異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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平静を保てるようになるまで、少し時間がかかってしまった。キルは俺の体調をしきりに心配してくれたけど、大丈夫だと何度も言って納得してもらった。


会場に戻ると、アルベルト殿下の周りに人が集まっていた。俺にとっては少々難のある相手だけど、それに目を瞑れば完璧な人だ。それを知らない人たちがたくさん集まっても、なにも不思議ではない。

すると、俺たちに気づいたアルベルト殿下が声をかけてきた。


「ようアース、戻ったか。何やら失礼なことを考えていなかったか?」


げっ、バレてる………。だけど、知らないふりをしておこう。


「いえ、そのようなことは考えていませんよ。」


「ほぉー、まあいいだろう。それからキル、行き方はわかるな? わからないなら、アルフォンスに案内させる。」



え、もしかしてキルたちの母のお墓のことを言っているのだろうか? キルが事前に話していたのなら何ら不思議ではないけど、そうでないなら単純に恐怖だ。


「え………あ、はい。存じています。」


キルも一瞬あっけにとられたようなので、おそらく事前に言っていた感じではなさそうだ。アルベルト殿下は本当に凄いを通り越して、怖い。



「ねえ、キル。アルベルト殿下のあれは何かの固有魔法なの(小声)?」


「俺にもよくわからん。だけど、兄上には一生かかっても、勝てないことだけはなんとなくわかる。だから俺は、国王になる兄上を支えていく立場になると決めた(小声)。」



キルがそういうのなら、俺はそれに従うまでだ。まあ、アルベルト殿下とキルが後継者争いをするところなんて見たくはないから、キルが支えたいというならそれでいいのだろう。

いや、もう一人継承権を持つ方がいるのか。たしかキルに兄弟がいるのかと尋ねたときにキルは、「兄と弟がいる」と答えた。アルベルト殿下とキルの母はキルを生んだ時に亡くなったから、弟というのは異母弟ということになる。その弟との関係性や、その母が側室なのか後妻なのかは定かではないけど………時機が来れば知ることになるだろう。






それから時間は過ぎ、俺の歓迎会は終了した。未だ話したことのなかった人たちともかかわることができて、いい機会だった。幹事のマーガレット様に再び感謝を伝えて、俺たちは帰路に就いた。







――







次の週の土の日。俺は生まれて初めて、王城に来ていた。今日はキルと一緒にキルの母親のお墓へ訪れる予定だ。場所はどうやら王城の裏手にあるようで、そこへ行くために王城に来る必要があるというわけだ。

しかし俺は、王城のとてつもない大きさや荘厳さに少々度肝を抜かれてしまって、門の前で立ち往生してしまっていた。元一般人の俺からしたら、正直住む世界が違うと思ってしまうけど、ここはキルが住んでいる場所でもあるのだ。それを思って、勇気を出して頑張ろう。

すると、王城の方からキルがやってくるのが見えた。


「よう、アース! いきなり行くのもなんだし、俺の部屋で少し休憩にしよう。」



え、キルの部屋だと………。好きな人の部屋に行って、興奮しないはずがない。でも、ここで断るのは変すぎるし、誘われたのだから行こう。うん、下心なんてないからな!







王城に入ると、そこは別世界の様だった。なんというか、豪華すぎるし場違い感がすごい。俺は天井や廊下を見て呆気にとられていた。



「おいアース、口があいてる。俺の部屋に行くまで我慢しろ。」


「………あ、ごめん。あまりこういうところには慣れてなくてさ。でも、キルの側近になったからには慣れておかないといけないよね。ジールたちはもちろん来たことがあるんだよね?」


「ああ、そうだな。まああいつらは俺の遊び相手を務めていたから、側近になる前から俺の部屋には来ていた。」



確かに考えてみればそうか………。王族の遊び相手って何をするんだろ? 一緒に勉強したり、訓練したりするのかな? 遊ぶと言っても中で遊ぶと言ったらトランプくらいしかないし、外で遊ぶとなると球技とかは年齢的に早そうな気もする。



「王子の遊び相手だったジールたちとは、何をして遊んでいたの?」



「子供がするような遊びだ。中庭でかくれんぼをしたり、お絵かきをしたり………」



キルはそこまで言うと、口に手を当てそっぽを向いてしまった。きっと、お絵かきが恥ずかしかったのだろう。こういうの反応は俺は好きだけど、わかりやすすぎて王族として大丈夫なのか気になるな………。


「えーと………かわいらしいね?」


「………うるさい。ほら、着いたぞ。」




キルはそういうと、豪華な扉を開いた。ここがキルの部屋か………。王子の部屋とだけあって、王城の奥の方に位置している。


中に入ると、キルの匂いで部屋が満たされていた。キルの匂いを具体的に言うと、お日様と白檀を合わせたような心地いい香りである。昔から白檀の匂いが好きなのも相まって、キルの匂いは本当にクルのだ。
他にもかなりの冊数の本や、赤が好きなのが前面に伝わってくるような赤い家具だらけの部屋など見るべきところがあるにもかかわらず、匂いがやばすぎてそれ以外に意識がいかない。



「おい、なんで立ち尽くしているんだ? なにかあるのか?」


匂いによる煩悩を抑え込むのに必死で微動だにしない俺を心配して、キルが肩をゆすってきた。何か、何か言わないと………。


「いや………キルの匂いがするなって………。」


「な、な! お前………。何だよ、急に!」


あ、やばい………。思っていたことが口に出てしまった。急に男から「あなたの匂いがする」とか言われたら嫌だよね。キルも動揺しているようだし………。



「ごめん、何でもないよ。キルの匂いって、どこから発生しているの?」


「発生って、お前な………。俺専属の調香師が俺の好みに合わせて、調合してくれた香水を使っているんだ。」



八歳で香水を使うのか………。まあ貴族だし、早すぎるということもないか。貴族にとって香りも充分な武器になり得るもんな。俺も自分専用の香水とか欲しいな。王都の店に行けば調合してくれるだろうか?



「香水か………俺も付けたいな。嗜みとしても持っておいた方が良いよね。王都に行けば香水のお店もあるよね?」



「まあ、あるだろうな。………ちなみに、アースはどんな香りが好きなんだ?」



俺の好きな香りか………。もちろんキルの使っている白檀の匂いも好きだけど、前世でよく使っていたのは柑橘系の香りだった。甘い香りが好きでかといって、バニラのような甘さではなく、果実のようなみずみずしい甘さが好きだった。今もその趣向は変わっていないように思う。



「俺は、柑橘系の匂いが好きかな。あ、キルの香水の匂いも俺は好きだよ。」

「そ、そうか………。じゃあ、俺のと同じものを使うか?」



………はい? 
それは、色々な意味でまずいと思う。まず俺の理性的な問題もあるし、周りにあらぬ誤解を与える可能性も高い。総合的に考えて、色々まずい。



「えーと、それは………色々と問題になるんじゃないかな?」



俺がそういうと、キルははっとした表情を浮かべた。そうだよね、キルもなんとなく言っちゃったんだよね。でも、俺の心臓に悪いから気を付けてね?



「あ、いや、その………。すまない、忘れてくれ。………俺の専属の調香師を紹介するから、そこで自分好みの香水を選んでくれ。」


「うん、ありがとう。自分好みの香りを調べていくって、楽しそうだね。」


「ああ。と、とりあえず座れよ。今、お茶を用意するから………。」



キルはそういうと、ベルを鳴らした。すると、メイドが入ってきててきぱきと用意を始めた。なんとなくだけど、キルが緊張しているようなどこかいつもと違うような気がする。………もしかして、お墓に行くから緊張しているのかな?

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