淫愛家族

箕田 はる

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「悪いね。すぐに終わるから」

 俊政は申し訳無さそうにトーンを落とし、笑みを浮かべる。

「い、いえ……大丈夫です」

 睦紀は慌てて首を横に振る。あからさまにムッとしていたのが、顔に出ていたのかもしれない。そう思うと、ゾッとした。

「すまない。私の我儘に付き合わせてしまうようで……」

 更に追い打ちをかけるように、俊政が遠慮がちに告げる。眉を下げた俊政の切なげな表情が、睦紀の罪悪感を煽った。

「そんなことないです。僕の方こそ、すみません」

 睦紀は慌てて謝罪を口にすると、俊政の表情が少しだけ和らぐ。

「睦紀は何も悪くないよ。涼華、悪いけど睦紀を借りてもいいかな?」
「ええ、どうぞ」

 淡々とした口調で涼華は答え、メインの料理を口に運んでいる。
 涼華のことも気がかりだったが、何より俊政の顔色の方が気にかかってしまう。それに話の流れからして、長い時間拘束はしないはずだった。
 ぎこちない食事会を終えると、涼華は先に休むと言ってさっさとリビングを後にした。
 その後ろ姿を見送ると、睦紀は俊政に連れられるまま、二階にの奥にある俊政の部屋に向かった。

「さあ、中に入りなさい」

 促されるまま、睦紀は部屋に足を踏み入れる。
 広い室内でまず目についたのは、キングサイズのベッドと大きなクローゼットだった。部屋の端には小型のワインセラーが構えられ、今は使われていないドレッサーには布がかけられていた。かつては夫婦の寝室であったことが伺える。
 睦紀は所在なさげに立ちつくす。

「そこに座っていなさい」

 ベッドに向けられた俊政の視線に、睦紀は思わずたじろいだ。
 寝室に入るだけでも恐れ多いのに、ベッドに腰掛けるだなんて居た堪れない。それでも立ちっぱなしというわけにもいかず、睦紀は恐る恐るベッドに腰掛ける。

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