところなんだ」

 俊政に促され、涼華が睦紀の斜め向かいに腰かける。

「睦紀も立っていないで、座りなさい」

 俊政に咎められ、睦紀は涼華を見つめたまま腰を下ろす。顔を合わせたのは一週間ぶりぐらいになる。それまでの間、一体何処にいたのか。問い詰めたいことはたくさんあったが、今は夫婦間の問題を持ち出す場ではなかった。
 臍を噛んだような気分で、睦紀は口を結ぶ。涼華の元に食事が運ばれると、平然とした表情で食事を始める。その姿に、睦紀は憤りすら感じた。

「そうだ、睦紀。後で私の部屋に来てくれないかな。見せたいものがあるんだ」
「――えっ」
「忙しくて、なかなか睦紀に見せられなかったからね。駄目かな?」

 一瞬言葉に窮するも、睦紀は渋々ながらも「わかりました」と口にする。
 本当だったら、涼華と話し合いたい。滅多に帰ってこないのだから、今日がチャンスだった。二人の状況を知らないとはいえ、少しばかり俊政を恨めしく思う。

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